番外編 純粋ゆえに…
中学時代の話です。
俺と隆弘はいつもつるんでいた。学校が終わると決まって街に繰り出す。
家に帰るのが嫌だった…。勉強しろ、悪い仲間と遊ぶな、髪の毛染めろ、タバコ吸うな。毎日の様に言われていた。そんな場所から逃げたかった。
『今日は蒼太だかんなぁ!』
『嫌だよ!隆弘やれよ!』
何の為に街に行くのか…それは彼女を作る為。勇気を試す為。男を磨く為…。
ガキの頃は、ナンパ出来る出来ないで自分自身の器量がはかられた。今思えばバカバカしい事だけど……。
『俺は早く彼女が欲しい!だから頑張れ蒼太!』
『バァカ!何で俺なんだよ!お前が死ね!』
当時の俺は、金髪のラフなツンツンスタイルで、左耳に三つのピアス。服装は制服だったけど…
隆弘は、アプリコットカラ-のト-ンアップしたメッシュ。両サイド後ろに固めたウルフっぽいスタイル。隆弘も一つだけピアスをしていた。服装はもちろん制服。
俺達はタバコを吹かしながら街を歩く。可愛い女がいれば…
『蒼太、あれすっげぇ可愛い!俺好み。行け、蒼太!』
『俺パス!』
俺が良くても隆弘がダメ。隆弘が良くても俺はパス…
結局、毎日行ってても一回もナンパした事ないんだよね…。意気地がないって言うか……
そんな時、若いのが集まる街ってのもあり、熱くなった奴等がもめる……そぅ女の取り合い!
ここ、ナンパ通りはナンパをしたいされたい、そんな人間が集まる場所だ!ケンカなんかしょっちゅうだな。
『おぃ!隆弘…やってるぜょ!』
『お?祭り?祭りだワッショイ!行くぞぉ!』
野次馬根性丸出しでよく見に行ったな…。時には巻き込まれ一緒になってケンカした。
この時もそうだ。見てたら何かケンカ売ってきて…
『んだコラ!調子のんなよコラ!』
『コラコラ…コアラ?アが足んねえし!』
『舐めてんのか、あぁ?』
『お前舐めたらキタネエだろ?なぁ隆弘?』
『お前じゃ無理だよぉん!お帰りお嬢ちゃん!あははっ!』
くくくっ…
俺達の小馬鹿にした挑発。それを見て笑い出すギャラリ-。その瞬間が好きだった。
興奮気味の男…絶対仕掛けてくる!
『そこの今笑った女!後で行くかんな!こいつらの後で…』
コイツ等の後…はぁ?
『隆弘?俺一人でやるわ!何か調子乗っちゃったみたいだから!』
『はぃ!お願いしますぅ。』
隆弘は周りをキョロキョロし、さっき笑ってた女の子を呼び出し、その場に座り込んだ。
『ベストポジションで見せてあげるよ!』
隆弘はちゃっかり横に女を座らせご満悦な表情を浮かべる。
『あぁ!隆弘…お前調子乗りすぎ!』
『バカ!こっち見んなよ!』
案の定、相手の拳が顔面を捉えた!
『キャ!』
隣に座る女の子、周りのギャラリー。行けだのヤレだの…ヤジのオンパレードやなぁ…。
『いいパンチしてんなぁ!倍返しな!』
俺はガキの頃から空手をやっていた。ボクシングもかじっていたせいか、ヤケに手が早かった!
結局、10分もしない内にダウン…勝てないとわかると速攻で逃げる!もちろん、その女の子も連れて…。
『蒼太しょっぺぇな!』
『ありゃヤバいだろ!絶対プロだよ…いてぇ…。』
正直、隆弘の隣の女の子が気になっていた。カッコ良い所を見せようとしたが、カッコ悪い所を見せてしまった…
でも、あのまま俺達だけで逃げたら、この子は…
そしたら体力がある内に逃げるのが…
そんな事を、ない頭で考えた結論だった。
近くの公園まで走り、俺は力尽きた。
俺、体力落ちたなぁ…。やっぱりタバコかなぁ…。
ハァハァ…
女の子は息切らせながら俺に近付いて…
『ごめんねぇ?私のせいで…負けちゃったねぇ。』
『……ま、負けちゃいねえよ!謝ってねぇし!』
『蒼太!それ往生気が悪いって言うんだよ!』
『バカ!隆弘のバカ!タバコがいけねぇんだよ!気付いたら体力落ちてるしよ!俺…タバコ止めた!』
『蒼太にゃむりだぁ!そんな意思強くねえし!』
『あはははっ!面白いねぇ!』
俺達の口ゲンカが蕾だったみたいで、一人笑っていた。そして、俺達も調子に乗ってお互いをけなしあった。
で……その時、名前とか携帯聞いておけば良かったんだよな……。
ナンパとかに全くなれてなかった純粋なあの頃…
あの子にもぅ逢えないんだろうな…
でも、出来れば…また…逢いたいな…
逢って…今度はナイトになる!
で…時が経ち…
ここの高校で再開した。その時の女の子がコマキだったんだ。