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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
39/64

ラブって一体何なのさ?

 自分でも思う『やっちゃいけない』失言から、スーナと別れて、いや、別れてはいないか。

 少し距離を置くために別居生活をすることになった。


 ネットで調べた情報によると、手続きは、ショッピングエリアにあるワールド事務所で行うらしかった。

 ワールド事務所には初めて来るが、入ってみると予想通りに机に囲まれたNPCがいた。


「あの、こんにちは」


「いらっしゃいませ」


「えっと、別居の手続きがしたいのですが……」


「かしこまりました。右手の階段を上り、30番窓口にある発券機のボタンを押し、整理券をお受け取り下さい」


「はい。ありがとうございます」


 おっと、彼女はNPCだった。

 実写なみにリアルな姿だから、ついお礼を言ってしまった。

 いや、人が操作してる可能性も否定できないし、言っても変じゃないか。


 階段を上ると、個別エリアだった。

 整理券うんぬんは、多分リアル役所を模倣しているのだろう。

 整理券を受け取ると、直ぐに呼ばれた。

 個別エリアだから、待ち人は自分だけだった。


「いらっしゃいませ」


 模倣してるくせに、いらっしゃいませなのはいかがなものか。

 奨学金の手続きに必要な住民票を受け取りに行ったことしかないが、確かリアル役所でいらっしゃいませとは言われなかった。

 あれ? 

 言われたかもしれない。

 どうだったかな?

 というか、それは今考える事じゃない。


「あの、俺、結婚してるんですけど、ちょっと事情がありまして、えっと、別居したいんです」


「かしこまりました」


 彼女は少し俺を見る。

 多分、個人情報を読み取ってるのだろう。


「増築しておりますが、現在のマイホームにはどちらがお住まいになりますか?」


「あ、スーナ。えっと、妻で」


「はい。財産の方はいかがいたしましょう」


「えっと、個人個人で」


「かしこまりました。それでは財産分与はしない、ですね」


「はい。あ、家具とか、食材とか、本とかは今のマイホームに残しといてください」


 と、こんな感じで、いくつか質問を受け、最後にこう言われた。


「手続きは完了いたしました」


「え? もう?」


「はい。以降、ゴーダ様がマイホームエリアに移動しますと、初期ハウスに移動します」


「はぁ」


 ドラマなんかの離婚シーンで良く見たけれど、やっぱりゲームでも本人はビックリするぐらいあっさり終わってしまうものなんだなと思った。

 というか、あっさりしてて良いのか。

 まだ、離婚じゃない。

 

「それじゃ、ありがとうございました」


「いえ。ご利用、ありがとうございました」


 やっぱり変だ。

 住民票の時は、えっと何て言われたか覚えてないけれど、ありがとうございますじゃなかったと思う。

 というか、本当、これはどうでも良いな。

 

 外に出ると、なんとなくしんみりして、しんみりするとなんとなく空を見たくなった。

 リアルだ。

 やたらリアルな空では、少し速めに雲たちが流れていた。




 レンタルBD屋でバイトをし、PCはレンタル出来ないんだよなとか考えながらの微集中モードで仕事をこなし、Bランクで30人にレンタル成功し、2400円を稼ぎ、俺はマイホームに戻った。

 

 久しぶりの初期マイホーム。


 久しぶりの生活臭のしないマイホーム。


 何故か、スーナとの初対面を思い出す。

 スーナは最初から、変で、天然で、ヒステリックだったなぁ。


 独りで薄ら笑い。


 嫌いじゃないだよ。


 それは確かだ。


 じゃあ好きなのかと聞かれると、迷わず好きだと答えられる。


 じゃあライクなのかラブなのかと聞かれると……、多分ライクの好きだと答える。


 でも、良く分からない。


 そもそも、俺にはラブが分からない。


 高校時代にも3人と付き合ったけれど、良く分からなかった。

 思うに、元彼女たちも良く分かってなかったように思う。


「わかんねえよ!! ラブって一体何なのさ!?」


 俺の心の叫びは自然と声に出てしまった。

 その大声の質問は、誰もいないマイルーム虚しく溶け込んだ。


 と思ったら、誰かが勝手に返事をした。


「ラブとは愛だろ。大学生なんだから、もうちょっと勉強しろ」

 

 父ちゃんだった。

 俺はラブグラスを外し、勝手に部屋を覗くなと抗議しようと思ったが、今の状況はあまりに恥ずかしくて、


「勝手にドア明けるなよ!」


 としか言えなかった。

 

 外したついでに、ログアウトする事にした。


 分からないなりに、真剣に考えよう。

 

 俺より5つも6つも7つも、えっと8つだったかな、とにかく歳上の彼女は、きっとラブが何なのか知っていて、きっと真剣に考えた結果、好きだと言ってくれたのだから。

 

 自分の気持ちと何度も何度も、納得できるまで対話しよう。


 そう誓いながら、俺は眠りについた。

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