孤児準爵と橋守親子
あらすじ 王弟殿下は禿だった。
愛も変わらず残酷とか差別発言満載ですので嫌な方は回れ右。
まぁ、色々と街道沿いの掃除をしながら我等一行は道を進む。
王都経由で道の掃除をしたらゴミを片付けなさいという苦情が来たが、時間が勝負の保護作戦にそんな時間は掛けられない。
「その割には盗賊達を飾り立てるのには時間を掛けるのだな。」
「片手間ですよ片手間。」
「生きたまま吊るして、姓名性癖男根の大きさまで詳細に記して裸で置いておくのがどこが片手間だ!!」
「ええっ!生きたまま肉をこそぎ落として焼肉とかしたかったのに・・・・・・・・・・」
「流石にそれは俺が許可できないぞ!」
「一番美味しいところを食べてもらいたかったのに・・・・・・・・・殿下には。」
「人肉に美味しいも不味いもあるか!」
「胸より腿肉のほうが美味しいですわよ。」
「実際食ったようなこと言うな!」
「食ったわよ!飢えて死んだら赤ちゃんが共に死ぬから泣きながら食べたよ!悪い!」
「私も食べたわ・・・・・・・・・・ そうしなければ死んでいたから・・・・・・・・・」
はらり~
性愛神の信者有志たちは我々が助ける前は本当に苦境に陥っていたのだ。
愛する者を喰らって生き延びた経験を持つものだって少なからずいる。
飢えた事がないものに食うも地獄食わねば死亡という悲しみに満ちた選択が世界にはあることを知らないのだろうな・・・・・・・・
「うむ、悪いがそれでも飢えた者に対して、大事な者を抱えて生き延びねばならないものに対しては言うべきではない。そしてこの根本が我等王国の失政であればまず我等が頭を下げねばなるまい・・・・・・・・・・・・」
「王弟殿下・・・・・・・・」
「でも、喰らうならばこんな臭そうな男じゃなくて若い女が良いのだがな・・・・・・・」
「キャー王弟殿下のエッチ。」
「きゃーきゃー」
女衆の機嫌を回復させる事に成功したというか、女衆がこの王弟殿下に言っても詮無きと思ったのだろう、手加減したのだな・・・・・・・・・・・・・・・
馬車の群れには沢山の人がいる。その中で食人行為に眉を顰める者ばかりだったのだが涙を流した馬鹿がいた。
孤児弟である。
性愛信徒の元街娼達と王弟殿下のやり取りを聞いて本気でその悲しみに共感して泣いているのである。
仕方がないなと我等が孤児弟の頭をなでていると奴隷公公爵令嬢が孤児弟の頭をかき抱いて体全てを持って慰めているのである・・・・・・・・・・・・・
あの公爵令嬢に其処までの情があるとは・・・・・・・・・・
孤児弟は泣いていたのが恥ずかしいのかうつむいたままであるのだが公爵令嬢は容赦なく孤児弟の顔を持ち上げて顔を拭いてやる。
「よし、孤児弟。君の涙は誰かのためにあるならばそれは恥じ入る事ではないですわ。もしこの涙を馬鹿にするものがいたならば私が全て切り伏せて差し上げますわ。」
公爵令嬢は腰の剣を叩きながら高らかに宣言する。
腐っても奴隷の娘か・・・・・・・・・・・
孤児弟は顔を真っ赤にして公爵令嬢に頭を下げる。
年頃の娘さんに抱きかかえられたのが恥ずかしいらしい・・・・・・・
孤児院の女性達相手には無双していたのに・・・・・・・・
「あれはだんながけしかけたからだろう!!」
「その割には終わってからは女性たちをはべらせてのと凄いことしていたくせに。」
「そ、それは・・・・・・・・・・・・・」
「まぁ、お前には女性の数人くらい囲う力があるから問題としないのだがな。」
「それは全身全霊をかけても・・・・・・・・・・・」
本当に馬鹿な子だよ孤児弟は・・・・・・・・
食人行為をした元街娼達は自分達のために泣いてくれた孤児弟をそっと抱きしめてありがとうとつぶやく。
孤児弟は子供にするように元街娼達の頭や背中をなでさする。
暫し経って元街娼達も落ち着いたのかそっとはなれて別の馬車に移るのであった。
まぁ、その夜は孤児弟は大発奮らしい・・・・・・・・・・・
元街娼達は孤児弟にすがりつくのだった・・・・・・・・・
「孤児弟は縋られたら離せませんからねぇ・・・・」
「女性で苦労しそうだね孤児姉。」
「どの方も分別のついた良い女性ばかりです。その前が如何であれ幸せになって欲しい方々ですわ。」
「そうだな・・・・・・・・・・・・」
そして数日、我等主従はごくごく少人数で移動している。
人員は我等主従に孤児娘達、公爵令嬢と御者代わりの奴隷戦士。
最近では孤児弟も公爵令嬢になれてきたのか怯える事がなくなってきた。それでも二人きりにはなろうとしないのだが。
「お嬢、どれだけこのガキに色々したんですかい?本気で泣きそうなほど怯えてますぜ。」
「ひどいことなんてしてないわよ!」
「それはどうだか・・・・・・・・・本気でこのガキが哀れに見えてくるよ。」
我等だけで進むのもわけがある。
理由としては自由戦士の未払いの話し合いに王弟殿下が自ら調停に乗り出したからだった。
私等が行くと帳簿のあらとか弄りだして村自体を破壊しかねないと・・・・・・・・・・・
どれだけ危険物扱いなんだ我等主従は・・・・・・
「賢者様は手加減しませんからねぇ・・・・」
「中小の貴族領地では旨く誤魔化した部分で経営を成り立たせているところがありますからねぇ・・・・・」
「そういえば神殿では王室顧問避けの護符を売りに出してますわ・・・・・・・・・」
「ほぅ、後で神殿に顔を出すか・・・・・・・・・売り上げ名簿を見せてもらうかね・・・・・・・・・」
「手加減してくださいましね。」
公爵令嬢にまで釘を刺されてしまった。ただ普通に監査しようとしているだけなのに・・・・・・・・・
そんなこんなしているうちに街道から外れた道に橋に差し掛かる。
大き目の橋なのだがぼろっちくて崩れそうである。其処には橋守と痩せこけたガキがいる。
橋守は足を悪くしているのか杖を片手にしていて我等主従を見ると仕方なさそうに通れという。
ここら辺の規則では貴族には通行料を取らないこととなっているのだろうか?
「おい、橋守。ここら辺の治安はどうか?」
「そうですねぇ・・・・・貴族様、いつもどおりで御座いましょう。盗賊、魔獣、強欲貴族が何かしらせびろうとてぐすね引いてますよ。」
「そりゃ違いないな・・・・・・・・・・・ この橋はあまり人通りがないようだがちゃんと成り立っているのか?」
「見ての通りビッコのあっしには畑仕事に耐えられないですし、やっと領主様の好意で橋守の役についているのですが通るものがいないですしここ数日子供には満足に食わせてやってないですね・・・・・・・・・」
見てみると痩せた餓鬼はあばらが浮きかけている・・・・・・・・・
私は数枚の銀貨を橋守の手に落とし込む。
「貴族様、そんな金を貰う謂れが御座いません。」
「これは通行料ではない、道の先への情報に対する代金だ。恥じることなく受け取るが良い。」
橋守は頭を下げて礼を言う
「ありがとう御座います貴族様。」
我等主従の乗せた馬車は先に進むのだが孤児弟は食料袋を持って橋守のところに行く。
そして橋守に袋を押し付けるとすぐに戻ってくる。
橋守達は食料を押し付けた孤児弟に頭を下げて我等主従を見送ってくれた。
「何をしたのですの孤児弟君?」
「ただ、買いすぎてあまっている食糧をおいら達だけだと無駄にするから食べてくれと押し付けただけだよ。」
「食料?全然ないじゃないですの。」
「まぁまぁ、公爵令嬢。橋守達に気を使わせないための方便だろ。」
「あら、可愛らしい外見の割には粋な事をするじゃないの。」
「おいら達は食い物位いくらでも調達できるからね。それにあの親子は本気でろくに何日も食べてないだろう。飢えるってのは本当に辛いんだ・・・・・・・・・それを思えば別に袋一杯の食料くらい、大した事ないだろう。」
「そして袋の底に落としてある数枚の銀貨もでしょう。」
「ねーちゃんにはばれていたか。」
「ばかね、気づいていないのは公爵令嬢くらいよ。」
「で、どれだけ入れてたの?」
「銀貨二枚。これ以上だとまぎれていたと誤魔化すにはきついから・・・・・・・」
「本当に馬鹿な孤児弟だこと・・・・・・・・」
公爵令嬢も孤児弟を抱き寄せて頭をなでる。
「馬鹿な子だこと・・・・・・・・・・敵の刃以外にもこの旅で見守らないと駄目なものがあるなんて・・・・・・・」
「おいらは大丈夫だから、守る手数があるならば幼女とかその兄貴分を守って欲しいんだけど・・・・・・」
「幼女達の体だけでなくて心も守るために貴方が無事であることが必要なの。自己犠牲は美しいけど馬鹿なこと、飢えた者に食べ物を与えるのは美談かもしれないけど飢えさせない状況を作らなくてはいけないのよ。これは貴方が良い事をしたと思っている橋守達に見せるためにも必要なのよ。もしこの食べ物がなくて貴方たちが損なったら橋守達は萎縮してしまうでしょう。守る者はいつでも大丈夫と意地を張らなくてはならないのよ。」
「はい、公爵令嬢。」
「まぁ、心配なさらなくても全ての害悪から守って差し上げますわ。優しい孤児弟、今度から私のことを【御姉様】と呼んでくださらない?私弟が欲しかったのよねぇ・・・・・女兄妹だし周りにいる男共は裸鎖みたいな者ばかりでしょう、孤児弟みたいな可愛い子を弟にしたかったのよ。」
孤児弟は一瞬あっけに取られてしまったのだが、仕方ないなと一息ついて。
「おいらでよければ弟になりましょう。おねーさま。」
「うーん、可愛いわね。」
思わず良い笑顔になった公爵令嬢は孤児弟を抱き頬に口付ける。そして頬ずりを繰り返すのだった。
孤児弟はあっけに取られて為すがままである。
「王室顧問の旦那、うちのお嬢が何かすいません・・・・・・・・」
「いやいいが、孤児弟には女難の相があるんじゃないのか?一筋縄ではいかない女性ばかりに縁がある。」
「先の元街娼達にうちのお嬢でしょう・・・・・・・・・・・・・うらやましいような哀れに思えてくるような・・・・・・・」
「私ならば回れ右して即逃げるね。」
「ちげぇねぇ・・・・・・・・・」
笑いあう御者と私に孤児弟は
「ちょ、ちょっと恥ずかしいですよ公爵令嬢。離してください・・・・・・・・・・」
「お姉さまと呼ぶの。それに姉弟のふれあいじゃない、恥ずかしがらないの・・・・・・・・・・・」
「御姉様、あたってますって!照れくさいですから・・・・・・・・・ちょっと痛いって・・・・」
諦めろ孤児弟、公爵令嬢が飽きるまで・・・・・・・・・・・・
「賢者様、暫く離してもらえないですわね。」
「だな、彼女がついていれば王城でも孤児弟に群がる害虫避けにはなるかな?」
「令嬢自身が一番の害虫であるというのが問題なのですが・・・・・・・・・」
「うーむ、悩むところだ・・・・・・・・・・公爵令嬢、今夜は孤児弟と同室にするか?」
「それは楽しみですわね・・・・・・・・・・」
「ちょ!だんな!おいらが無事ですまないって・・・・・・・・・・」
「大丈夫だ!いざというときは公爵家に婿入りすれば良いだけだから。」
「待て待て待て待て・・・・・・・・・・・・・おいらそんなの抱え込めないよ!!ネーちゃんも孤児娘達も助けてよ!!御者さんも・・・・・・・・・・」
勿論孤児弟を助ける者がないのだった。
暫く孤児弟は抱きぐるみ状態で公爵令嬢に可愛がられるのだった。
「どう考えても弟に対する扱いじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
捕食されたかどうかは神のみぞ知る。
さすがにこんだけ女性にかこまれたら孤児弟は腎虚になるわね(by医療神)
別に人様の寝室まで覗いて回るほど野暮じゃない(by大地神)
その頃の王都。
補佐見習は久方ぶりの休みを傷跡娘と母親の三人で過ごす。
傷跡娘も補佐見習の母親と仲良くなりうちの嫁状態で受け入れられている。
そんな三人は市場にある一軒の食堂兼酒場に来ている。
よく王室顧問に連れてこられて孤児娘達と飲み食いしているのだが、たまには母親に対してもいいところを見せようと誘ったのだった。
傷跡娘に対しては・・・・・・・・まぁ、いつもいるのが当たり前というか俺の嫁だからというか・・・・・・・・・・
「おれはまだ其処まで人生決められたくない!!」
何か叫んでいるようであるが照れ隠しだから放置しましょう。(by王都守護神)
食堂に入った三人は仲の良い親子が息子の給料が入った祝いをするのだろうと見られている。正確には母親と息子夫婦だったりするのだが・・・・・・・
「夫婦・・・・・・・・///」
えっと傷跡娘さん地の文で照れないように・・・・・・・(by詩人神)
店に入り手馴れた調子で料理を頼む補佐見習、傷跡娘の好みとかも把握して彼女が美味しく楽しめるようにするあたりは大事にしているのだなというのが良く判る。
母親に対しても何か食べたいのがないかと聞くあたりは嫁舅問題で囲まれないように両者に気遣っている若い旦那さんのようである。
料理が来て、三者三様に食膳の祈りを捧げて食べ始める。
下味を揚げた鳥肉とか野菜の煮込みとか・・・・・・・・・・蒸した塩白身魚なども美味美味と楽しんであるのである。
食べながらも最近の近況とか語り合っている。
補佐見習と傷跡娘は王宮の独身寮にいるし母親は嘔吐に部屋を借りて住んでいる。
寮に来ればと言う話をすれば、世話になるほど年取ってないわよと切り返す。
確かに母親は何時に子供生んだのというくらい若々しい・・・・・・・・・
それに私がいたら二人きりで楽しめないでしょう・・・・・・などと問いかけたら補佐見習がむせて顔を白黒させるし傷跡娘が真っ赤になって黙り込む。
平和な平和な食事風景。
これだけを切り取ってみれば幸せといえるのだろう・・・・・・・
そんな幸せな光景をぶち壊す無粋者と言うのはどこにでもいるわけで
食堂の扉を開けてなだれ込んだのが近衛の小隊。
「其処にいたのか補佐見習!王城からの召喚状である。大人しく来るが良い!!」
「まて!今日は休みだろう!久方ぶりの休みを邪魔するな!」
「煩い!法務副長様と宰相閣下からのじきじきのお達しだ!力づくでも連行せよと命令を受けている!」
「うわぁぁぁ・・・・・・・・・・休みの日くらい仕事から離れたいぞぉぉぉぉぉぉ!!」
あっけにとられる食堂にいる一同。
母親や傷跡娘も状況があほすぎてついていけないし、従業員や他の客達なんかは何が起こったのか理解できていない。
「こら近衛たち!おれは無実の者だぞそんな罪人みたいに・・・・・・・・」
子供である補佐見習は近衛たちに抱えられるように連行されるのだった。暴れても子供の膂力・・・・・・・・・大して意味がない・・・・・・・
唖然とする食堂に近衛の隊長格が
「皆様方おさがわせして申し訳ありませんでした。」
と深々と頭を下げる・・・・・・・・・
さらに状況が飲み込めていない一同を尻目に母親の元に来て袋に入った硬貨の山を手に押し付ける。
「ご子息様の活躍で王国は順調に回っております。これは法務副長様からご母堂様にとご子息の借り賃だそうで・・・・・・・」
「あらあら・・・・・・・・・まぁまぁ・・・・・・」
「では、ご歓談のところ失礼致しました。お二方に関しましては御緩りとお楽しみくださいませ・・・・・・・・・」
近衛の隊長格は再度礼をするときびきびとした身のこなしで外に向かう。
跡に残された女二人・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・料理が冷めるから食べましょうか義母様。」
「・・・・・・・・・そうね。」
普段と変わらない様子で食事をする二人。其処は仲のよい親子のようであった。
補佐見習がいてもいなくても変わらないようでもあった。
酷いなぁ・・・・・(by厨房神)
その後補佐見習を見た者はいない・・・・・・・・・・・わけでもなく、官僚部屋で仕事に追われるのだった・・・・・・・・・・
「酷い!!俺に何の恨みがあるのだ!」
「うらみはないが仕事はある。ちょうど捕まえやすかったし、残業代は前払いでご母堂に渡してある。諦めてきりきり働けぇぇぇぇぇ!!」
「終わったら呑もう、補佐見習。この上司達の無道を肴に・・・・・・・・」
「財務官の旦那・・・・・・・」
「でも、命令書出したのは財務官発案なんだよなぁ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」