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自由戦士と大使夫人

西方建国公城館


「最近君達の行いは目にあまるものがある。市場で酒盛りして極北戦士たちとつるんで一般市民たちが怖がっているとか、孤児院で酒盛りしてゲロを撒き散らしながら夜空を飛んでいくとか・・・・・・・・・」

西方建国公、通称開放公は米神を指でほぐしながら我々をねめつける・・・・・・


「で、挙句の果てに兵を勝手に挙げるとは君たちはどれだけ偉くなったのかね?」


開放公の説教は延々と続く・・・・・・・・・・

判っている、我等解放奴隷兵団が兵を挙げるという事は国難かそれに類する事であるという事を・・・・・・・・・・・

それでも、目の前にある誰かの苦難に対して一人立ち向かった孤児弟(ばか)にたいして応じないという事は我等解放奴隷戦士団の意味がないということだ。



「君たちは国を割る積もりかね?」

開放公は国を第一にしているのか?

ならば我は否と声をあげる。

「それが必要とあれば・・・・・・・・・・・我は理不尽になく子供の声を第一に考えます。我の声に否というならば神でも何でも殴り飛ばして考え違いを正します。」


そうか・・・・・・・・と開放公の声に我は何れ来るであろう攻撃に備える。

開放公は熟練の戦士だ。基本、戦術家として名を馳せているが常に戦いに身をおいている一族・・・・・・・・【幸いなき誰かのために】という家訓に乗っ取り常々鍛錬を欠かしていない常在戦場の大馬鹿者だ!


「では、死をもって弁明としろ。」

削りだしの大剣を大上段に構えて振り下ろしてくる・・・・・・・・・



かきん!


開放公の大剣がそれる・・・・・・・・・誰?

「お父様、裸鎖の隊長をいじめるのはそのくらいになさいませ。」

お嬢!!


「・・・・・・・・・・・ふむ、でお前は如何したい?」

「勿論加勢に向かいますわ。」

「いつもペンしか取らないのにどんな風の吹き回しだ!」

「大したことではありませんわ。私を振った王室顧問に意趣返しをするだけですわ。それに、民を飢えさせる馬鹿領主を潰す悪役は私達の役割でしょう。」


「お嬢・・・・・・・・・なんで汚れ役を・・・・・・・・」

「ふん!私が気に食わないだけですわ。子供を飢えさせて自分等は死んで楽になろうとする大人に・・・・・・・・・ 体を売って穢れたから幼いものに明日を任せたという馬鹿な少年に!私は幸いな結末が大好きですの!めでたしめでたしで終わらない物語なんて自分の手で捻じ曲げて見せますわ!!」


「はははっ!娘よ、お前は紛う事なき奴隷の娘だな!」

「お父様だって、兵を挙げる積りだったのでしょう。」

「それを言うな、詰まらん憤りだけで兵を挙げる馬鹿だったら切り捨てる積りだったがその必要もあるまい。兵を1000もって行け!!」

「親方様・・・・・・・・・・・」

「泣くな!男の涙なんて美しくない!さっさといって結果だけもってこい!」

「はっ!!」

「私も行くわ!」

「お嬢!戦場に女性の身で行くなんて・・・・・・」

「見くびる事なんてないわ!死ぬことも体を汚される事も覚悟の上ですからね。」

「では、娘よ 孤児弟を頼む。あれは死なせるには惜しいものだ。」

「お父様が其処まで言うなんて面白い子ね。」

お嬢は舌なめずりして狙う目をしている・・・・・・・・・・・


「群団長として裸鎖、副長として娘にして経験を積ませるか・・・・・・・・・・・・叫びを挙げた祖王のために。」

公のつぶやきはどこに向かっているのだろうか?

で、どうして大使夫人がここにいるのでしょうか?


「多分我々が孤児弟殿の叫びに応じたからでありましょうか。」

「それは判っているけど身の丈よりも大きな戦鎚を構えて臨戦態勢なのは如何したら良いのだ?」

「我等が向かって染みになれば許してくれるのでは?」

「自殺願望?」

「いえ、それが一番犠牲の少ないというか・・・・・・・・・・・・・」


とりあえず大使夫人の言い分を聞こう

「王室顧問様、うちの馬鹿共が迷惑をかけているようで。一度引き取って指導したいのでお渡し願いますか?」

「ふむ、なるほどね・・・・・・・・・・・・・・ 五体満足でお願いいたしますよ。それに力を貸すと彼らが宣言したのだからちゃんと助力願いますよ。」

「そうかい、この馬鹿の口約束を真に受けるとは王室顧問ともあろうものは落ちぶれたものだね・・・・・・・・・それについては前もって謝っておくよ。この場でこの馬鹿共は屑肉になるから無理だと・・・・・・・・」

「助力が無理なのは仕方ないとは言え、この場の掃除くらいはお願いしますよ。」

「あははっ!面白いねぇ・・・・・王室顧問。大丈夫だ、それは責任もって行おう。では引き渡してもらえるかね?」


「断る!!」

あれ?自由戦士・・・・・・・・・この場に出るなんて私の出番は?

「おやおや、場違いな貧乏臭い戦士が出ているけどだいじょうぶなのかね?」

「・・・・・・・・・・・・・貧乏くさいのは余計だが貴女を失望させないくらいのお遊びは付き合えると思うが・・・・・・・・・・」

「お遊びとは言ってくれるね。うちの馬鹿共を指導すればこっちは何もしないのにしゃしゃり出てくるとは命知らずだねぇ・・・・・」

「まぁ、同志として飲み友達として庇わんといけないと思ったのでね・・・・・・・・・・」

「そんなかちがあるのかね?」

「なかろうと思うが、邪魔されると腹が立つのでね御夫人。一緒に踊っていただけないだろうか?」

「下手な口説きだねぇ・・・・・ 踊るのはあたしの旦那の許可を得てからにしな!!」


大使夫人は戦鎚を振り下ろす。

自由戦士はそれを一歩前に進んで懐に入るように避けてから大使夫人の胸倉を掴んで投げる。

そして地面につくと思うときに軽く力を抜いて衝撃を与えないようにする。


「ふーむ、お前さんやるねぇ・・・・・」

「お褒めに預かり至極恐悦。」


投げ飛ばされ寝転がったままの大使夫人に自由戦士は大げさな礼をする。

唖然とする一同、熊殺し(素手限定)の女丈夫を無手で下したのだから・・・・・・・・・・・


「あの熊殺しを軽くあしらったぞ!!」

「あいつそんな凄い戦士だったのか!!」

「貧乏ネタにからかっていたけど後が怖いな・・・・・・」


戦士達が自由戦士の実力を侮っていた事を後悔している。

大丈夫だよ、自由戦士は馬鹿正直な男だから過ちを認めた相手にひどいことは出来ないから・・・・・・・

せいぜいお酒をおごれとか言う程度だし。


「で、彼等を見逃してもらえますか?」

「それは無理だね。この馬鹿共は孤児娘達に馬鹿な無体をしているんだから野放しに出来ないだろう・・・・・・・・・あたしがついていって監視しないとね・・・・・・・・・・・」


「ぶははははっ!!御夫人、貴女も人が悪い・・・・・・・・・」

「なぁに、女性に手を上げるお前さんほどではないさ。でも、どうして無手だったんだい?」

「女性に向ける剣は持ち合わせていませんのでね。」

「おや、見かけによらず浪漫主義者だったのかい。惚れちまいそうだね、旦那の次にだけど。」

「それは残念。貴女ほどの魅力的な女性だったら口説き落としたいと思ったのですが。二十年前ならば・・・・・・」

「おやおや、お前さんは女を見る目がないねぇ・・・・今でもあたしは魅力的だよ。」


「どの口が言うのだこの婆!」

どこっ!!

軽口を発した極北戦士は孤児院の壁画となった。

「大使夫人、あまり壁に落書きは止めてほしいのですが・・・・・・・・・・」

「わるいねぇ、王室顧問。後で職人寄越して壁画ごと埋めておくから。」

まぁ、これは極北戦士が悪いんだけどね・・・・・・・・・




「まぁ、あたしが出張ったのはこの馬鹿共が外交問題とか考えなく力を貸すとかいったからなんだが・・・・・・・・」

孤児院の庭先、互いに茶を喫しながら語らう。

大使夫人が危惧したのは、この極北戦士が暴れた場合外交問題になるからそれに対して釘を刺しにきたのだそうな。

なるほどね・・・・・・・・・・

「で、お前さんたちにはこの契約書にサインして欲しいんだよ。」

大使夫人が差し出したのは、二枚の書類。書いてあるのは傭兵雇用契約書。

なるほどね・・・・・・


極北の精兵をただでは貸さないと・・・・・・・・

これならば何かあってもここいいる極北戦士達は国と関係ないと言い張る事ができるわけだ。

良かろう、大使夫人の保険に乗っかるとしよう・・・・・・・・・・その前に・・・・・・・・・一隊金貨20枚?けっこうするねぇ・・・・・

「そりゃそうだろうさ、一応ここにいる馬鹿共もあたしほどではないが腕が立つんだから・・・・・・・・・・・」

しかたあるまい・・・・・・・


こうして、極北戦士を群れ事借り受ける事に成功したのだった。




あのぅ・・・・・俺このまま壁画なんでしょうか?(by極北戦士その一)

天幕 其処に騎馬公と語り部がいる。

話は騎馬戦士(モヒカン)が兵を挙げる話である・・・・・・・・・・・


「如何思う語り部?」

「あの黒髪の子供の呼びかけならば応じないわけいかんだろう。それにしても馬鹿な餓鬼だと思っていたらそれすら上回る大馬鹿だったと・・・・・・・・・・」

「でも嫌いではなかろう。」

「当たり前だ、世界相手に喧嘩売るなんて馬鹿でもやらんぞ。」


「あのこの初陣祝いは如何するかねぇ・・・・ 我が養子にしたいのだが」

「あの子を群れに迎え入れるのは歓迎するが、あまり大げさな贈り物だと他の若者が嫉妬するだろうさ。」

「そうだな、せいぜい兵を1000を貸す程度にするか。」

「オヤバカダネェ・・・・・」

「そういう語り部だって、孤児弟のために風の神の呪いをこめた皮鎧を用意しているだろう。」

「はははっ・・・・・・・・・・・」



彼等主従はゆるりと夜をすごすのだった。

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