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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
誘惑の洞窟温泉
128/206

第119話 大地の味

 『異世界混浴物語5 激動の海底温泉』の発売日が決まりました。

 7月25日発売となります。


 特典SSも書き終わりましたので、書籍化作業はこれで一段落ですね。

 本丸のチェックが終わったところで一階に戻ると、春乃さんによるギフトの使い方講座も無事に終わっていた。

 家電関係は説明だけでは理解が追いつかないようだが、そちらについては実際に使ってみて慣れてもらうしかない。

 怪我でもしないかと心配なので、しばらくは俺も料理に参加して手伝うとしよう。

「二階は部屋が増えてたよ。これなら皆で一部屋ずつ使えそうだ」

「……えっ、ベッドルームは……?」

 二階の様子を伝えると、春乃さんがまるで沸かし忘れた水風呂に気付かず飛び込んだかのような顔になった。

「ああ、ベッドルームは三階の天守閣の方に移動してたよ」

「そうですか。良かったぁ……」

 今度は温かい湯につかったかのような、見ているこちらもポカポカと心が暖かくなるような笑みを浮かべた。そんなに気に入ったのか、あのベッドルーム。

 ルリトラ達も戻ってきたのでそちらの話も聞いてみたところ、庭は大地の祭壇以外は少し広くなっただけだったそうだ。ギフトのような大きな変化は無いという事か。

「周りの建物があれば皆で泊まれそうですけど、クリッサさん達を呼びますか?」

「いや、まだ止めておこう。中に誰かいると扉を閉められないのは変わってないから」

 そうなると俺が動けなくなってしまうのだ。せめて日中全員が過ごせる場所を用意できるまで、皆には宿にいてもらった方がいいだろう。

 これで『無限バスルーム』内を一通りチェックできた訳だが、先程から雪菜達の視線が背中に突き刺さっている。

 チラリと見てみると、雪菜、リウム、ラクティ、そしてデイジィが目を輝かせていた。

 目的は分かっているので、すぐに送り出してやる事にする。

「……プール、行ってきていいぞ」

 そう言うと、雪菜達は大はしゃぎで水着を手に駆けて行った。

 あのプールは中央は深いだろうから誰かに監督を頼もうかと思ったが、それはキュクロプス母親組が引き受けてくれた。子供達も入りたがっているみたいなので、そちらも一緒に許可しておく。

 残った俺達は荷物整理だ。まずは本棚など建物内で重い物から始めていこう。

「壁に寄せますか?」

「いや、二階に運ぶ。ここは広く使えるようにしよう」

 二階には、プラエちゃんが選んだ部屋以外にもう一つ広めの部屋があるので、そちらに本関係のものは全て運び込んで書斎にしよう。

「ルリトラ、この本棚、本が入ったままいけるか?」

「もちろん」

「拙者も一つ運びましょう」

 俺より小さいのに、ルリトラに負けじと大きな本棚を持ち上げられる『魔犬』は、流石としかいいようがない。

「というか、手伝ってくれるのか?」

「御恩には奉公で返すでござるよ」

 ここに泊まらせるお礼といったところか。こうなるともう捕虜とはまた別の立場だな。

 そうそう、『魔犬』を和室で捕まえておくために移動させていた現金の入った宝箱は、大地の蔵の方に移しておこう。

 皆で手分けをして荷物を片付け終わる頃には、夕食の準備をする時間になっていた。雪菜達も遊び疲れて戻ってきている。

「拙者、ひとっ風呂馳走になっても良いでござるか?」

「そうだな……檜風呂ならいいぞ。他はまだ確認してないから」

「むしろ、それが目当てでござるよ」

 ちなみに『魔犬』は、水の都からここまで何度も入浴している。もちろん、捕虜だったので俺やグラウピスの戦士達が監視しながらだったが。

 しかし、ここまでの態度から監視はもう必要ないだろうと考え、『魔犬』一人で入浴させる事にした。掃除中も夕飯を楽しみにしていたので大丈夫だろう。

 そのまま『魔犬』を見送り、キッチンへと向かった。

「冬夜君!」

 中に入ろうとすると、丁度出ようとしていた春乃さんと鉢合わせになった。材料が足りないので門前町に買い物に行くところだったらしい。

「何が足りないんだ?」

「特にお野菜ですね」

 野菜か。新鮮なものは早々に無くなっていた。確かにこうして陸に着いたのならば、久しぶりに食べたいな。

「荷物持ちに行きたいが……」

「『無限バスルーム』を開いている内は動けないんですよね。大丈夫です、プラエちゃんと行ってきますから。たくさん買ってきますね」

 せめて見送ろうと一緒に門まで行くと、門手前の道で複数の人物と行き会った。

「これはこれは勇者様。本日はありがとうございました。お出掛けですか?」

 神殿長達だ。片付けている間に祭壇の方の儀式も終わったらしい。

 特に隠す事でもないので素直に答える。

「門前町へ、食料の買い足しに」

「ならば、こちらから寄進いたしましょう」

「……はい?」

 神殿の方から寄進とはどういう事だと思ったが、どうやら祭壇を使わせてもらったお礼のようだ。つまりは祭壇利用料といったところか。

 そういう事ならばと受け取る事にしたが、彼等が運んできた量が予想以上に多かった。こんなに出して神殿の方は大丈夫なのかと思うぐらいに。それだけ祭壇が凄かったという事なのかもしれないが。

 断る、という訳にはいかないだろうな。

「せっかくですし、皆さんを夕食に招待するのはどうですか?」

「ああ、それはいいな」

 せっかくだし、日本の味をお裾分けといこう。

「今夜の夕食に皆さんを招待したいのですが……」

「いや、しかし……」

「遠慮なさらずに。ここがこれだけ大きくなったのも大地の女神の祝福を授かったおかげなのですから」

 神殿長は遠慮していたが、何度も勧めると話を受けてくれた。嬉しそうな笑みを浮かべていたので、嫌がっていた訳ではなく、本当に遠慮していただけだろう。

 神殿の主立った神官、騎士が八人いるそうなので、その人達を招待する事にする。

 そうと決まったら早速料理だ。お客様の数が多いので皆で取り掛かろう。

 ただしサンドラには、ルリトラと一緒に神殿の人達への対応を任せる。三人娘で一番料理が苦手なのが彼女だというのはここだけの話である。

 ちなみに一番上手いのはリン。彼女は満遍なく器用にこなせるタイプなのだ。

 キュクロプス母親組も手伝ってくれるらしい。キッチンは流石に狭いが、大きなバーベキューセットがある。念のためルミスにもそちらに回ってもらえば問題無いだろう。

「デイジィ、『魔犬』が風呂から出てきたら連れてきてくれ」

「あいよ~」

 こうなってくると下手なものは出せないので、味見役としてアレスの食文化を知っているであろう『魔犬』を呼ぶ。

「そういう事であれば、お任せあれ!」

 キッチンにやって来た『魔犬』は、二つ返事で引き受けてくれた。

 戻ってきたデイジィが頭の上に寝そべってきたので、そのまま調理を進めていく。

 『魔犬』によると、アレスは昔からハデス、ひいては魔王軍の影響が大きい国なので、和風のものは舌に合うのではとの事だ。

「もしかして、魔王軍の影響って……」

「いやぁ、やっぱり美味しいもの食べたいでござるし」

 やっぱり、日本の料理を再現しようとしていたのか。

 そういえば魔王城で手に入れた手記の中に、そんな記述があったな。あまり上手くいかなかったようだが。

「ああ、味噌……懐かしの焼き味噌……♪」

 丸っこい身体でくるくると踊りだす『魔犬』、これでも魔王軍の五大魔将である。

 とにかく、味噌が楽しみなのはしっかりはっきりと伝わってきた。

 それはともかく、焼き味噌?

「焼き味噌って何だ? 味噌を焼くのか?」

「知らないでござるか!?」

 そんなにしっぽを膨らませて驚かなくても。

 必死に説明する『魔犬』によると、焼き味噌というのは調味料などを混ぜた味噌を、水気が無くなるまで炒めたものらしい。

「こう、ほかほかの飯の上に焼き味噌とほぐした鰯を乗せましてな。そして湯をかけ味噌を溶かせばもう……!」

 そのままつまんでも美味しいが、特に湯漬けにすると絶品なのだそうだ。『魔犬』のみならず、魔王も生前はよく食べていたとか。

「それって味噌汁ぶっかけ……」

「し、失礼ですよ」

 雪菜が春乃さんに口を塞がれ、小声で嗜められている。でも、聞こえてるぞ。『魔犬』は踊っていて気付いていないみたいだけど。

「鰯か、釣り堀で似たような魚が手に入ったな」

「ならば拙者が!」

「ちょっ、味見!?」

 そのまま駆け出していってしまったので、雪菜とリウムちゃんに後を追ってもらう。

 まぁ、小魚を取ってくるだけならさほど時間は掛からない。その間に料理を進めてしまえばいいだろう。

 今日はレンジなど新しいものが多いので、使い方を教えていく。セーラさんとリンは使う度に不安そうに確認してきた。やはり未知のものだからだろうか。

 こればかりは慣れの問題なので仕方がない。現にクレナ達は一通り説明するとすぐに使えるようになっている。

 皆が使い方を覚えるまで、しばらくは毎日料理を手伝うとしよう。


 一旦神殿に戻っていた神殿長達は、料理が完成する少し前に再びやってきた。正装に着替えてきたようだ。光の神殿の白に負けない派手さの黄色のローブである。

 そこまで堅苦しい席のつもりもないのだが、彼等にとって大地の祭壇がそれだけ凄いという事なのかもしれない。或いはアレスにおける『魔犬』の立場の影響か。

 外郭にある大きな建物を宴会場とし、ルリトラ達に彼等を案内してもらう。

 今夜のメニューはご飯に味噌汁、出汁巻き玉子に野菜の煮物。これだけだとがっかりされるかもしれないと用意した肉の味噌焼き、鳥の照り焼き、魚の南蛮漬けである。それと『魔犬』のリクエストに応えて焼き味噌と小魚の塩焼きも用意している。

 が、いざ配膳してみると、神殿長達はメインの魚料理ではなく別のものに注目した。

「こ、これは……土のスープ!?」

 すいません、それ味噌汁です。

 でも、色的にはそう見えるかもしれない。確かに知らない人から見れば、見た目がよろしくないだろう。

 彼等は顔を見合わせざわついている。慌てて先陣を切り一口飲んでみせたが、それでも彼等は不安そうな表情のままだった。

 神殿長は味噌汁の入った皿を持った手を震わせ「女神よ……」とか呟いている。

 すいません、それただの味噌汁です。別にあなたの信仰を試すものとかではないです。

 これは失敗したか。春乃さんとクレナも不安そうな顔でこちらを見ている。

 どうしたものかと考えていると、意外なところから救いの手が差し伸べられた。

「いや~、これは懐かしいでござるな!」

 周りの微妙な空気などなんのその。『魔犬』が味噌汁をご飯に掛け、勢い良くかきこみ始めたのだ。更におかわりをし、焼き味噌と塩焼きを乗せ、湯漬けにして食べ始めた。

「美味い! これぞ! これぞ五百年探し求めた味!!」

 勢いが衰えないまま三杯目に突入。懐かしの味に感動したのか涙も流していた。

 その姿を見ていた神殿長達は、『魔犬』の真似をして味噌汁をご飯に掛け、恐る恐る食べ始めた。

 そして目を開いて動きを止め、次に勢いを増してかきこみ始める。

 彼等は次々にお代わりをし、次も『魔犬』に合わせて焼き味噌と塩焼きの湯漬けをかきこんだ。実に美味しそうな顔で、喜んでもらえた事が見てとれる。

 これは『魔犬』に助けられたな。

 アレスにおいて魔王軍は、それだけ信頼されているという事なのだろう。五百年という長い時間の重みが感じられる。

 まぁ、それはそれとしておかずの方も食べてくれと思うが、これはもう彼等が落ち着くまでどうしようもなさそうだ。

「結構自信作なんだがなぁ……」

 自分の分の味噌焼きを食べ、懐かしの味覚に打ち震えながら、俺は彼等が戻ってくるのを待つ事にした。

 今回のタイトルの元ネタは『コード○゛アス 反逆のル○ーシュR2』のサブタイトル「土の味」です。


 大地の女神のギフトが関わっているので、間違ってはいないはずw

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