表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
17/64

倒れてしまったよ。

 家の入り口近く、私たちはソファーまでカレーとお水を運ぶ。

 ここは多分、ベッドも兼ねてるのよね。お布団敷くスペースもないし。

 そこで食べるなんて、ちょっとはしたないわ。

 そう思っても、口には出さない。

 何故かって? 

 それはね、すぐにこう聞きたいからよ。


「ねね。お味はいかがかしら?」


「うん。ウマーイ!」 


 ゴーダ君は、恐らく自動アクションで、何度かジャンピングバンザイをした。

 テーブルと椅子にぶつかったはずなのに、すり抜けていた。

 

 ただ、分かるのは、私に分かるのは、あの嬉しそうに笑っている表情は嘘ではないことだけ。

 

 私も食べてみる。

 

 味ないじゃん。

 そう思っても、私も言うのだ。


「うん。美味しいね」


 遠い遠い幼稚園時代を思い出す。

 まるでママゴト。

 でも、楽しい。

 嬉しい。

 

 ゴーダ君はガツガツ食べる。

 それを見てるだけで、なんか、本当、美味しい気分だった。

 



 カレーを食べ終え、皿を洗った。

 楽しい料理はあんなにも簡略させられたのに、嫌な皿洗いはリアルだった。

 ゴシゴシゴシゴシしなくてはいけなかった。

 ただ、それはそれ程重要ではない。

 突然だった。

 予感するだけの情報を私は得ていたはずだった。

 予期するだけの情報を持っているはずだったのに、私は悲鳴をあげてしまった。


 ゴーダ君が倒れたのだ。


 彼の顔は、青かった。

 リアルじゃ考えられないほどに、肌色を混ぜてない純粋な青だった。


 何度呼びかけても、何の応答も返さない。返ってこない。

 私は動機が速くなってくるのを感じながら、彼を揺さぶる。

 私の手に感触はなくても、彼の身体は確かに揺れていた。

 揺さぶっているはずだった。

 でも彼は何の反応も示さなかった。

 まるで彼の命が終わったかのように思えた。

 気が付けば、私は涙を流していた。


 でもね、大したことではなかった。


 ただの寝不足だった。


 マジで、このゲームの製作者の顔を一度で良いから見てみたい。

 そして、ビンタしてやりたい。

 

 ちなみに、5秒後、起き上がり、大笑いしたゴーダ君には、ビンタした。

 

 このゲームは暴力行為が出来ないシステムらしく、私のビンタは彼をすり抜けた。


「ゴメンゴメン。くくく。ぷぷぷ」


 ゴーダ君は笑いをこらえながら、謝った。

 全然、きっと、悪いとは思っていない。


「気が付いたらさ、疲労度が9になってた」


 そう言って彼はソファーに寝る。

 そうなのだ。

 このゲームでは、疲労度が9を下回ると倒れてしまう、システムがあるらしい。

 私は爆発のために、エネルギーを溜めるために、静かに語りかける。


「もう、寝たの? 目開いてるよ」


「うん。ベッド属性のある家具の上で横になりさえすればOK」


「そう。じゃあ、もう大丈夫なのね」


「うん。心配してくれてありがとう」


 プププと含み笑いしているゴーダ君には、褒められても全然嬉しくなかった。


 この表情勝手に読み取りますよシステムは、こう言う時に役立つのか。


「ふじゃけるにゃ~!!!」


 私は、リアル23時と言う時間も忘れて、出来うる限りのでかい声で怒鳴った。

 

 ちゃんと、理性は残っているよ。

 だから、怒鳴るために可愛らしく言ってみました。


 ゴーダ君には一切の効果がなく、表情を隠すために背中を見せはしたけれど、やっぱり笑いながらこう言うのだ。


「ゴメンって。本当、反省しているよ」


 絶対、反省してないけどね。


 あまり気分は良くないし、時間が時間なのでログアウトすることにした。


 こうして、私の二日目のラブワールド生活は終わった。


 途中まで良かったのに、最後は最悪な終わり方だった。


 私はゴーダ君にこう告げてログアウトした。


「女の涙は安くないのよ。だからこそ、武器になるんじゃない」


 ゴーダ君はリアルの私が泣いてしまった事を驚き、とても真剣な表情を見せ、自動アクションっぽいお辞儀というか土下座をしながら、つまりはソファーから降りて、謝ってくれた。

 やっと、笑いを含まない謝罪をしてくれた。

 

 そして、彼はまた倒れた。

 

 今度は、私は慌てる事無く、ドジな奴めとニヤニヤしながら、倒れてる彼を見つめた。

 喋られない彼に、


「バイバイ。また明日ね」


 と言って、私はログアウトするのであった。


 やっぱり、最後も中々上出来な終わり方だった。

 私は機嫌良く、寝る準備を始めた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ