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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
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登録したよ。

 ありえないニュースを見たのは、一週間前の事だ。


 2030年現在、みんな長生きしちゃうし、若者は結婚しないし、17年前に予想していたよりもずっと深刻な超高齢化社会なのだそうだ。


 それはなんとなくだけれど、知っていた。

 驚いたのは、その続き。

 政府が発表した新対策のニュースに私は驚いた。


 あ、若年夫婦に助成金がどうのとか、子育て支援を強化するとか、まぁその辺りは、ぼ~っと、ふ~んっと、へ~っと、無関心にテレビを眺めていたのだけれど、最後にとんでもないことをニュースキャスターは言った。


 国が私たちの大事な税金を使って、ネットゲームを作るらしい。

 高齢化社会や少子化社会対策として、出会い系ゲームを作るのだそうだ。


 なんだ、その、万年一次落ち小説家志望みたいな発想。

 安っぽいぞ日本。

 お馬鹿っぽいぞ日本。

 どうしちゃったの日本。


 それだけじゃない。


 どっかの有名そうな大学のどっかの世界では偉いらしい教授さんはインタビューにこう答えていた。


「今時の若者の2人に1人はネット依存あるいは携帯電話依存だと言われています。その国の短所を上手く利用した対策と言えますね。更に、恋人が出来れば自然とこれらの依存症は治るかもしれないですね」


 んな訳あるか。

 恋人が出来たら、ますます携帯電話から離れられなくなるって。

 少なくとも私の場合はそうだ。


 そんなニュースを見た時、1週間前の私は、呆れ果て、ちょっと腹立たしくも、大した興味を持たなかった。


 だけれども、国は本気だった。


 インターネットを開けば、国営出会い系ネットゲーム『ラブワールド』の宣伝ばかり。

 テレビを見ても『ラブワールド』のCMばかり。

 雑誌の裏にもいるよ。『ラブワールド』。


 ついに、興味を持ってしまって、インターネットで登録手続きを済ませたのは、3日前の私。


 しかし、直ぐにはラブワールドの住人にはなれなかった。

 何でも専用の機械がいるそうだ。


 そして、今日、仕事から帰れば小包が届いていた。

 いや、正確に言うなら不在通知が届いていたのだけれど、そこは大事じゃないでしょ?


 横50cmの奥行き30cmの高さも30cmのダンボールを私は受け取った。


 配達員さんは腰のポシェットから機械を取り出し、

「ここに親指を置いてください」

 と、受け取りの指紋認証をする時チラリと私を見た気がした。

 へ~この人もラブワールドやるんだ、と思われてる気がして少し気恥ずかしかった。

 ピーと機械音がなり機械が指紋を読み取った事を知らせ、配達員さんが私の身分を確認するため機械に視線を集中した時、私もチラリと配達員さんの顔を確認してみた。

 仕事日焼けをした彼は、縦長気味の顔をしたイケメンだった。

 私は余計に恥ずかしくなった。


 ともあれ、ついに届いたのだ。


 私は寝室、ベッドの上で、ダンボールを開けた。

 一番最初に目に飛び込んで来たのは、がっちりと動かないようにダンボールと発泡スチロールで固定された、ごつ過ぎるメガネだった。

 いや、なんとかディスプレイと言う、メガネ型ディスプレイだった。


 とりあえずかけてみる。

 真っ暗だ。

 外の光を完全に遮断するみたい。

 そして重い。

 見た目がごつかったのだから、予想はしていたけれど、手に取った時は軽かったのだ。

 だけれども、かけるにはちょっと重いよ。

 これ、重いよ。

「重いの~!」

 私は独り文句を言って、メガネを外した。


 どうやらこの未知の機械は、説明なしに私が使える代物じゃないらしい。

 重くて暗いだけだった。


 ダンボールの中には、他に大きな紙が一枚と、小さな葉書が一枚、あとは何かのカードが一枚あった。


 葉書には私の個人情報が書かれていた。職業とか名前とかが連なり、次にこれらの確認を完了したとあり、最後に変更がある時は下記に電話下さいと記されてあった。


 私の興味は大きな紙に移る。


 広げてみると、新聞程の大きさだった。

 でも紙質は新聞より丈夫で厚い。

 メガネの使い方を簡単に書いているみたいで、一緒に送られてきたカードをメガネで言うなら左目のレンズ辺りにあるカードリーダに差込み、メガネで言う右目のレンズ辺りにある電源ボタンを押すだけらしい。


 ツーステップ。とても簡単。


 おっと、見落としていた。

 あとは耳掛けにあるイヤホンを装着するだけ。


 スリーステップ。機械音痴の私にとってもとっても簡単。


 こうして、私がラブワールドに足を踏み入れたのは、24歳の誕生日を終えてから迎える、最初の水曜日のこと。

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