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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
16/64

料理じゃないのよ。こんなのは。

 まず私は買ってきた食材たちを冷蔵庫に入れる。


 特に変わったところはない。


「相変わらず、スムーズに動きますな」


 とゴーダ君が褒めてくれた事を除けば、極普通の行動と光景。

 だけれども、


「じゃあ、開けてみなよ」


 とニヤニヤしたゴーダ君に言われて、冷蔵庫を開けてみれば……、

 中身は何もなかった。


 てん、てん、てん、てん、てん、てん。


 つまりは放心状態。


 数秒のち、私は叫んでみる。


「私たちのカレーが盗まれたぁ!!」


 冷蔵庫を閉じる。

 開ける。

 ない。


「ないぞぉ~!!」


「くくく」


 とゴーダ君は嬉しそうに笑っていたので、私は彼に詰め寄る。


「どうしてなの? カレー作れないよ!」


「落ち着いて。けけけ。ぐふふ」


 下品にゴーダ君は笑いながら、


「冷蔵庫に入れた食材はデータ化されるんだ」


 お得意の訳分からん話をする。


「つまり、データってやつが盗んだのね」


「いや、違うよ。ゲラゲラ」


 ゲラゲラ笑うゴーダ君はとても嬉しそうだ。

 でも、サプライズってされる方は大抵そうなのよね。

 私はイライラ。


「冷蔵庫の取っ手に怪しいディスプレイがあるでしょ」


 そうなのだ。

 取っ手の横には、変な画面がある。

 冷蔵庫の各部屋の温度が表示されているディスプレイがある。

 背景灰色、文字は黒。


 おや。

 おやおや。


 何か変なのあるぞ。


「お、気付いたね」


 ディスプレイには、直感で何をするべきか分かりそうな『食材を見る』というボタンっぽいアイコンっぽい表示があった。

 私はタッチしてみる。

 ずら~と食材たちが文字として表示される。


「ちなみに音声入力も出来るよ。

 コマンドは、色々あるけれど、今回は『初心者カレーを作る』で入力してみなよ」


 えっと、コマンドは三回唱えなくちゃいけなくて、つまりはっと。


「コマンド、コマンド、コマンド。初心者用カレーを作りたいから返してよ」


 ディスプレは『承知しました』と表示する。

 画面には、米、鶏肉、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、カレールーが表示される。

 カレールーだけは白色の文字で、他は黒だった。

 恐らくカレールーはまだ私が持っているから、在庫がないのだろう。

 白色は在庫がない事を表示しているのだと思った。


「さぁ、開けてごらん」


 私が冷蔵庫を開けてみると、食材たちは帰ってきた。

 ご丁寧に一人前ずつカゴに入れられ、ちゃんと二人前が冷蔵庫の中央においてあった。

 お米は別口で、ボールに……、恐らく二人前置いてあった。


「部屋にいる人数を自動認識するんだ」

 

 とゴーダ君は得意気に言うのだけれど、

 って言うか、思うのよね。


「冷蔵庫にお米を入れるなんて、ゴーダ君変よ」


「変じゃないよ。

 食材は全部冷蔵庫が管理するの。この世界ではね。

 カレールーをしまわなかったスーナが変なんだよ。 

 このゲームじゃ」


「変って言うけれど、やっぱりお米は冷蔵庫に入れないわ」

 

 私たちは軽くイチャイチャしながらしばらく言い争った。

 

 でも、ゴーダ君のお腹の音が鳴る。


「早く作ってよ」


 とゴーダ君は甘えてくる。

 

 私は「しょうがないなぁ」とお姉さん気分で、キッチンカウンターに食材を置く。

 

 さて、ここからどうしますか?


「ねぇ。どうすれば良いの?」


「キッチンカウンターの下に、包丁が収納されてるよ」


 開けてみる。入っている。


 さて、もちろん続きが分からない。


「コマンドで『レシピ呼び出し、初心者カレー』ね」


「コマンド、コマンド、コマンド、レシピ呼び出し、初心者カレー」


 私は復唱するように、コマンドを唱えると、スマートフォンが鳴った。

 画面にはレシピが表示されていた。

 なになに。

 まずは下準備。食材を切ります。

 私はいつものように、玉ねぎの先とお尻を切ろうとする。

 

 でも、玉ねぎに包丁を当てれば、それだけで玉ねぎは皮むき状態になった。 

 

 なんか変な感じ。

 

 今度は、真っ二つにしようとするのだけれど、これも玉ねぎに一度だけ包丁を当てただけで、荒いみじん切り状態になった。


「半オートなの」


 とゴーダ君は言う。


「スーナには物足りないだろうけれど、普通の人はスムーズに動けないからね。特に細かい動作は難しいんだよ」


 だそうだ。


 およそリアル10分後。

 あまりに早く、なんとも味気ない、そんな料理だったけれど、カレーは無事に完成した。

 

 お味はいかがかしら。(ないのを知っているけれど)

 私は聞くのが楽しみで、つまりは早く食べて欲しかった。

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