辺境伯家と道楽行動
うむ、白い世界を出て幾年月、某王国にいる。
この土地は住みやすい・・・・・・・・・・・
酒は旨いし女は綺麗で気立てが良い。
風変わりな民も多々いるが、酒を酌み交わすに話の種が尽きないのが良い。
我等が故郷である白い世界に帰ったとき、良い土産話が出来る。
ここの民は誤解しているようだが我々は胡瓜の酢漬だけで酒を飲んでいるわけでもない。ちゃんと、蕪の酢漬けでも酒を飲むのだ!勿論、人参の酢漬けでも大根の酢漬けでも・・・・・・・・青菜の酢漬けでも酒が飲めるのだ!
なに?酢漬けばかりだと?
勿論酢漬け以外でも酒が飲める、肉でも魚でも甘味でも酒が飲める。
流石に酒を肴に飲むような馬鹿げた行いはしたことはない。
今度試してみよう・・・・・・・・・・
話はそれた・・・・・・・・
この住みやすい土地で我等は負け続けているのだ・・・・・・・・・
ここは我等の故郷の大地ではないとはいえ酒の飲み比べで勝てた例がないのだ・・・・・・・・・・・
第一、相手が悪すぎる。
酒を主食としている岩妖精や鬼族、体の大きな竜族や巨人族・・・・・・・・・
毒物に対する耐性がある羽小妖精族なんかもあの体でどこに入るのかと思うくらいに呑む。
勿論人族も恐ろしいくらい飲む輩が多い。
岩妖精ですら酔い潰す毒の酒を水代わりに飲んで素面でいる者とか、自分の杯を持ち歩いている伊達者。二日酔いのときに薬だといって強い酒を煽りながら風呂に入っていたのがいたがそれは不味いだろう・・・・・・・・・
先の酒合戦でも勝利を得ることが出来たのは、鬼族の者が【鬼殺し】を引き当てた彼等の不運によるものだということは重々承知している。
我等極北の戦士達はこの勝利に驕ることなく更なる高みを目指して鍛えなくてはならない。
さぁ、鍛えるぞ肝臓を!そして次こそは誰にも文句を言われない勝利と掴むのだ!
あれ、大使夫人。如何したんですか?
朝っぱらから酒を飲んでるな?これは我々が更なる酒合戦のために鍛錬をしているのだ。女子供は男の生き様に口を挟むな!!
あれ?大使夫人黙り込んで如何したのですか?
えっ!話し合おうって?その振り上げた拳はなんですか?
口で会話するのが面倒だから拳で会話しようって?
ま、待ってくださいよ!その拳魔力で強化しまくってますよね・・・・・・・・・・・
口で会話しましょう・・・・・・・・・どうして・・・・・・・ぐふっ!!
体重が乗った重たい突きである・・・・・・・・故郷の熊であってもこんなに重い一撃は・・・・・・・・・・・・
重いいうなぁぁぁぁ・・・・・・って、実際体重が乗った重たい一撃じゃないですか。
我々並の大きな体から繰り出せれる一撃は熊でさえ昏倒させる一撃を人相手にはなって良いものなんですか?
勿論、朝から酒を飲んで管を巻いている馬鹿には遠慮はしないって・・・・・・・
我々の事?
どこっ! げしっ! ぐしゃ!
・・・・・・・・・・・・・・・・ うわぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・ま、まって話せば判る・・・・・・・・・
問答無用って・・・・・・・・・・・
ごげしっ!!
我は壁の一部となった・・・・・・・・・・・・・(多少原型あり)
「そういえば、某侯爵家の次男坊の領地の財務状況は如何だ?」
父上が普通に問いかける。兄上達も言わんとしている事を悟ったようだ。
行政指導の面から査察を、軍事面から兵隊を、経済的な面からも攻めようと画策しているのだな。
あまり攻めすぎると他の貴族達や王家からも横槍が入るぞ。
「あまいな、末息子よ。我が家には色々な貴族の借金の証文がある。これを取り立てるとなれば言う事を聞かざるを得まい。いざとなったらこれを持って国外に逃亡して色々なところに売りつけるのだ。それだけで国は傾くぞ・・・・・・・・・・(邪笑」
「さすが父上、えげつないやり方で・・・・・・・・・・・そう言えば王家にも貸し付けたのがありましたよねぇ・・・・・・」
「金貨にして1万枚程度だが、利子が膨らんでいるからなぁ・・・・・そろそろ取り立てるか・・・・・・・・・・・」
「孤児娘達、今の王室の貯蓄金銭額はどれくらいだかわかるかね?」
「およそで言えば、金貨7万枚程度でしょうか?貴族家に貸し付けたりしている分を取り立てればその倍程度かと・・・・・・・・・」
「それでも、1万を取り立てたら王国の運営が凄い事になるでしょう。先の孤児達の救済で結構支出が多くなっているようですし・・・・・・・・・・・」
「これは最後の手段として・・・・・・・・・・査察礼状と護衛の兵隊を集める事から始めるかね・・・・・・・・末息子よ、お前はどれくらい動かせる?」
「金貨100といったところでしょうか?」
「次息子、我が領地で動かせるのは?」
「金貨1000と私兵団の半分が良いところでしょうか・・・・・・・・・・・傭兵を雇うとしても私兵団の運営があるから金500位でしょうか。」
「当代の息子よ、傭兵団に心当たりはあるか?」
「そうですなぁ・・・・・ 国にこだわらなければ幾つかありますが・・・・・・・・・・良識派の傭兵となると少し難しいですな。」
「商会公のところの傭兵くらいの質と倫理観が欲しいところだが・・・・・・・・・・・全部持っていくからなぁ・・・・・商会公は。」
「そりゃ信用置ける傭兵団なんて物は貴重ですからね・・・・・・・・」
「ところでだんな、なんで幼女達の親を助けるのに兵隊がいるんだい?」
「そりゃぁ、道中物騒だろう。その護衛もあるし、連れ出そうとすれば自領の不都合を広められる事となるから抵抗もするだろう。お前一人だったら消してしまえば経費的にも楽だからな・・・・・・・・それに対する防護策だよ。」
「借金なんかもまとめて踏み倒しにかかるんじゃないの?」
「前にもあったけどその時は一つづつ地道に潰していったら、泣きながら返してくれたなぁ・・・・・」
「あの時は暗殺者雇うので結構痛かったぞ。」「それでも、物産の流通経路押さえて敵対する領地の産物には通行料を無茶振りしたから結構儲けただろう・・・・・・・・・・・」「戦争を煽って、傭兵とか入れたは良いけど御し切れなくて領地荒れたりしてたよねぇ・・・・・」「支払いを怠るからだろう・・・・・・・・・・・・・」
「裏切り工作したのは兄上の癖にしらばっくれてしまうなんてえげつないなぁ・・・・・」
「まさか傭兵の支払いをしていないなんて思わなかったよ俺は・・・・・・・・・・・・出来高払いとはいえ前金くらいは払うだろう・・・・・・・・・」
「その一件で傭兵達が愛想つかしたなんて笑い話だよなぁ・・・・・」
「だな・・・・・・・・・・・」
「どれだけ、やらかしたんだこの一族・・・・・・」
「多分、他国の関所あたりを封鎖して兵糧攻めとかやっているんじゃない?」
「それよりも貴族の子弟を官僚にするといって拷問まがいな教育を施したんじゃないのか?返して欲しければ、支払うもの支払えとか言って・・・・・・・・・・・・」
「こらこら子供達、人聞き悪い事言わないの。頭さえ抑えてしまえば簡単に事は運ぶんだから其処まで大事にしなければ良いじゃないのさ・・・・・・・・・・我が屋敷に招待して、金を持ってくるまでいてもらっただけなんだけど・・・・・・・・」
「それって、誘拐・・・・・・・・・」
「いな、ちゃんと招待状を送ったよ。私兵団で王都屋敷を囲んでおいでおいでしたら、出てきてくれたからねぇ・・・・それれに商会公とかも手伝ってくれたしね・・・・・・・・・・・」
「何で?」
「少し考えてみればわかることだよ、商会公も商人だから貴族達に融通をすることがあるんだけど我が家の事を前例に自分のところも踏み倒されては困るからね。」
「「なるほど」」
「それで、数家ほど客を連れて金を返すまで持成してあげたよ。一つでも払い始めればボロボロと崩れていくし、力で踏み倒そうとすれば他の家の犠牲が出るから其処で問題が出ると・・・・・・・・・・・・千日手になり掛けたところで王家が仲裁に入って踏み倒しするなと釘を刺してもらったのさ。」
「うわぁ、えげつない・・・・・・・・・・」
「はいはい、うちの男共は子供の前で生々しい話をしないの!」
母上が手を叩きながら話の終わりを強制する。
「第一持成すといいながら、聖徒王国から拷問吏を呼び寄せて会食したりとか愛玩動物とか言って食人植物を蠢かした庭園を案内したりするのはどうかとおもうわ・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「妻よ、子供たちが引いているぞ。」
「あらいやだ・・・・・・・・・・・・ そんな話は置いといて、食事にしましょう。」
母上の合図で侍女達が食事を持ってくる。
貴族の食卓というのは初めてであろう子供達は目を白黒している。
「さぁさ、遠慮しないで食べてね。うちは大した物はないけど量だけは用意したから。」
普段は質素なんだがなぁ・・・・・気合入っているな母上。
何で前菜だけで3種類もあるんだ。
主菜も5種類とか・・・・・・・・・・・どこの王侯貴族の料理だ。
「うちだって王侯貴族でしょう。」
そうでした・・・・・・・・・・・・・
それでも旺盛な食欲を持っている子供達ですら打ちのめす料理の暴力であった。
美味であるだけに食べきれないのが悔しいらしい・・・・・・・・・・・
まぁ、富を示すためだけに質も量も多く用意するのが客席料理なんだが、この子達はうちの一門なんだから普段通りで良いのに・・・・・・・・・・・
食べきれないものは下働きの者達の賄いや持ち帰るものとなるから無駄にはならないのだが、見ているだけで贅沢で無駄と思われてしまいそうだな・・・・・・・・・・・・
それでも水菓子と果物に乳酪まで食べ続けた子供達も大したものである。
普段の倍は食べている計算になるからなぁ・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・満足。食べ過ぎた。」
「そうだな、腹がはちきれそうだ。」
「おいしかったぁ。」「食べきれないのが悔しい・・・・・」「今度作り方教えてもらおう。」
「奥方様、ありがとう御座いました。」
「そういえばだんなはそんなに食べていないけど?」
「食べすぎは体に良くないからね。」
「いつも呑みすぎてるくせに・・・・・・・・・」
「ひとつくらいは良い事しないと。」
「良く食べたわねぇ・・・・ 今夜は泊まっていくでしょう。部屋も用意したし帰るなんていわないわよね。」
母上本気で囲い込む気だ・・・・・・・・
「だって、可愛い子達じゃない。末息子にしては良く見つけたもんだと思うわ。其処の孤児姉なんてお前の嫁に良いんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・えっ! そ、そんな、わたしなんかじゃ釣り合わないと言うか御主人様がその気にもなってくれないし・・・・・・・・・・・・・///」
「だいじょうぶよ、家柄くらいだったら何処かの家の養女としてしまえば良いし貴女を買っているのよ私は。うちの末息子なんて何時までたっても嫁の来手がないから大歓迎よ。」
「末弟も年貢の納め時か?」
「早く孫の顔を見たいものだな・・・・・・・・・・・・・」
兄上に父上まで・・・・・・・・・・・私の味方は居ないのか?
「賢者の旦那、諦めな・・・・・・・・・・・・周りから固められたら逃げられない。」
「補佐見習実体験が篭った言い方だな。」
「俺の場合なんか、旦那達の他にも官僚だの荒野の民だの王族からも確定事項として見られているし、街に出ても市場じゃ夫婦者扱いだよ・・・・・・・・・・・俺に選択の自由はないのか?」
「選択の自由はないよ。それともあたしじゃ嫌なの?」
「嫌とかそういうんじゃなくて・・・・・・・・・・・もっと選びたかったというか・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺達まだ子供だから結婚には早いというか・・・・・・・・・・・・・・なんていうか・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・えっと、なんていうか、すまん。何でも言う事聞くから許してくれ・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・じゃぁ、今度二人だけで遊びにいく。それで許してあげる。」
「そのくらいだったら大歓迎だ。っていうかいつも二人で遊びに行っているだろう。今更だが・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・それでもいいの。」
「・・・・・・・・・・・・照れくさい///」
「・・・・・・・・・・・・補佐見習のことが欲しいから、これからも囲い込むよ。覚悟して。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふん、勝手にしな。」
「見せ付けてくれるなぁ・・・・」
「この甘甘なやり取りが毎日のように続くから、つらいのなんのって・・・・・・・」
「孤児娘にはいい人はいないのか? 」
「周りにいるのは子供と馬鹿と酔っ払いばかりで・・・・・・・・・・・・いい男と思えば彼女持ちとか、孤児弟だし・・・・・・・・」
「おいらじゃ何か文句あるのか?」
「文句はないけど兄弟みたいなもの恋愛感情湧かないし・・・・・・・・・」
「それは判る。」
「賢者様の二号さんにでもなるかな・・・・・・・・・・」
「あらあら、一号さんは誰になるのかしら?」
「それは孤児姉意外にいないでしょう奥方様。」
「なるほどね、孤児姉ちゃんはうちの嫁ね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・///」
結局のところ、孤児姉の意見も聞かないで進む話には拘束力がないはず・・・・・・・・・・・・
私も同意してないし・・・・・・・・
「宰相よ、そういえば王室顧問はいい年して独身であったな。」
「はい、何人か付き合っている女性はいたようですが、あの性格と敵の多さからうまくいっていないみたいですな。今のところは特定のものとというのは・・・・・・・・」
「陛下に閣下。王室顧問ならば孤児姉がいるではないか。」
「孤児姉のほうは慕っているみたいですけど、あれって父を求めている代償行為みたいなものじゃない・・・・・・」
「庭園公、其処から始まる男女関係というものもあるのじゃぞ。」「商会公、実体験がこもってますな。」
「そりゃ、あれとのなれそめで・・・・・・・・・・げふんげふん、それよりも王室顧問の嫁の話じゃなかったか?」
「我が娘を娶って欲しかったが腐っているから嫌だといって断ったな。」
「開放公のところの娘さんが嫌と言うよりも結婚した遊べなくなるのが嫌なんだろうな。」
「身を固めれば大人しくなると思ったんだが、無理そうかな?」
「それよりも並みの貴族の令嬢では王室顧問を御しきれないだろう。」
「陛下でも御し切れていないですからな。」
「痛いところを突くな、鉄拳。」
「今のところは孤児姉弟がいるから大人しいですが、彼等から暴れ始めたら大変なことになりそうですな。」
「彼等は良識的なものだ。主たる王室顧問が暴走しても抑えてくれるだろう。」
「・・・・・・・・・で、王室顧問は誰とくっつくんですかねぇ・・・・」
「おやおや庭園公、興味ありますかな?」
「そりゃぁ、私だって女ですから恋の話は大好きですわよ・・・・・・・・・」
「腐った恋の話はいうまでもなくといったところでしょうか?」
「鉄拳公は意地悪ね。」
「補佐見習と孤児弟を王妹殿下に巻き込んだものがしらばくれるな。」
たわいもない、六大公と王と宰相の会話。
彼等は王室顧問が誰とくっつくかという賭けをしたのだが、皆孤児姉を推すものだから賭けは不成立だった。