第171話 グレイトバス 風呂ブラスト
あけましておめでとうございます。
今年も『異世界混浴物語』を、よろしくお願いいたします。
浴場に入ってみると、檜風呂の湯舟、奥の深いところにプラエちゃんに身体を預けた状態でセーラさんが浸かっていた。すごい効くんだよな、あれ。色々な意味で。
プラエちゃんはこちらに気付いて手をひらひらと振ってきた。セーラさんも手を振ってきたが、なんとなく弱々しい。やはり疲れている様子だ。
見た感じ、プラエちゃんも落ち着いたようだ。あれならばちゃんとお世話できるだろうし、セーラさんの事は任せてしまってもいいだろう。
俺達に続いて春乃さん達が入ってきた。
「冬夜君、今日も頭洗いっこしましょうね♪」
そういう春乃さんの髪は、謁見の間での活躍のせいか少し埃っぽくなっているようだ。
今日頭を洗うのは、春乃さんからにした方が良さそうだな。
最後にクレナとロニが入ってきたのだが、何故か俺達から距離を取ろうとしている。
「どうした?」
「その、なんというか……私、今日は頭自分で洗うから!」
そう言って二人でそそくさと奥の方に行ってしまった。
ああ、もしかしてずっと地下水路で待ち構えていたから臭いを気にしているのか?
そんなに汚れた所でもなかったので気にしなくてもいい気がするが、クレナ達的にはそうもいかないのだろう。
側に残っているのは、抱っこしているリウムちゃんと頭の上のデイジィ。そして雪菜、春乃さん、ラクティ。俺はその五人を引き連れて洗い場へと向かった。
順番に、そして丁寧に頭を洗っていく。いつもの事なので慣れたものだ。それが終わると、今度は俺が洗ってもらう。今日は雪菜とラクティだった。
それも終わると湯舟へ移動。まずはデイジィ用の湯舟として湯桶を用意。それから雪菜に手を引かれながら中に入る。
そして湯桶の側に腰を下ろすと、向かい合う位置に雪菜が来た。俺の隣には春乃さん、雪菜の隣にはラクティだ。
「私ここ……」
そしてリウムちゃんは、俺の身体を椅子代わりにしてくる。
彼女がこちらに背を向けて目の前に立つと、丁度目の前に小ぶりなお尻が。濡れた湯浴み着が張り付き、その輪郭を浮かび上がらせている。
そして俺の胸にお尻を着地させると、そのまま擦り付けるように腰を下ろした。
「ちょっ、リウムちゃん……!」
その動きで湯浴み着がめくれ上がったようだ。この肌に触れる感触、もしや湯舟の中で丸出しになっているのではないだろうか。
その感じ取った俺は、慌てて彼女の身体を少し持ち上げ、それを直した。
リウムちゃんは特に気にした様子も無く、俺の腕を取って自分の腰に回す。相変わらずというか、この子は本当に甘えん坊だ。
そのまましばらくなごんでいると、ラクティがおずおずと近付いてくる……が、手前でピタリと止まって何も言ってこない。
最近の彼女は、こうなる事がよくある。どうも俺に甘えるのはお姉さんらしくないのではと考えているらしい。
夢の中で混沌の女神に会うようになってからお姉さんぶるようになっていたが、その延長線上でそう考えるようになったようだ。俺としては甘えてくれた方が嬉しいのだが。
さて、こういう時はどうするのか。
「ラクティ、おいで」
「むぅ……」
こちらから呼んで来てもらうのだ。
リウムちゃんをちょっと持ち上げて右ふとももの上に移し、こっちが空いているよと左手で手招きする。
するとラクティは、少しむくれて頬をふくらますが、最終的には来てくれるのだ。俺の方から望んだならば仕方がないみたいな感じで。
多分、弟のお願いを聞くのがお姉ちゃんっぽいとか思っているのだろう。
ふとももの上は少しバランスが悪いので、二人の腰に腕を回して支える。すると二人もこちらに身体を預けてきた。ラクティの方は少し照れ臭そうに。
雪菜が近付いてきて、俺の隣にくる。春乃さんとで左右から挟む形だ。
この湯舟につかる時は隣に寄り添うというのは春乃さんやクレナ、いわゆるパーティの年長組がよくやる事だ。
最近は雪菜がこれを真似るようになっていた。どうも春乃さんやクレナを大人っぽいと思っているらしく、積極的に二人の振る舞いを真似しようとしているようだ。
つまり、リウムちゃんやラクティに対抗して自分も飛び込むのではなく、大人の余裕をもって微笑ましそうに見守るのである。
「むむ……」
といっても、湯舟の中でこっそり尻尾を伸ばしてきて俺の腰に巻き付けてきているあたり我慢しきれていない。身体もこちらにもたれ掛かってきている。
そんな雪菜と俺の様子を、春乃さんが実に微笑ましそうに見ていた。
なお、そんな大人の余裕を見せている彼女だが、この場ではおとなしくしているだけであって周りの目が無いところでリウムちゃん達以上に大胆に甘えてくるのは秘密である。
しばらくすると、セーラさんが一足先にあがっていった。
プラエちゃんはまだ入るつもりのようだ。それを見て雪菜とリウムちゃん、それにデイジィが彼女に近付いていった。
クレナの方を見ると、あちらもようやく洗い終わってお湯につかるようだ。
それならばと春乃さん、ラクティと連れ立って、クレナ達も誘い、五人で二階の屋内露天風呂に移動する。今の内に遠征軍の現在位置を確認しておきたい。
二階に上がり、早速ドームの壁に景色を映す。中央の湯舟につかる前に確認の方を済ませてしまおう。毎晩チェックしているので、大体の位置は分かっている。
おおよその当たりをつけて上空からの景色を映してみると、すぐにロニが進軍中の遠征軍を見つけてくれた。
「大体予想通りの位置ね。特に急いだりはしてないと思うわ」
周辺の地形をチェックしながら、クレナはそう判断を下す。
この調子なら、長ければ一週間ぐらいは時間を取れそうだ。
その後、トラノオ族がいるハデスの様子と、シャコバ達が向かったヘパイストスの様子も一通りチェックし、何事も起きていない事を確認した。
「よし、チェック完了。どこも大丈夫そうだな」
それじゃ、後は景色を楽しみながら湯舟につかるとしよう。
「今日はどこの景色にする?」
「そうねぇ、星空って時間でもないし……できるだけ近く、あの地下道の出口があった山に景色良いところないかしら?」
夜ならば星空を映しながらというのが定番なのだが、まだ日も暮れていない時間帯は使えない。そうだな、湯につかりながら景色の良いところを探そうか。
ゆっくりと森の中の景色を流しながら、ゆったりと湯につかる。
先程まで身を寄せ合っていた春乃さんは、今はクレナ達に譲るつもりなのか、正面に腰を下ろした。そんな彼女の隣にはラクティが、そして俺の隣にはロニがくる。
「じゃあ、私はここね」
「あっ、ずるいですよクレナさん」
そしてクレナは俺の前、先程までラクティが抱っこされていた位置に腰を下ろした。
「いいでしょ?」
こちらに視線を向けて、悪戯っぽく尋ねてくるクレナ。もちろん拒む理由は無い。
春乃さんも、ロニも、うらやましげにこちらを見ていたが、リウムちゃんとラクティと違って二人一緒にというのは難しそうだ。
「……臭い、大丈夫よね?」
「それは大丈夫だ。心配しなくていいぞ」
そう答えると、クレナはほっとした様子で力を抜き、その身体を預けてきた。
「今日はお疲れさま」
「大した事なかったわよ。そっちに比べたらね」
「そうかもしれないけど、一方の責任者を任せた訳だからな。労いぐらいさせてくれ」
「……じゃあ、撫でて」
「頭を?」
「当たり前でしょ。どこ撫でるつもりなのよ」
そう言いつつクレナは、俺の腕の中でもぞもぞと身体を動かし、向き合う体勢になってから改めて抱き着いてきた。
俺はそれを受け止め、彼女の望む通りに頭を撫でる。するとクレナは嬉しそうに身体をすり寄せて来た。
押し付けられる柔らかな感触。ラクティや雪菜が少し成長したように、クレナも少し変わってきていた。
理由は分かっている。魔王の孫だと自分のルーツがハッキリした彼女と、その魔王から後継者の証という意味があるらしい『星切』をもらった俺。
これは二人の関係が、魔王に認められたと言い換えてもいいだろう。
それからというもの、クレナは周りの目を意識しつつも、隙を見つけては激しいスキンシップをしてくるようになっていた。
彼女なりに思うところがあったのだろう。俺も色々と考えさせられた。同時に、お互いもう少し状況が落ち着いてからとも考えているが。
ひとしきり撫でられるのに満足したのか、クレナは俺の手をどかす。そして熱を帯びた目でこちらを見つめてくる。
同時に、じっとこちらを見つめる春乃さんの視線も突き刺さる。その目は次は自分と如実に訴えていた。
クレナも気付いたようで小さくため息をつくと、俺の頬にキスをして離れる。
すると春乃さんがいそいそと近付いてきた。しかし、手前の位置で止まってしまう。
最後は俺からという事だろう。俺の方から腕を伸ばすと、嬉々として飛び込んで来た。
それを受け止め、柔らかな衝撃を堪能しつつ、思い切り抱きしめる。
クレナに触発されたのもあるだろうが、彼女も最近大胆になってきていた。
「今日は、春乃さんも頑張ったな。ありがとう」
「はい、がんばりましたっ♪」
謁見の間での決着は、春乃さんがいてくれたからこそだ。彼女の事も労い、思い切り甘えてもらおう。
こちらはクレナよりも積極的だ。頬だけでなく、額に、唇にとついばむようなキスの雨を降らせてくる。俺はされるがままに、それを受け止めていた。
しばらくして満足気な春乃さんが離れると、隣のロニは、恥ずかしそうに俯いていた。
しかしこちらが気になるのか、チラチラとこちらを見ている。ふと視線が合うと、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
しかし、すぐにこちらを見てきて、再び目があった。その視線にも期待の色が見える。
分かっている。頑張ったのはロニも一緒だ。ロニに向けて両腕を広げると、彼女はおずおずと近付いてくる。
最後はこちらから腕を伸ばし少し強引に抱き寄せたが、ロニは抵抗する事なく腕の中に納まった。
ここまでくると、ロニも目を輝かせてこちらを見上げてくる。褒めて褒めてと、そのキラキラした目が語り掛けてくる。
そこまで期待されては応えねばなるまい。俺はその頭を抱き寄せ、わしゃわしゃと撫でまわすのだった。
お風呂回、続きます。
今回のタイトルの元ネタは2012年発売のゲーム、『グレイトバトル フルブラスト』です。
限定版の『ツインバトルBOX』も元ネタに入れようかとも考えましたが、ツインどころではないので止めました。




