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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
15/64

これは大事よ。大変なのよ。駄目なのよ。

「ただいまっと」


 ゴーダ君は玄関近くに来ると、少し早歩きをして、外からドアを押さえててくれる。


 その気使いにお礼を言ってから、私もただいまを言う。


「お腹すいたでしょ? 直ぐ作るからね」


「うん。でも、作り方知らないよね?」


「もちろん、知らないわ」


「まずはっと、食材を冷蔵庫に入れよう」


 そう言われたので、部屋の一番奥、キッチンまで移動し、冷蔵庫を開けてみる。


「あら。空だわ。補充してくれたんじゃないの?」


「まぁまぁまぁまぁ。まずは買ってきた食材をしまってみなよ」


 ゴーダ君のアバターはにやけていた。


 ゴーダ君は表情を良く変える。


 でも、今まで、それは自動アクションなのだと思っていた。

 自動だけれども、任意のタイミングで操れるものなのだと思っていた。

 

 でも、多分だけれど、きっと、ラブグラスは表情を自動で読み取るのではないだろうか?

 

 驚く私を予想して、思わずにやけているのではないだろうか?

 

 しかもモリモリさんの説明で、こんな話があったはずだ。

 相手に伝えたい言葉か、思っただけか、ラブグラスは分からないから、リアルの方でも喋るようにと。

 

 あらあらあらあら。

 

 そんな機械が、勝手に表情読み取っちゃうのってヤバイ。

 

 これは、どうでも良いことの様で、結構大事だぞ。


「ねぇ。私どんな顔してる?」


「ん? イライラしてる? 眉をひそめてるよ」


 やっぱり。


 私は確信を持ちつつも、聞いてみた。


「ラブグラスって自動で表情読み取っちゃうの?」


「そうだよ。

 クルクル表情が変わる所がスーナの良い所だよね。

 あとは、けっこ~平気で欠伸する所好きだよ」


「マジですか!!」


 ばれてないと思ったんだもん。


「音も聞こえるしね。欠伸には気付くよ。

 まぁ、そんな怒らないで、前向きに考えなよ。

 結婚詐欺師に狙われても対処しやすいシステムだ、とか」


「ダメよ。私、天然もヒステリックも認めないけれど、『ずぼら』だけは、他者評価が自己評価と一致するの。

 眠たくなくても、楽しくても、欠伸はしちゃうわ。

 それに、表情に出やすいみたいで、だからだから、ラブワールドだと平気だと思ったのに~!!

 もう、もう、もう!!」


「そんなに怒る所なのかな?」


「違うの。嘆いているの!」


 あ~、どうしよう。


「でもさ、カレー作ってくれるって言った時、笑ってたよ。

 微笑んでいた。

 そういうのも伝わるんだよ。

 だから、俺、嬉しかったよ」


「う~。そうね。ちょっとまだ怖いけれど諦めるわ。」


「そそ。気にしないでさ。

 みんなもそうなんだから。直ぐに慣れるよ」

 

 例え、私が欠伸女だとしても、ゴーダ君はスルーしてくれていたのだ。

 

 今は、それだけで良い。

 それだけが救いだ。

 

 私はやっと気を取り直し、カレーを作り始めようとするのだった。

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