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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
18/64

ゴーダ君ってこんな人なんです。

 一月ぐらい前かな。

 俺がラブワールドに興味を持った理由は一つだ。

 丁度出会い系サイトについて、慎重に調査していた時に、ブラウザに広告が表示されていたからだ。

 月5000円は、正直大学一年生には……、そうでもないかも知れないが、俺には高い。


 だから迷った。


 しかし、どうも、男性という立場から出会い系サイトを使うと、より経済的負担が高そうだった。


 それが理由だった。


 しかし、ネット登録してから荷物が届くまで、3日も待たせるのは、頂けないシステムだ、と憤慨したのを良く覚えている。



 

 ラブグラスを装着すると、そこはもう一つの世界だった。

 確かにスゲーわ。

 民間企業が頑張ってる中、こいつらどんだけの国家予算をゲーム開発につぎ込みやがった?

 まぁ、いいや。

 俺、消費税しか払ってないし。

 とにかく、そのリアルさはスゲー、の一言だった。

 俺みたいな、ゲーム中毒者じゃなくちゃ、実写との区別が付かないような圧巻のグラフィック。

 ブレインリーダーとかいう、あやしいシステムも中々に反応が早い。

 最新技術はスゲーわ。

 



 それからの俺は、暇さえあればラブワールドの住人だった。

 当初の目的も忘れ、ひたすら、その世界を遊びつくした。

 正直、彼女とかそれ所じゃない出来映えだ。

 やるじゃん、日本。

 しかし、ふと寂しくなり、ダーツバーの隅っこでクールに一人酒してる女性は口説いた。


 仲良くなった。

 気が合った。

 

 まるで最初から家族みたいだった。


 しかし1週間後、ドキドキしながら実名を載せての名刺交換をしてみれば、マジ家族だった。

 母ちゃんだった。

 何やってんだよ。

 どうやら、呼びかけても反応しないぐらい俺が夢中になっているゲームに、興味を持ってしまったらしい。


 家の母親はゲーマーだ。


 っていうか、日本。

 既婚者ははじけよ。

 色々揉め事になるぞ。


 そう思いながら、俺たちは『お父さんには秘密ね』とこの話題を封印した。

 父親に、出会い系ゲームをやってるなんて、知られたくない。



 

 最近、バイトを始めた。

 ラブワールドを気兼ねなくプレイするためだ。

 プレイ時間が減るのは悔しいが、やっぱり、5000円は高い。

 週2回、1日3時間の宅配補助のバイト。


 先週、テレビで特集を組まれたせいか、やたらと送り人に『ラブワールド事務所』が増えた。

 いや、結構恥ずかしいゲームだから、送り人からどんな品物かを想像できない方が良いと思うぞ。

 と届かないアドバイスを心の中で思う。


 しかし、そこが国運営の欠点なのだろう。

 仮にこんなにも『ラブワールド事務所』なんて直接的な名前じゃなかったにしろ、いずれはネットで広まる。

 嘘をつけない国運営としては、フェイクのしようがない。


 俺は手押しカゴから、荷物を一つ取り出した。

 また、送り人『ラブワールド事務所だ』

 自動ロックの呼び鈴を鳴らす。

 階段を駆け上がる。

 息を整える(この時間がある分、エレベータ使ったほうが早い気もするけれど、先輩命令で階段しか使えない)。

 そして、呼び鈴を押す。


 今回出てきたのは、20代中盤ぐらいの女性だった。


 ちょっと困ってるみたいなへの字口が、ちょっと良い。


 と言うか、シルエットが、雰囲気が、可愛かったっぽいので、顔を見れない。


 でも、勇気を出し、指紋認証の時にちらりと見てみれば、やっぱり可愛い。

 への字口は、アヒル口の逆だから、年上派アンチアヒル口の俺としてはありだ。

 っていうか、この女性的にはありだ。

 口ばかりに注意が向いてしまったが、顔全体も小さい。小顔だ。

 目は細い。そして、口とは対照的に笑っているみたいな印象を受ける、への字型。


 バリタイプなんですけど!


 とか見とれていると、目が合った。 

 冷静を装って、身分確認をする。

 こういう、セクハラ系クレームはこっぴどく叱られる。


 でも一安心だ。

 その後のやり取りから見るに、クレームは来なさそうだった。

 帰り際、可愛らしい声で、『お疲れ様。ありがとうございます』と言ってくれた。

 



 今の人で今日の配達は終わりだ。

 俺は急ぎ、家に帰り、ラブワールドを起動する。

 

 ログイン直後だった。

 運営からメールがきた。

 内容はこのようなものだった。

 

 件名『新住人のスーナ様が、夫婦スタートを選びました』

 

 で、中身は軽い挨拶からの、彼女の簡易プロフィールが載っており、って本当簡単なプロフィールだ。これ初期アンケートのだな。

 

 で、希望者は返信してくれ。先着順よ。

 と書いてあった。

  

 俺はさっき美人さんを思い浮かべ、返信したのだが……。


 彼女は違う。


 絶対に、さっきの美人さんじゃない。


 天然ヒステリック女。


 でも、まぁ、楽しい人だし、しばらく仮想夫婦を続けてみようと思う。


 運営からのメールで年齢も確認したしな。

 24歳だった。

 今度こそ、56歳じゃないのだから。

 家族じゃないのだから。

 俺は続けようと思う。

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