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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
9/64

初めての喧嘩はお金のお話

 結局、私は愚痴る事にした。


 受付のお姉さんは実写なので、つまりはコンピューターなので、遠慮なく目の前で愚痴った。


「酷くない? 私、頑張ったのに、時給740円だよ!

 っていうか、一日一回しか働けないんでしょ?

 つまり、日給740円だよ!」


「なんだよ。

 何?

 結構ヒステリックな人なんだね。スーナって。

 日給っていうけど、スーナが頑張ったの、リアルじゃ20分じゃん。

 Sランク取れたことに感動して、スーナだってさっきまで喜んでくれていてでしょ。

 せっかく楽しい気分だったのにさ。最悪じゃない?

 そういうの」


「へ~、ゴーダ君はラブワールドの味方なんだ」


 駄目ね。ゴーダ君は。

 よっぽど大事じゃないときは、女の愚痴は肯定しておくべきなのよ。

 解決なんて望んでないの。

 ただ、愚痴ればスッキリする事ってあるの。

 きっと、彼女居ない暦=年齢ね。

 大学生の癖にこんなゲームするぐらいだから。


「でも、私、ゲームだなんて思わずに真剣に頑張ったもん!」


「だからさ、良かったじゃん。Sランクだよ。凄いじゃん!」


「でも、740円でしょ!!」


「あ、それはね、レベル1だから。1人の成功単価が10円なんだよ」


「余計腹が立つわ!

 注射一本打つのに、10円分の価値しかないと思ってるの?

 あれって、結構技術がいるんだよ!!

 このゲームの製作者は、つまりは国は、看護師を舐めてるのよ!」


「いや、だからゲームの話じゃん。国は看護師を貴重に思ってるよ」


「じゃあ、なんで、なんでなのよ!!」


「本当、ちょっと面倒だな。スーナは。

だから、ゲームだから!」


「何よ。ゲームだからって、ゲームだからって……」


 怒鳴り続けていると、私は少しずつ落ち着いてきた。

 そこにタイミングよくゴーダ君のこの言葉。


「それに、リアルの世界と物価が違うよ。

 家賃だって5000円だったでしょ?」


「そういえば、そうかも……」


「落ち着いてきた?」


「うん。ゴメンね。私、ゲームってあんまりやったなくて」


「良いよ。

 っていうか、それなのに、Sランクって凄いじゃん!」


「うん。ありがとう。

 愚痴に付き合ってくれて、褒めてくれて」


「良いよ」


 その時、ゴーダ君はグーと音を出した。


「あ、ヤベ。お腹すいたみたい」


「お腹すくの?」


「うん。スマホでさ、『状態ステータス』アプリ見てみて」


 私は言われた通りに見てみると、パラメータが4つあった。


 空腹度。

 疲労度。

 寂しさ度。

 充実度。


 寂しさ度の値は100で、全部の値は80だった。


「全部100が最高値ね。

 順に説明するね。

 空腹は、もちろんお腹が減った具合を示すの。

 値が30より下がると、今みたいにお腹が鳴っちゃうんだ。

 値が下がるごとに、鳴る頻度が増えるの」


「うん」


「疲労度は連続で動き続けちゃ駄目なんだ。

 寝なきゃ駄目なんだ。

 でも、ログアウトしても回復するよ。

 これは10を下回ると、悪影響が出る。

 突然倒れて、5秒動けなくなるの」


「うん。それ、ちょっと恐しいね」


「寂しさ度は、プレイヤーと喋らなくちゃいけないの。

 やっぱり、ほら、出会い系ゲームだからじゃないかな。

 これは悪影響が出るというより、スキルの成長率に関係するよ」


「うん」


「最後の充実度は減っても0でも影響ないんだけど、スキルの成長率に影響するんだ。

 えっと、これは仕事とか講座を受けると減るよ。

 何もしなければリアル一時間で5ずつ、毎朝リアル7時に50回復するよ」


「そうなんだ。ややこしいね」


「直ぐ慣れるよ」


 そう言って、ゴーダ君は彼のスマホを見せてくれた」


「あら」


 寂しさ度以外の値は殆ど50より下回っていた。特に空腹度が一番低く29だった。


「それじゃ、悪いけど、外食しようよ。付き合って!」


「うん。良いよ。でも、私、5740円しかないよ。どのぐらいゲームできるか分からないから、家賃分は残しとないといけないでしょ?」


「おぉぉ。スーナって割り勘派? ありがたいや。

 でも、今回は奢るよ。

 だって、スーナは空腹じゃないじゃん」


「いいよ。こういう恋人間の暗黙のルールって最初が大事でしょ?」


「へ~。スーナってヒステリックだけど、やっぱり天然だよね。

 不思議に思った時に話し合えばよいのに」


「な、何よ! ゴーダ君は付き合ったことないくせに、何が分かるのよ!!」


 私は怒って、病院の出口まで早歩きで歩き出した。


「あ、ちょっと待ってよ。どこ行くの?」


「どっか。食べ物屋さん!」


「悪かったよ。でも、場所知らないでしょ?

 安くて満腹になる店知ってるんだ。ね? 俺についてきて」


 そう言って、彼は私の手を握ろうとしたけれど、空ぶっていた。


 私は気付かないフリをして、振り向くフリをしながらちょっと距離をとる


「分かったよ。ゴメンね。

 もしかしたら、私、本当に突然怒る癖があるのかも

 あるいは、ゲームだと性格変わっちゃうのかも……」


「良いよ。

 看護婦さんって、ストレス溜まりそうだもんね。

 ワンミスが大事になりそうで、神経使いそうだもんね」


 ゴーダ君は、失礼だけど、時々優しい。


 こうして、私たちは、ショッピングエリアを歩き出した。

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