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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
29/64

カラオケミックス

 ゴーダ君の笑い声に紛れて、私のスマートフォンの着信音がなった。

 イチローさんからの返信だった。


『では、30分後に、ショッピングエリアのカラオケミックスで待ち合わせしましょうですじゃ!』


 と書いてあった。


「うぉぉぉ! ロールプレイヤーなんだね」


 ゴーダ君が勝手に覗き見してきた。

 そういう所も、他人だったならば許せないのだろうけれど、なんだか可愛く見える。


「うん。そうみたい」


「俺、そういうの好きなんだよね」


 あぁ~……。ゴーダ君も変なキャラ作ってたなぁ。


「でも、チャラ男は止めた方がいいよ。似合ってない」


「そうかな~? 自信あるだけどな~」


「絶対よ。絶対駄目」


「アイアイさー」


 とにかく、私たちはショッピングエリアに向かったのだ。

 

 

 

 カラオケミックスには、私たちが先に到着した。

 少し遅れて、イチローさんとミーナさんが現れた。

 私たちは簡単に挨拶をする。


「はじめまして。イチローですじゃ」


「はじめまして! ミーナだよ!」


「どうも。はじめまして。ゴーダです」


 おい。

 私との初対面では、タメ口だったじゃないか。

 そう思いながら、私も流れにそって挨拶をする。


「はじめまして、の方はいないんですけれど、なんか流れ的にねぇ? そういうわけでよろしくお願いします。スーナです」


「スーナとミーナって似ている名前だね」


 とゴーダ君。


「ね! ビックリしたよ!」


 ミーナさんは確かに名前が似ている気もする。

 そんなどうでも良い事に気が付く彼も、なんか素敵……。

 って、あれ?

 本格的にヤバイな。

 完全に、やられちゃってるじゃないの。私。


 カラオケミックスはワンフロアは小さいながらも、ビルタイプの大きな建物だった。

 えっと……、


「七階もあるんですね」


「どうせ、個人エリアなのにね」


「見た目は大事だよ!」


「雰囲気重視なのじゃろうな」


 私たちは中に入っていく。

 受けつけの人は、あの演出しかないのだろうか。

 机の檻に囲まれている受付のお姉さんがいた。


「俺、カラオケはやったことないんですよね。あ、ゲーム内の話です」


「ワシも初めてじゃが、調べてきましたぞ」


 イチローさんはお姉さんに話しかける。


「歌いたいのじゃ!」


「かしこまりました。それでは、5階の501号室を使用下さい」


 手続きは思いのほか簡単だった。

 私たちは、お姉さんの右後ろにあるエレベーターに乗り込み、5階で降り、501号室に入室した。

 道中、他の部屋を覗き見ることが出来た。

 つまりは、私たちの予想は外れていて、個別エリアじゃない作りみたいだった。


「へ~。普通のカラオケじゃん」


 ゴーダ君は液晶画面つきの大きなリモコン端末を見ながら言った。


「そうだね!」


 ミーナさんもリモコンで歌を探しながら言った。


 リモコンは2つしかないので、私とイチローさんは待機。


「順番どうします?」


「わしのワガママに付き合ってもらってるのじゃ。わしは最後でよいですぞ」


「じゃ、私1ば~ん」


 ミーナさんはリモコンを操作。直ぐに曲は流れる。

 私はミーナさんからリモコンを受け取り、ゴーダ君を右手の全部の指で指差す。 

 ジェスチャーで『お先にどうぞ』のつもり。

 ゴーダ君は私の意を汲んでくれたみたいで、リモコンを操作した。

 ビデオと歌詞が流れている、部屋の奥、中央にあるテレビに一瞬だけ曲名が表示された。

 結成25年の長寿男性アイドルグループの最新曲だった。

 

 さて、私は、こういうとき、洋楽をいれることにしている。

 音痴だからだ。

 みんなが知らない歌ならば、音痴が分かりにくいかな~という算段だ。

 でも、アキコに言わせれば、英語の発音が下手な私の洋楽は、かえって音痴を目立たせるのだそうだ。

 それでも私は洋楽を歌うのだ。

 単純に好きなのかもしれない。


 ミーナさんが歌い終わった。

 点数機能つきみたいで、点集が表示されていた。

 中々上手だと思ったけれど、機械の点数でも高得点だった。92点だった。


 次はゴーダ君の番だ。

 お、意外と? かは分からないけれど、上手だぞ。

 へ~、歌う時はこういう声なんだ。

 などと、ちょっぴりウットリしていると……、最後にイチローさんが曲を入力した。


 この時まで、私は、イチローさんを、ロールプレイする以外は普通の人だと思っていた。

 だけれども、ちょっとイチローさんの選曲は変だった。

 普通じゃなかった。

 

 ゴーダ君と同じ曲を入力したのだ。

 

 画面に表示された時、私はビックリした。

 それはゴーダ君も同じだったみたいで、一瞬歌が止まった。

 でも、初対面だからだろう。気にしてないフリをしながら、直ぐに再開していた。

 ミーナさんはバツが悪そうにゴメンなさいのジェスチャー。

 イチローさんは誰とも目線をあわせようとしないで、目を閉じ、真剣な表情でうなずきながらゴーダ君の歌を聴いていた。

 私も、気になるけれど、気にしないことにした。

 

 その後、私たちは3曲ずつ歌い、約リアル1時間が経過した所で、イチローさんがそろそろログアウトしなくてはいけないらしく、終了した。

 イチローさんは、全部、ゴーダ君と同じ歌を歌っていた。

 変な人。

 男の人はそういう生き物なのかしら。

 勝ち負けにこだわりすぎる、本能でもあるのかしら。

 女の私には理解できない行動だった。

 

 ミーナさんはやたらと歌が上手で、全部が90点以上だった。

 私は全部が60点代だった。

 ゴーダ君も中々上手で、80点前半だった。

 イチローさんも中々上手で、80点代だった。

 

 あれ?

 もしかしたら、みんなが上手なんじゃなくて、私が下手なのかもしれない。

 でも、気にしないことにした。

 

 カラオケ代40円はイチローさんが負担してくれた。

 しかし、会計を済ませると、直ぐにログアウトしてしまった。


「おじいちゃんは、夜の人間だから、もう寝なくちゃ何だって。予定睡眠時刻を過ぎても、みんなと遊びたかったんだって」

 

 ミーナさんはそうフォローしていた。


「いや~、でも、ちょっと変わった人ですね。俺、嫌われるようなことしちゃたのかな?」


「ううん。おじいちゃんが変なんだよ。

 前、2人でカラオケ行った時も、私と同じ歌を歌ってきたし。

 そして、私が勝つでしょ。

 するとね、『わしが勝つまで同じ曲歌うのじゃ』ってうるさかったんだよ」


「へ~、変わってますね~」


「だね~」


 私たちはそのまま、1時間ほど喋り、ゴーダ君のお腹が鳴ったので、解散となった。


 そうだ。

 忘れていたけれど、私はにくじゃがを準備していたんだった。

 喜んでくれるかな。


 私はにやけながら、タクシーに乗り込んだ。

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