「そうかい。では、連中もようやくここまできたのですね。これは、懲らしめてやらなければなりませんね。」
一旦、カラスは彼の腕を離れると、今度は肩にとまり緑色の髪に身を寄せた。
ギィーーーーー
不意に、重い扉が開いた。同時にカラスは飛び去って行った。
「アデル?」
塔の入り口に少女が不安そうに立っていた。
「これは女王陛下。どうされました?」
アデルは白衣をなびかせ、アレナに向きなおった。
「お夕食の準備がもうすぐみたいなの。アデルは私のお世話係でしょ?」
アデルは表情を変えないまま、アレナの次の言葉を待った。アレナはしばらく下を向いていたが、頬を赤らめながら言った。
「たまには一緒に食事してほしいなと思ったのだけど。いつも1人で美味しくないの。」
しばらくアレナの顔を見ていたアデルはクスリと笑った。
「ええ、世話係の仕事かは分かり兼ねますが・・いいでしょう。女王陛下、まいりましょう。」
答えを聞くと、アレナは無邪気な笑顔でアデルの手を引いていった。アレナ達が食堂の扉を開ける頃には、大きな食堂いっぱいに美味しそうな匂いがたちこめていた。一面大理石の床には幾何学模様の大きな絨毯が敷かれていた。天井には3段のシャンデリアが等間隔で3つ並んでおり、床から天井まである窓からは夕陽が満遍なく差し込んでいた。中央にある長テーブルの奥がアレナの特等席だ。
「アデルはここに座って。」
アレナは自分の右の椅子を引いた。アデルはアレナの言う通りにその席に座った。嬉しそうにその様子を見ると、アレナは自分も席についた。少しして絵画の間のドアから、料理人達が2人に料理を持ってきた。料理が綺麗に並べられると、料理人達は一礼をして厨房に帰って行った。