「だいたいターゲットは決まったし、明日の夜。確認をしに....どう⁇」
クレイシーはいつにも増して楽しそうな笑顔をみせる。窓から漏れる夕日の明かりに照らされ、ソレは際立って見えた。
ソーエン、クレイシー、エヴァン。城下町の端にある古い小さな洋館。
そこが彼等“テイバ”の拠点となっていた。テイバはその昔アノクス王国の裏仕事を請け負う暗躍機間として活動していた。しかし、アレナが女王へ即位した頃からテイバに圧力がかかるようになり、王国を敵にまわすのを恐れた部下に同僚達は逃げるように辞めていった。今では他国からの依頼や、貴族なんかの暗殺依頼で小遣い稼ぎをしている。そのため、いつしか拠点の立派な洋館も、雑草は生い茂り柱や壁には様々なツルがまとわりついていた。
「そうと決まったら、ボスに報告にいってくる。」
ソーエンはそういうと、椅子を戻さずに歩いて行った。
「なあ、クレイシー。」
エヴァンはソーエンの後ろ姿を見ながら言った。
「ボスの詮索は御法度。これ暗黙のルールだよ♪」
先読みされていた。
「だいたい、僕だって会ったことないんだから。」
エヴァンのつまらなさそうな顔を見て、クレイシーがつけたした。ボスは元王族の人間だったと噂だが、実際のところどうなのかわからない。なんせ、クレイシーもエヴァンも、残っている数人の部下達もボスの姿を見た事はないし、声も聞いた事はないからだった。唯一、ソーエンだけがボスとの接触を許されており、奥のボスの部屋にもまれに出入りしていた。ボスの事を聞いても、ソーエンは面倒くさそうに受け流した。
バサバサバサ......
外ではカラスが大きな翼をひろげて飛び去って行った。カラスは大きな盛りを越え、川を越えるとアノクス城の塔で待っている主人の腕にとまった。
「おかえり。」
カァとカラスが鳴くと、男は理解したようにうなずいた。