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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
22/64

リアルスコア

 ミーナさんがタクシーを呼ぶ。

 私たちは三人揃って後部座席に座った。

 このシチュエーションは狭そうなのだけれど、不思議な事に、そんなに窮屈な感じはしなかった。




 ボーリング場は、交流エリアにあった。

 これで私は三つ目のエリアを知ることになる。

 マイホームエリア、ショッピングエリア、交流エリア。

 交流だけ日本語なのは、まぁ、多分、気にしないほうが良いのだろう。

 考えても、製作者と連絡取れない私には、確かめようがないのだ。

 

 ボーリング場は、普通だった。 

 大きな二階建て建物で、目の前に駐車場がある。

 見慣れたボーリング場だ。

 しいて難癖をつけるならば、全然車が止まってない事ぐらいである。


「駐車場の意味ないですね。二台しか止まってない」


「あ~、それはね~、まだ車を持てる程稼いでる人が少ないからだよ」


 とのことだ。


 中に入ると、ちょっと手順は違う。

 私の知っているボーリング場は、

 靴を借りて、

 何ゲームするかを受けつけの人に伝えて手続きをし、

 手続きが完了してどのレーンが使えるかが分かり、

 それからボール置き場からボールを選んで、

 やっとゲームスタート。


 だけれども、この世界では開いている場所に先に入り、その場で登録できるのだそうだ。

 靴もそのまま、玉も一種類なのだそうだ。


「不思議ですね」


「この世界では、重さを感じないからじゃろうて」


「靴も意味ないしね。アクセサリーだよ。

 だから、雰囲気を味わいたい人は自前で用意するし、気にならない人はそのまんまプレイするの」


「でも、満員だったらどうするんでしょう?」


「それは、えっと、どうじゃったかな」


「トイレの奥……、えっとその自販機じゃなくてもっと奥ね……」


 私はミーナさんの誘導にしたがって目線を移動する。

 突き当たりちょっと手前、右手側の壁に、怪しい扉があった。

 人の出入りが激しい、謎の扉があった。


「それがね、インスタントエリアの入り口なの。個人エリアね」


 なるほど。

 スキル屋さんで経験した、個別エリアのことだ。


「どうします? 4と8レーン空いてますけど」


「4レーンにしましょうですじゃ」


「パーティ組まないと、個別エリアに一緒に行けないしね。

 でもパーティ組むと、実年齢が分かるでしょ?

 だから、おじいちゃんは嫌なんだって」


「私は構いませんよ。

 貸切りボーリングも良いけれど、周りの喧騒あってこそのボーリングって気もします」


「じゃ、4レーン使おうね!」


 ミーナさんは走っていく。


 あ、場所取りだ。

 私も後を追いかける。

 でも、走らない。


 4レーン手前の待機スペースには、もう玉が4つあった。

 ミーナさんが、何やらタッチパネルを操作している。


「オッケー。三人登録したよ」


 そう言われて、レーンの上、天井近くにある画面を見てみれば、3人の名前があった。

 でも、ミーナさん以外の2人は「???」さんだった。

 まだ手続きは完了してないらしい。


「ここ。ここにスマートフォンをかざしてね」


 私は指差された、タッチパネルに携帯をかざしてみる。

 シャリン、と音がした。

 きっと、私の個人情報を読み取ったのだろう。

 確かめるように天井画面を見てみると、私の名前があった。

 遅れて到着したイチローさんも同じ作業をする。

 これで、3人の名前が揃った。

 

 いよいよ、ゲームスタートだ。

 

 でも、その前に……。


 私は、1つ、今更ながら報告しなくてはいけない事があった。

 うっかり、忘れていた。


「あの、私リアルのスコア、60なんです。お手柔らかにお願いしますね」

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