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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
35/64

初めてのイベントはワクワクしたのよ。

 中央公園。

 

 そこは、大きすぎる公園だった。

 国営ゲームだけあって、どこかの国営記念公園レベルの広さがある。

 東京ドームが十何個か入りそうな広さがある。

 1日じゃその全貌を把握できない広さがある。

 

 だけれども、私は迷わない。

 

 中央公園の中央に位置する噴水で、名刺交換会は開かれているらしいのだ。

 ちゃんと調べてある。

 私は大胆なのに臆病で、臆病なのに大胆なのだ。

 ちょっと、今のは意味不明。

 まぁ、私の心を読める人はいないから良し。

 あ、ラブグラスは私の心を読めるのだっけ。

 これって、運営者さんは監視できたりするのかしら。

 って考えると怖くなるから、考えない。


 などとワクワク心からか、意味不明な自分との会話を楽しんでいると、直ぐに噴水に辿り着いた。


 わぁお~。

 なんか、人が、っていうかアバターが、いっぱいいる。

 1、2、3、4、5、無理! 数えられない。

 歩くのも窮屈な人口密度。

 こんなにもラブワールドプレイヤーがいたのかと驚いた。

 周りを見てみれば、3種類のアバターに分類できた。


 大声で「名刺とお菓子交換しませんか?」と言ってる人。


 多分、誰と交換するか物色するためうろちょろする人。


 多分、もう交換し終わったなりで、談笑する人。


 私は、うろちょろする人になることにした。

 相手は選びたいのだ。

 だって、別居中とはいえ、私は人妻なのだ。

 だから、女の人を探す。

 私の髪型と同じショートヘアーのアバターさんが近くで叫んでいたので、早速声をかけてみた。


「こんにちは」


「お、こんにちは~」


「えっと、交換してください」


「はいはい。じゃあ、まず私からお願いしますね」


 そう言って、ショートヘアーガールは、お菓子を渡してくれた。

 私が受け取る。

 名刺をスマートフォンから取り出し渡す。

 変な効果音が頭の中に鳴り響く。

 きっと、この音は、私にしか聞こえてないのだろう。

 出所不明、まさに頭に直接聞こえてくる音だった。

 バクバクバクバク。

 食べてる効果音だった。

 私は自分の意思とは無関係に、貰ったお菓子は直ぐに食べてしまうらしい。

 身体も2秒間使って、勝手に動いた。勝手に食べてしまった。


「美味しかったです。ありがとうございました」


 とお礼を言って、少し1人で、今の演出について考察したかった。

 結構驚いたのだ。

 臆病なはずの私は、調査不足だった。


「じゃあ、今度は私が名刺役ね」


 ショートヘアーガールは慣れているみたいだった。

 名刺を渡した後、お礼を言って、立ち去ろうとする私に、さりげなく教えてくれた。

 なるほど。

 お互いに交換するのか。

 そうしないと、私もこのお菓子をいつ渡して良いものか分からないものね。

 知り合いも、少ないし。


「あ、はい。ありがとうございます」


 私はクッキーを手渡す。


「お、レベル2か~。初心者さんなんだね~」


 何故か、私はお仕事レベルを見破られた。

 どうしてなのか、聞きたかったけれど、彼女は再び叫び始めてしまった。


「ラスト1箱です。誰か、名刺と交換しませんか~?」


 私はトボトボと歩き、彼女から少し距離をとってみて、名刺を眺め、眺め、眺め、何度も読み返した。


 ・名前 チャンチャン

 ・性別 女性

 ・年齢 31歳


 この3つしか書いてない名刺だった。

 さて、どうして良いものか悩んだ。

 でも、直ぐに名刺の取り扱いを思い出し、スマートフォンに食べさせる。


 その後、残りの4つのクッキーも交換できた。

 スマートフォンに増えた4人の名前。


 でも、きっと、もう連絡する事はないだろうな。


 ゲームに慣れてない私には、この希薄な関係が妙に思えた。

 ともあれ、お菓子を貰って1点、お菓子を渡して1点。

 10点ゲットだわ!

 私は謎の達成感に満ち溢れ、満足しながら、ログアウトした。

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