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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
24/64

イチローとミーナ

 アキコの話によると、恵子がラブワールドを始めたらしい。

 俺と別れて、まだ3ヶ月だと言うのに、始めたらしい。

 早速、俺はアキコに探りを入れさせた。

 今、俺は、電話をかけているアキコの隣にいる。


「はいはい。自分から切れない女のために、切りますよ」


 どうやら、電話はもうすぐ終わりそうだ。


「バイバイ」


 終わったみたいだ。直ぐに俺は聞く。


「どうだった?」


「聞いてたんでしょ?」


「お前の声しか聞こえん」


「より、もどしたくないって」


「それは分かったよ。俺は諦めんけどな」


「で、歳下の旦那様が出来たみたいよ」


「何~!!」


「18歳だって」


「何だと!!」


 俺は怒鳴ってしまう。

 別にアキコは悪くなければ、恵子だって悪くないのに、何だか酷く腹立たしい。


「ケッコー上手く行ってるみたいよ」


「名前は? ゲームの名前は?」


「スーナだって。ナースだから逆から読んでスーナを名前にしちゃったの。

 笑っちゃうでしょ。あの子、単純なのよね」


「笑えん。クソ。何故、登録したら直ぐに始められんのだ」


「うそ……。アニキもラブワールドやるの?」


「もちろんだ。昨日申し込んだ」


「引くわ~。ラブワールドやる31歳も、元彼女追いかける31歳も引くわ~」


「黙れ。それだけ、恵子は魅力的なんだよ。お前と違ってな」


「さいですか」


 アキコは不貞腐れる。

 いかん。それじゃ、駄目だった。


「なぁ、2セット頼んだから、お前もやれよ。ラブワールド」


「嫌よ。興味ない」


「まぁ、聞け。もう付き合い始めの女を口説くには、こちらも彼女いるように見せかけるのが一番だ。

 油断させて仲良くなる」


「キモイよ。言っとくけど、今、あんた超キモイ事言ってるからね」


「そう言わずに頼むよ。

 俺さ、更に油断させるためにおじいちゃんロールプレイするから。

 そこで、ロールプレイ失敗するたびに、お前に飯をおごる。

 これなら、どうだ?」


 アキコは食い意地がはっている。これならどうだ?

 少し悩み、アキコは食いついてきた。


「オーケー。分かったよ。

 でも、ゲームとかやってる暇ないから、時々だけね」


 こうして、俺はラブワールドへ踏み入れるのだった。

 

 


 俺は工場で働いている。

 次の配置換えまで、常夜勤だ。

 主にはパートさんがたの指導や管理をするわけだが、ゲーム内ではライン作業をやらされた。

 なんとも、良いスコアはでないシステムだった。あるいは俺が苦手だった。

 わがままばかり言うパートさんだけれど、彼女たちがいなければ工場は動かない。

 もちろん日ごろから感謝はしている。

 そしてこのゲームを始めて、ちょっと、感謝の気持ちが強くなった。

 が、それはどうでも良い。

 丁度、スーナの夜勤明けが間近にあった。

 人の少ない昼間にログインしてくれれば、見つけやすいと思った俺は、その日に探す事にした。


 ショッピングエリアを散策する事1時間。 

 恵子、すなわちスーナは直ぐに見つかった。

 ゲーム内とはいえ、アバターとはいえ、久しぶりに見る恵子は、俺の心臓は破裂しそうなぐらい激しく動かせる。

 リアルと同じく、困った時は、ぼ~っとするのがあいつ流らしい。

 ベンチに暇そうに座っていた。

 俺はドキドキ高鳴る心臓が、少しだけ落ち着くのを待ち、声をかける。

 おっと、その前に、設定しなくては。

 このゲームでは、プライバシー的な意味があるのか、変声機能がある。

 俺は少し低めの声に設定し、今度こそ声をかける。


「参りましたな」


 この日、少しの会話をした。少ししか会話できなかった。

 だがしかし、次の日も遊ぶ約束が出来た。

 なんでも、アキコの話によると、俺の直ぐ怒る所が気にいらんらしい。

 それはリアル上司にも指摘されていた。

 直す訓練ついでに、今回は褒め殺しで口説こうと思っている。

 さぁ、今日こそが、俺の真のラブワールドのスタートだ。

 今度こそ、今度こそ、絶対に手放したくない。

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