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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
28/64

騙してたのね!

 電源を入れたまま、ラブグラスをはずす。

 ちょっと早めのお昼ごはんを食べる。

 再びラブグラスを装着する。

 

 すると、奇妙な音が聞こえてきた。

 

 キューン。ズズズズ。シクシク。

 

 どうやら、私のアバターが、私の意志とは無関係に泣いているらしい。

 何事かと思い、私は焦った。


「ねぇ。泣かないで」


 私は私を慰めてみるも、1分に1回5秒間。

 規則正しく私は泣き続ける。

 焦る。焦る。焦る。これは、困った。

 しかし、人は焦っている時に、別問題の答えが見えたりする。

 あら、いけないわ。

 イチローさんのお誘いに、オッケーのメールを返していない。

 私は泣きながらメールを送信。

 

 その時だ。

 我が家のドアが開かれる音が聞こえた。

 ゴーダ君が帰ってきた音だ!


「ただいま~」


 彼はのほほんと挨拶。


「おかえりなさい!」


 私は自分でもビックリするぐらい陽気に挨拶。

 っていうか、何それ?


「なんで黒いの?」


「日焼け日焼け。ほら、旅行帰りってさ、日焼けのイメージない?」


「ないよ。

 それに、ゴーダ君は温泉に行ったんだよね。

 もっとないよ。

 温泉で日焼けした話なんて聞いた事ないよ」


「だから、イメージ。雰囲気。アバターってそういうの大事よ?」


「そう。あなたが満足なら、私は何も言わないわ」


 彼はちょっと変わっている。

 大興奮の私を、一瞬で冷静にしてくれる。

 でも、その尖った部分が、なんだか愛おしい。

 他の人ならば、欠点にしかならないはずなのに、彼の時は愛おしいのだ。

 じゃなくて、そうだった。


「大変なの! 私、泣き虫ちゃんなのよ!」


「あはは。本当に大変そうだね。

 さっきまで忘れてたのに、その慌てようは大変そうだ」

 

 ゴーダ君は自動アクシャン付きで大笑いしてみせる。


「そうよ。大変なのよ!」


「大丈夫。ほら、もう泣き止んでるでしょ?」


「あら、あらあら、本当だわ」


「シャックリみたいだね。

 本人が気付かないうちに泣き止んじゃってるなんて」


「もう……。笑ってないで教えてよ。答えを知ってるんでしょ?」


「うん。知ってる」


 彼はそう言って、スマートフォンを取り出し、少し操作してから、私に画面を見せてくれた。

 画面にはゴーダ君の4つのパラメーターで状態が表示されていた。 


「寂しさ度が減ってるんだよ」


 お腹も減ってないはず。ゴーダ君と遊ぶために準備したもん。

 疲労度も大丈夫なはず。ゴーダ君と遊ぶためにベッドで放置してたもん。

 でも、寂しさ度は無関心だった。

 確か、プレイヤーとコミニケーションをとらないと駄目なのよね。

 昨日、イチローさんと遊んでから、結構な時間1人で遊んでたけれど、誰ともお話していない。

 私は慌てて確認してみる。

 私の寂しさ度は33だった。


「だから泣いてたのね」


「そうそう。寂しいと泣いちゃうんだ」


「ふ~ん」


 ……。沈黙。何故かゴーダ君はワクワク顔で私を見つめてくる。

 私は反応に困る。

 痺れをきらしたゴーダ君は首をかしげながら聞いてきた。


「怒らないの?」


「何に?」


 ……。沈黙。


「いや、ほら、騙したじゃん。俺」


 私は思い出した。

 ゴーダ君は、寂しさ度は特に悪影響がないと言っていた。


「酷い! 騙したのね!」


 私はプチ噴火。


「騙したのさ!」


 ゴーダ君は本日2度目の大笑いアクション。

 私は少し腹がたつけれど、やっぱり彼といる時間は幸せだなと思っていた。

 この時は、後に大噴火するなんて、思ってもいなかった。

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