第三章 1 見せない雫
『蒼太?鼻から白い煙出てるよ?』
『コマキだって出てんじゃんか!』
徐々に寒くなり季節は冬直前…
俺達はいつもの様に街に寄っていた。
『蒼太さ〜ん!何処行くんすかぁ!』
『何処だっていいじゃんよぉ!付いてくんな!』
今まで四人で行動をしていたのに、最近…何故か八人に…。
ゾロゾロキャッキャしながら楽しく歩いていた…
『続きまして、今流行りのマジナイハ-ト…』
はぃ?
何か聞こえる…
センタ-スクリ-ンでマジナイの特集がやっていた。
イテッ!後ろを歩いていたヤス達が玉突き事故の様に俺に突っ込み渋滞中!
『蒼太?どしたん?』
コマキは玉突き事故に少し笑みをこぼし問い掛けてきた。
『あぁ…ちょっと待って?』
『蒼太さ〜ん!めちゃ渋滞っすよぉ!』
『もぉ〜、しっ!』
俺はスクリ-ンを見続けた…
『関東で噂のオマジナイ。その名もマジナイハ-ト。誰でも一つお願いが叶うと言う不思議なオマジナイ。若者の中で凄い人気なんですよね。』
て、TVに取り上げられてんのかよ…
真面目に叶うって事かよ…
元々は俺のガセだぞ?
『蒼太、行くぞ!』
『あぁ…』
隆弘に呼ばれ渋々その場から離れた。
『なぁ…今、マジナイTVでやってたな。』
『うん、蒼太も叶ったん?』
『嫌…まだやってないけど…』
マジかよ…
『椎名先輩?寒いからちょっと暖まりにゲ-セン行きません?』
有弥は沙耶に手を暖めてもらっていた。
『行きましょうよぉ、隆弘さん!』
『んだね!シ-行くぞぃ!』
『今日何しよっかぁ。』
隆弘と静は先に店に入っていった。二人に続き有弥と沙耶。
『先に行っちゃうぉ』
ヤスは少し気にしながらコマキを見、俺を見た。
『蒼太さん?行きますよ?』
『……先行っててよ。後で行くから…』
『わかりました。なお、入ろ?』
『は-ぃ!コマキ先輩、椎名先輩後で遊ぼ?』
『うん、後で行くねぇ。』
『どしたん?…蒼太。』
『ん?…マジナイが気になってな…。』
夢…ただの夢だったよな。
コマキは寒そうに手をさすっていた。
俺は寒そうにしてるコマキの手をソッと握った…
少し驚いたコマキ。
そして、少し照れながら寄り添った。
『コマキはマジナイやった?』
俺は照れを隠す様に……遠くを見るフリをした…
正直、照れていた。
『書いたよ。』
『どんな願いにした?』
『……内緒!』
『叶った?』
『……内緒!叶ったら教えてあげるよ。』
うっすらと笑みを浮かべる二人…
どれだけ寒くても…暖かいな…。今、この一瞬の時が止まればいいのに…。
それが今の俺の願いなのかもね…