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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
21/64

怪しくなんかないよね?

 さて、本当に何をすれば良いものか。

 

 私は人間観察から、スマートフォン観察へと行動を変えた。


 おじいさんのお腹の音を聞いたからかもしれないし、気付かないうちに届いたメールに期待したからかもしれない。

 メールはもちろん届いてなんかいなかった。


 私はふてくされながら、ステータスを確認してみた。

 出かける前に腹ごしらえもしてきたし、ログインしてからそんなに時間もたってないので、特に問題はなかった。 


 他にもアプリは色々あるけれど、知らないアプリを起動するのは怖かった。

 あ、これなら分かる。

 料理レシピアプリを起動した。

 カレーと目玉焼きだけだった。

 そして、ふと思う。

 あいつが帰ってきたら、肉じゃがを作ろう。

 このままスキル屋さんに向かっても良かったのだけれど、初心者用肉じゃがが存在するのか、存在してもレベル1から作れるのか不安だったし、確認しにお店まで行くのも億劫だったので、私は卵を大量に買い込み帰宅した。


 目玉焼きでレベルを上げるのだ。


 何故カレーじゃないかと言うと、安いからだ。

 あと、毎日カレーより、毎日目玉焼きの方が、私の価値観的に抵抗なく受け入れられるからだ。

 

 いくつかは食べてみて、殆どは冷蔵庫に保存した。

 いずれ朝になると仕事に出かけ、直ぐに帰宅し目玉焼きを作る。

 5時間ほどゲームをしていると、ゲーム内の私は疲労で倒れてしまったので、今日はこの辺で終わる事にした。


 こうして、三連休初めは独りで過ごした。

 私は料理レベルを一つ上げる以外、変化はなかった。

 

 

 

 三連休二日目。

 私は今日もお昼頃にログインした。

 おじいさんに会うためだ。

 私が行った時には、もう、おじいさんは例のベンチに座っていた。


「こんにちは」


「やぁ。こんにちはですじゃ」


 私たちは普通の挨拶をする。

 すると、突然、


「ヤッホー」


 知らない女の人に後ろから声を掛けられた。


 振り返るとそこにいたのは、なんとなくボーイッシュな印象を受ける人だった。

 つば付き帽子を前後逆に被ってるせいかもしれない。


「彼女は、この世界の妻ですじゃ。名前はミーナですじゃ」


 おじいさんはまだ名乗ってすらいないのに、先に妻の簡単な自己紹介をしてくれた。


「どうもこんにちは。私はスーナです」


「ミーナだよ。よろしくね」


「そういえば、私も名乗っておりませんな。イチローと申しますじゃ」


 それにしても、なんとも歳の差カップル。

 アバターの見た目だけで判断するならば、50ぐらい離れていそうだ。

 

 それよりも私にとって大事なのは、妻がいるということは、おじいさんはナンパ目的じゃなかったのだ。

 

 ちょっと、一安心。


「どうですかな? スーナさんは目的は見つかりましたかな?」


「えぇ。料理を頑張ろうかなと思います」


「なるほどなるほどですじゃ」


「ミーナも料理レベル上げ中だよ。やっと3になったの」


「凄いですね。私、昨日頑張ったけれどレベル2でした」


「大丈夫だよ。3までは結構簡単に上がるみたい。

 レベル2になってから、目玉焼き30個も作れば良いかな」


「じゃあ、あとちょっとで上がるのかしら」


「あれ? あれあれ? もしかして、自分のスキルレベルの見かた分からないの?」


「えぇ」


「えっとね、ステータスアプリを起動するでしょ。それから、コマンド『スキル呼び出し』で見れるよ」


「そうなんですか。ご親切にありがとうございます」


 ……。

 沈黙。

 多分、私がステータスアプリを起動し、コマンドを唱えるのを待ってくれている。


「ゴメンなさい。ちょっと、人前でコマンドを唱えるのには抵抗があるんです。後で確認してみますね」


「そうですな。俺も恥ずかしいですじゃ」


「おじいちゃん。俺、使ったよ。今度のご飯代はおじいちゃん持ちね」


「やっべ。じゃなくて、これは一本とられましたな」

 

 何やら、ロールプレイに罰金制度があるらしい。

 思ったよりも厳しい世界だな~。

 イチローさんはロールプレイが崩れた事を誤魔化すかのように一度咳払いをし、ある提案をしてきた。


「さて、これから私たちは、ボーリングで遊ぶのですが、良かったらご一緒いかがですかじゃ?」


「はい。是非、ご一緒させてください」


 もう警戒していなかった私は、ご一緒する事にした。

 悪い人ではなさそうだし、歳下の仮想奥さんまでいるのだ。

 何より、この時の私は、暇だった。 

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