探りを入れる女。その名はアキコ。
「ねね、どうだったの?」
私の帰宅直後を狙い撃ちするように掛かってきた電話。
相手はアキコ。高校時代からの友人で、私の初彼氏の妹。
「なんか、不親切なゲームだったよ。
良く分からないまま、仮想の夫が出来ちった」
「へ~」
「驚けよ。
まぁ、いいや。
今から驚かせてやる。
相手は18歳だぞ!」
「マジで!!」
友子は私の狙いどおりに驚いてくれた。
別に驚かせたからって何があるわけでもないのだけれど、基本人を驚かす行為は楽しいものなのだ。
「で、で? どんな人なの?」
「ゲームはね。アバターなの。アバター分かる?」
「分かるよ。あんたよりずっとゲームについて詳しいわよ。兄持ち舐めるなよ」
「そう。だから、見た目はわかんない」
「きっとダメね。じゃないと、私が悔しいわ」
「別に、私はこだわらないから良いけど。でもね、性格もね、変かも」
「それは大丈夫よ。あんたも変だもん」
「それ言うの、天然言うの、友達だけだからね」
「だから、その程度の変人なのよ。親しくなったら感じる違和感。あら、この人変だわ」
「もう、反論する気にもならないけれど、私は信じない」
「あんたの話はどうでも良いよ。それで、どんな奴なのさ」
「だから、変人。失礼な人で、いきなり天然だのヒステリックだの言われたわ」
「当たってるじゃん」
「当たってないけど。まぁ、でもちゃんとなだめてくれて、褒めてくれるの」
「へ~。うちのアニキとは喧嘩ばっかだったのにね」
「空君はね。怒りっぽかったよね」
「あんたが天然だかららしいよ」
「また、話ずれた。
それでね、私は離婚しないでしばらく仮想夫婦続けようと思ってるの」
「ずれてないよ。話戻そうよ。
アニキより戻したいって言ってたよ。
ラブワールド反対、言ってたよ」
「いやよ。無理よ」
「だよね~。
私はどっちでも良いような、
流石にアニキの年齢的にヤバイ気もする様な、
微妙な問題だから、
えっと、う~んと、
やっぱりどうでも良いや」
「うん」
「ちなみに、あんたのゲームの名前はなんて言うの?」
「スーナ」
「ナースだから、スーナでしょ。手抜き女」
「仕方ないじゃん。私、ゲーム良く分からないし」
「ゲームだけじゃない!!」
「とにかく、もう良いでしょ? 切るよ?
旦那様がね、お昼ぐらいからずっとログインしてるの。
正直、早く会いたいんだ」
「はいはい。ケッコ~はまってるのね。初日から」
「そんなんじゃないよ。
あんたに言われて無理やり空君と初デートした時みたいな心境」
「じゃあ、発展するかもじゃん」
「かもね~。じゃあ、切るからね」
「うん。あなたは昔からそう。友より恋人を取る女だったわ」
「失礼な。切るからね」
「はいはい。自分から切れない女のために、切りますよ」
「うん。じゃあね」
「バイバイ」
私は受話器を置き、早速ラブグラスを装着するのだった。
楽しみな自分には、正直、自分でも驚いている。




