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ラブワールド  作者: ササデササ
年下の旦那様
11/64

おやすみなさい

「時間は……」


 ゴーダ君は小声で独り言。そして、スマートフォンを取り出し何やら見ている。多分時間を確認しているのだろう。

 なんだか、初期装備であるのに、腕時計で確認しないのが学生っぽい。


「良し。ギリギリあるな。試しに廃人の仕事ぶりを見てみる?」


「というと?」


「俺、職業大学生だから、どこでも働けるの。給料は半分だけどね。アルバイトってやつ」


「うん。見てみたたいな」


 私たちは急ぎ、食べ終え、レジのお姉さんの所に向かった。

 道中、説明してくれたのだけど、


「梅バーガーセットで50回復するんだ。

 竹で満腹だけど300円。

 松は充実度も5回復するけど4000円なの」


「そう。松だけやたら高いのね」


「それだけ、充実度は回復する手段がないんだよ。まぁ、一日小時間プレイなら気にならない事なんだけどね」


 なんて会話をしている間に、お盆を片付け、レジのお姉さんの所までついた。


「あの、バイトしたいんですけど」


「かしこまりました。ゴーダ様のランクはレジバイトレベル1、厨房バイトレベル4ですね。どのレベルに挑戦しますか?」


「厨房レベル1で」


「それでは、奥にどうぞ」


 ゴーダ君は、「じゃあ、見ててよ」と言い残し、カウンター奥に、厨房に消えていった。


 私は病院でもった疑問の一つを解決する事ができた。

 ゴーダ君が厨房に入って直ぐ、視界右上に、『パーティメンバーがお仕事を開始します。見学いたしますか』のシステムメッセージ。

 おそらく音声認識だと思った私は、「はい」と答える。

 すると、恐らくゴーダ君の視界を共有できた。

 画面半分、画面中央にゴーダ君の視界が移るのだ。

 イメージとしては、パソコンでブルーディを見るとき、全画面にしなかったみたいな。


 厨房のお仕事は、ハンバーガー作りだった。

 音声が流れ、コンベアラインの速度に負けないように具材を重ねていく。

 例えば……。

『チーズ』と指示アナウンスが流れると、パンを手に取り、お肉を乗せて、チーズをはさみ、レタスをはさみ、最後にパンを置く。

 レタスとお肉は固定で、チーズや照り焼きソースや目玉焼きの三種類の具材があるみたいだった。


 ゴーダ君はもたついていた。


 レタスは落すし、お肉も落すし、材料は間違えるし、もたついていた。

 ゴーダ君は病院を出たとき、私の手を握ろうとして空ぶっていた事を思い出す。


 ゴーダ君が出来の悪い子でないのなら、やっぱり私って、えへへへへ、凄い『子』なのかも。

 あ、『子』よね。

 あ、24歳はまだまだ『子』よね?


 20分後、ゴーダ君のお仕事が終わり、45個成功のAランクだった事を知り、視界ジャックも終わった。

 厨房から出てきたゴーダ君は照れ笑いしながら、


「レベル4までハンバーガーショップで働いてるのに、レベル1でこの様だよ」


「でも、頑張ってたじゃない。Aランクだよ! 凄そうだよ!」


「いや、そうじゃなくて、スーナの凄さをわかって欲しかったんだ」


 そう言いながら、ゴーダ君は報酬カードを貰う。


 私のご機嫌をとるためだろうか、わざわざカードをスマーとフォンに食べさせる所を見せてくれた。


「ちょっと待ってね。残高じゃなくて、増えた金額を表示するように設定するから」


 とスマートフォンを操作してから、見せてくれた。


『あなたの入金は225円です』


 と表示されていた。


「あら。あらあら」


「同情は要らないよ。バイトは半額なの。成功単価」


「そうなのね」


「でも、大学の講義料は安いんだ。普通の人が倍かかると言ってもいい」


「講義なんてあるんだ。今度は講義も見てみたいな」


「うん。今度ね」


 そう言ってゴーダ君はスマートフォンをとりだし、


「そろそろ帰ろうか。スーナの時間もそろそろでしょ?」


「そうね」


 腕時計を見てみれば、リアル22時30分。ゲーム内18時だった。


 タクシーを呼ぶとハンバーガーショップ前まで来てくれた。


 私たちは家に帰り、最後に寝る方法に教えてもらった。


「ベッドに横になるだけ。リアルの俺たちは寝る必要ないんだよ。その間チャットとかしててもいいし、リアルの用事を済ませても良い」


「へ~。寝てないね。寝てるのに」


「そんなもんだよ。だって、……」


「ゲームだからね、でしょ」


「そう。ゲームだからね」


 私たちはトンネルを抜け、マイハウスに戻った。


「それじゃ、そろそろ時間でしょ? おやすみなさい」


「うん。今日は色々ありがとうね」


「いえいえ。さてっと……。俺も一人で寝るのダルイし、落ちようかな」


「あ、そうか。ログアウトしてる時も回復するんだっけ?」


「そうそう」


「それじゃ、おやすみなさい」


「うん。おやすみ」


 こうして、私のラブワールド初日は終わったのだ。


 歳下の旦那様はどこか頼りなく、失礼で、でも時々優しく、沢山褒めてくれる。

 あと18歳。


 私は、とりあえずは、彼についてさほど悪い印象を持っていなかった。 

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