飲んでも飲まれるな、なのよ。
「うん。仲良さそうだったよね? おじいちゃん」
「わしには分からんのですじゃ」
「そうですか」
私たちは仲が良さそうに見えなくもない関係だったのか。
私自身はうまくいってると思っていた。
でも、別居してしまった。
急ぎすぎたのかもしれないし、……ミーナさんは悪くないけれどミーナさんが明るいせいかもしれない。
理由は良く分からないけれど、別居してまったのだ。
チクリじゃない。
久しぶりにズキっと胸が痛んだ。
表情に出てしまってないかを心配しながら、私はイチローさんとお菓子を交換し、ミーナさんからは一方的にもらった。
それから、私たちは、ダーツをすることになった。
私は変わるのよ! 第一弾!
ミーナさんから、明るく振舞う術を学ぼうとしたのだ。
しかし、イチローさんは用事があるらしい。
「うぅ。今度、よろしくですじゃ」
なんかうめき声を上げながら、とても悔しそうにログアウトしてしまった。
カラオケで人と同じ曲を選び続けるイチローさんらしい、負けず嫌いな人だった。
そんなに、ミーナさんと張り合うなんて、愛の形にも色々あるんだなぁと思った。
ダーツはダーツバーでやれるらしい。
バーがあることに私は疑問を感じた。
気分が大事なラブワールドなのだから宜しいのだけど、ゲーム内で酔えない酒を飲む行為には、少し違和感を覚えた。
「覚えるからだめなのかな?」
一時間ダーツもせずに、私たちは語っていた。
気が付けば、私は酔っ払ってないのに、タメ口を使っていた。
不思議な事に、ゲームでもお酒を飲み続けながら、愚痴り続けていると、なんだか酔っ払った時の様な気分になった。
疑問を覚えてるくせに、すっかり雰囲気に飲まれていた。
「ん~。スーナはスーナのままで良いと思うんだけどな」
「でも、ゴーダ君は明るい人が良いと、家を出てしまったわ」
「彼、若いんだよね。若いとそうかもね。私もそうだったよ! 若いときは刺激的な人が魅力的に見えるんだよね~」
「へ~。ミーナさんはゴーダ君を若いと言える歳なんだ」
「ん? そうだね。もう、四捨五入したら三十路だよ!」
「若く感じる喋り方だったから、驚いたわ」
「そうかな? えへへ。私、若い喋り方か~。まぁ、ゲームではキャラ作ってるんだけどねっ!」
「ロールプレイだよね。……それが、ウケたのかな~。私もやってみようかな」
「だから、スーナはスーナのままで良いの」
「そうかな~」
そのまま、更に1時間語り続け、私はログアウトしなければいけない時間まで語ってしまった。
ゴーダ君のことを全部打ち明けるなんて、自分でも思っていなかった。
でも、アキコの他に相談できる人が出来たので、ちょっと気が楽になった。
2人が大丈夫だと言ってくれているのだ。
きっと、私たちは終わらない。
そんな気がした。




