パクパク。モグモグ。パクパク。
「ひゃっほーい。本日2度目のただいまだね」
ゴーダ君は、いつかの時の用に、ドアを押さえてはくれなかった。
我先にと家に入り、はしゃいでいる。
そんな彼も、今の私には可愛く見える。
私はお姉さん気分で、
「ほら、騒がないの」
と注意をし、
「お腹減ってるでしょ? 鳴ってたもんね。直ぐ作るから待っててね」
早速料理に取り掛かる。
「ね~。何作るの~?」
とゴーダ君は甘えてくるので、
「内緒。この日のために頑張ったんだから、期待して良いよ」
と私は赤面しながらなだめる。
「分かった~。待ってるね」
とゴーダ君は素直に甘えてきた。
なんか、気のせいじゃなければ、ナチュラル度が上がってきている。
それは私に好意を寄せているからだろうか。
あるいは単に慣れただけなのか……。
まぁ、良いわ。
私は悩みそうになった自分に言い聞かせる。
まずは、目の前の料理に集中よ。
もちろん、集中しようがしなかろうが、半オートなのであまり意味はないのだけれど、雰囲気って大事。
最近になって思うのだけれど、ラブワールドって、大人が最新テクノロジーを駆使して行う、ママゴトなのよね。
だから、本当、雰囲気って大事。
2分後。
私は料理に失敗した。
さりげなく、ゴミ箱にポイする。
現実との区別できなくなるからゲームは危険だと主張する人は昔からいるらしいけれど、私は大丈夫。
リアルの私は、よっぽどの失敗じゃなければ食べる。
さて、それはどうでも良く、2回目の挑戦で、私は見事成功した。
実は、冷蔵庫に予備があるから、失敗を続けても良かったのだけれど、やっぱり、ここも雰囲気重視で出来たてを食べて欲しいのだ。
それが、恋するナースの純情なのです。
敬語を使ってまでして、私は私に言い聞かせる。
心臓が騒ぎすぎているからだ。
気恥ずかしさがあってのことかと、言い聞かせたのだけれど、効果はなかった。
どうやら、ゴーダ君の反応を心配しての緊張か。
ふ~。
大丈夫。
私の料理うんぬんよりも、ゴーダ君なら大丈夫。
きっと、無邪気にはしゃいでくれるはず。
私は、両手にお盆を持って、そっとゴーダ君に近づいた。
「お、出来たんだ。やった~」
ゴーダ君は自動アクションでジャンピング万歳をした。
私は照れた。
「お、肉じゃがじゃん! やるね~」
1褒めを頂いた。
さぁ、見せてよ。
君は何度おいしいと言ってくれるの?
私はそう発言しようかかなり真剣に悩み、きっと私たちの関係は、出会って1週間の関係は、それほど深くない気がしたので、言わなかった。
「さぁ、どうぞ」
とだけ言った。
「うん。いただきます!」
パクパク。
「うほ。あつっ。でも、ウマイ!」
モグモグ。
「いや~、味がしみこんでるよ」
パクパク。
「うん。スーナの料理は世界一だね。何を作らせても、上手だね」
とゴーダ君は私の予想通りに褒め殺してくれた。
味のしない料理を、食べるフリしているだけなのに、やたらと褒めてくれた。
ちょっとうそ臭くもあったけれど……。
それでも、私は殆ど何も言えずに、ただただ顔を赤くするだけだった。
怒ってばっかの空君とは共有できなかった、私の知らない、カップルの幸せな瞬間。
あぁ、今、私、もっのすごく、満たされている!!
でも、食事の後に事件が待っていた。




