二人の結末1
ログインすると、マイホームが俺の視界にはいるはずなのに、そこには懐かしい光景が広がっていた。
スーナと暮らしていた家だ。
そっか。別居が終わったんだ。
表札にはスーナとゴーダの家とあった。
俺のマイホームでもあるんだよな。
どうしよう。
まだ答えは決まっていなかった。
漠然とダラダラと今まで通りの生活を続けたいと思うのだけど、それで良いのかと不安にもなる。
今日は仕事をする気にもならなかった。
玄関開けて直ぐのソファーに座り、考えた。
俺は一体どうするべきなのだろうか?
どうするのがスーナのためになるだろうか?
今日で別居が終わる。
2日酔いにも負けず、私は仕事を頑張り、手早く帰り支度を済ませ、帰宅後も手早く夕食も済ませ、ラブワールドに直ぐにログインした。
ログインすると、表札が変わっていた。いや、戻っていた。
スーナとゴーダの家に戻っていた。
私は深呼吸。気持ちを落ち着かせ、ドアを開けた。
すると、玄関直ぐのソファーにゴーダ君はいた。
「ゴーダ君……。久しぶりだね」
「あ、うん。久しぶり」
「元気してた?」
「元気だった。スーナは?」
「元気じゃなかったかも。色々悩んじゃった」
「なら、俺も。悩んだよ」
「そう。うれしいな。ちゃんと考えてくれたんだ。本当はね、私イベントに夢中になったりもしたの」
「それなら、俺もだよ」
会話は途切れた。
雑音は何もなかった。
鳥の声も、人の声も、車の音も、工事の音も、何もなかった。
ゴーダ君の息遣いすら聞こえてしまいそうなぐらい、無音だった。
ゲームの世界ならではだった。
「なんか、食べようか?」
私は本題に移れなかった。
この一ヶ月でレベル4になった料理の腕前を披露することになった。
「うん。そうしよう」
ゴーダ君は困ったような顔をしながら、同意した。
「ポルシチ? 凄いじゃん」
「リアルでも得意なのよ」
スーナは料理レベル4になったのよと得意げに語りながら、料理を持ってきてくれた。
「うまっ! 久しぶりだからかな。スッゲー旨いよ」
俺はついいつものノリで褒めてしまう。
対面した今ですら、まだ答えを決められていないのに、自然とお礼代わりに旨いと言ってしまう。
「本当? 良かった」
スーナの笑顔が、胸に突き刺さる。
そのまま俺たちは世間話をしながら、例えば二人ともミーナさんとお菓子を交換していたことに驚いたり、イベントはやってみると意外と楽しかったと同調したりしながら、ポルシチを食べた。
味がしないのが本当に悔やまれるぐらい美味しそうだった。
「あ~、旨かった」
「美味しかったね……。味しないけど」
「だね。でも、絶対旨かったはずだよ」
「試してみる?」
「ん?」
「私の、本当の手料理、食べてみる」
スーナの顔は真っ赤だった。
目線はこっちを見ようとしない。斜め右下あたりで泳がせていた。
多分、俺の顔も赤くなってきている。
ついに、きた。
スーナは踏み込んできた。
俺はどう答えれば良い?
「ゴメン。分からないんだ」
「え?」
スーナの瞳が俺を捉えた。目が合った。
心臓が騒がしくなってくる。
息苦しい。
俺は正直に今の気持ちを伝える事にした。
「色々考えたんだけど、良く分からないんだ。スーナは好きだよ。でも、それは愛とかじゃなくて、そもそも愛って何なのか良く分からなくて……」
ゴーダ君はそのまま何も言えないみたいだった。
言葉を捜しているみたいで、顔を上下左右に動かしながら、必死に「えっとその」と口ごもるだけで、次の言葉はみつからないみたいだった。




