今日だけは2人が良かった。
3連休3日目。
私は朝からログインした。
肉じゃがを2回作り、お仕事に出かけた。
最後に、スーパーで食材の補充をしようとした時である。
私のスマートフォンにメールが届いた。
『お昼頃に帰れそうだよ! 一緒に遊ぼうね!!』
ゴーダ君からのメールである。
私はすかさず返信。
『分かったよ。疲労度とか回復しておくね』
胸がドキドキ。ワクワク。
私はスーパーで寄り道せず必要な食材だけを買い、家に戻った。
家について直ぐだった。
また、メールである。
『今日も遊びませんかですじゃ。カラオケがあるらしいですじゃ』
これはイチローさんからのメールだ。
私は断った。
旦那が帰ってくるので遊べない、と。
イチローさんは粘った。
ダブルデートはいかがですか、と。
3回目の粘りに、私は負けてしまった。
『夫に聞いてみますね』
そう返信してから、ゴーダ君にメールをした。
彼の返信は早かった。
『オーケーだよ。みんなで遊ぼっ!』
全然乙女心を読んでくれない男だった。
いや、あるいは、というかかなりの確率で、ゴーダ君は私を仮想妻としか見ていない。
恋愛対象として見ていないのではないだろうか?
なんだかそんな気がする。
いや、それが普通な気がする。
こっちは、胸がドキドキワクワクしているのにだ。
中々返信できない。
いやだ。
2人きりで遊びたい。
今日だけは、2人きりが良い。
私はイチローさんに返信する前に、一度ログアウトした。
アキコに電話するためだ。
アキコは専業主婦をしており、この時間、家族が出かけてお昼前の時間は、電話がつながりやすいはずだ。
「もしもし」
アキコは3コール目ですぐに電話に出た。
「もしもし。私よ。恵子」
「うん。どうしたの?」
私はラブワールドで、友達と恋人に同時に誘われた事を告白した。
「なんだ。それなら、遠慮なくダブルデートで良いじゃない?
意外と2人きりより、緊張しないダブルデートの時の方が、距離感縮まるかもよ」
アキコはダブルデート賛成派らしい。
かくいう私も、正直、ゴーダ君の答えがYESだった時点で、何の言い訳も思いつかなかった。
イチローさんの誘いを断る理由を失っていた。
「分かった。ごめんね。お昼前に変な電話して」
「ううん。友達の恋話は楽しいよ。じゃ、頑張ってね!」
こうして、私は、私たちは、カラオケに行くことになった。
私はゴーダ君が返ってくるまで、アバターをベッドに寝かせながら、リアルお昼の支度をした。




