天幕と孤児弟
あらすじ 日々平穏なり、但し変人多くして神討ち果たされる。
注)あらすじに意味はありません。
可愛そうな補佐見習は孤児娘達の仕事を一身に受け持ちへばっている。
お前等大人が子供に仕事押し付けるな!!
「そんなこと言ったって王室顧問お前は仕事していないだろう。」
「だって、私の仕事ではないし、その分の給料はもらってない。ただ働きで命を削るのは馬鹿らしい。」
「貴族だろう!!仕事しろ!」
「私は道楽貴族。花の年金生活者だよ!!これは陛下が認めてくださったことだ。」
「くっ!」
「旦那方・・・・・・・・・・・もうゴールしても良いよね・・・・・・・・・(ばたり」
完全に補佐見習は沈黙した。
傷跡娘もばてている・・・・・・・・・・
「賢者様、疲れた・・・・・・・・・・・」
書類の山は片付いて後は数枚の決裁書にサインする程度なのだがこれは彼らに任せよう・・・・・・・・・・
精も根も尽き果てた補佐見習夫妻を抱えて子供達を回収していく。
「・・・・・・・・・夫妻じゃない!」
「まだ戯言を言う元気があるのか。そんだけ元気あるならば歩け、重たいんだ!」
「ううっ・・・・・・・・・」
傷跡娘とそのお付を従えて、孤児姉弟のところにでも行くとしよう。
「その表現もなんか酷い・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・わくわく。」
騎馬公の室内天幕につく。
あいも変わらず室内に天幕を張るとは意味不明な光景である。しかも先月見たときとは別の模様だし。
「我等とて気分で衣替えをするさ。布はにおいが篭りやすいしな。」
「長老たる語り部よ。我が従者を帰してもらうぞ。」
「王室顧問よ、つれないではないか。この子達とは色々尽きぬ話があるのだ。一晩くらい貸してくれても良いではないか。」
「で、お前らはどうしたい?」
「おいらはもう少し此処にいたいかな?ねーちゃんはどうする?」
「いつでも遊びに行けますから御主人様に任せますわ。」
「まぁ、急ぐわけでもないからもう少し世話になるか。となると、この二匹もついでに頼む。仕事で精も根も尽きてへばっているから休ませてやってくれ。」
「うむ、我等荒野の民は客人を歓迎するぞ。ゆるりとするが良い、小さな恋人たちよ。」
「お世話になります。御老人。でも、俺達はまだ恋人じゃないのですが・・・・・・・・」
「むぅ・・・・・・・・」
「おやおや、それは済まないね。この年寄りには初々しい恋人同士に見えたのだがな。くっくっくっ・・・・・」
語り部は女衆を呼び、我等のために乳酪茶を用意させ茶菓子を進める。
乳酪茶はやや塩気のある薄いスープといった風情で干し肉や雑穀を入れた雑炊風にして食べる事もある。
厳しい環境である荒野において茶であっても熱量を取らないと身体が持たないからだ。
逆に甘い飲み物もある。これは羊乳を発酵させたものや乳酪を取った後に出る搾りかす(乳清)に蜂蜜を加えて飲むこともある。これはとても甘い・・・・・・・・・
茶菓子は雑穀の粉を乳清で練って焼き付けたものだ。
仕上げにゴマを振りかけているのは香ばしさを出すためか?
傷跡娘は物珍しげに乳酪茶を舐めるように飲み茶菓子を齧る。知らない美味に顔を綻ばせる。
その様子を見ていた補佐見習は零れ落ちた笑みに一瞬見とれたが、すぐに頭を振ると茶を飲むのだがあまりの暑さに顔をしかめる。
ばればれだぞ補佐見習、おまえが傷跡娘の事を気にしていることを・・・・・・・
私は一座の主として荒野の作法に従い、四方に対して手礼をして持成し主である語り部に頭を垂れる。
「荒野の民の語り部に挨拶を天幕に招き入れられる事の幸いに感謝を祖霊の皆様方に幸いを」
返して語り部も寿ぐ
「我が天幕にようこそ客人よ。我が天幕のうちにあるときは我等が家族である。健やかに過ごされるがよい。」
「荒野の天幕に穏やかな風と涼やかな雨の恵みがあらんことを・・・・・・ 昼と夜が巡るとも羊が常に肥太らん事を。」
「この一座の者に我等が祖霊が祝福を与えられるよう乞う。祖霊よ、今日の出会いに感謝を。」
唖然とする子供達。
長々としたやり取り、それも異文化の挨拶を交わすところなぞ見るのは初めてなのだろう。
孤児院に荒野の騎馬戦士がいるのだが彼らはざっくばらんに会話しているし、格式ばった事所なんてほとんど見せないからなぁ・・・・・・
「御主人様、今の挨拶は?」
子供達を代表して孤児姉が質問する。
「お前らも見たことがないのか?荒野の民の天幕に招かれたら挨拶をするのが当然だろう、彼らの天幕に招かれたときは持成し主と祖霊と一族に礼を言うのが作法だよ。覚えておくと良い、これでも略式なのだがな。」
「まぁまぁ、王都育ちの子供達に我等の作法なぞ求めないよ。知らない者にそれが出来ないからと礼儀知らずだというほど我等も傲慢ではないからね。まぁ、ゆっくりしていくが良い・・・・・・・子供達よ。」
「「「「はい、お世話になります。」」」」
「王室顧問よ、お前にはこっちのほうが良かろう。」
語り部は騎馬戦士が持ってきた酒を玉の杯に注ぐと私に差し出す。
私は受け取ると自分の杯に酒を注ぐと杯を持ち上げる。私も荒野の作法どおりに一杯目の酒は杯を持ち上げた相手の杯を持った腕を絡ませて口につける。これはお互いの中に流れる世界が交差する事を意味する乾杯の作法である。つまり兄妹家族・・・・・・・なんでもいいが天幕にいる間は同胞として扱われることを意味する。
王都の者から見れば異質だか私はこの無骨な民の中にある細やかな作法が気に入っている。此処までの作法を済ませれば後は無礼講でいけることも一つの理由だが(笑)
私は騎馬公の方々の助力に謝辞を述べ、その後の事を話す。語り部はその一つ一つを刻み込んでいる。そうして物語として荒野の歴史を残すのだろう。記録としてではなく物語として残す、多分孤児弟は凄腕のスリとして語られるだろうし補佐見習は弱き者の盾として伝えられるのだろう。私はどうなるかな?
「賢者の旦那は扇動者じゃないのか?王家に喧嘩を売って色々な者を煽りまくったんだから。」
「はははっ・・・・・・扇動者か。憂国の士といわれないだけ良いか。」
「ご主人様は憂国の志をお持ちで御座いましょう。」
「まさか!あの時は私憤で嫌がらせしただけだよ。お前達に情が移っているのは否定しないがな。」
「くっくっくっ・・・・・・・・・・ 王室顧問殿は始まりの人だよ。彼の叫びでどれだけの人が集まった。王国の建国話を見るようではないか・・・・・・・・・・」
「あれはやめてください、私も恥ずかしいですから・・・・・・・・・・・まだ、私憤で扇動した糞野郎として語り継いで欲しい者です。」
「それをするとな結果は兎も角、扇動に乗せられた馬鹿になってしまうから断る!」
そっちの理由か・・・・・・・・・・
「結構、荒野の民も見栄とかあるんですねぇ・・・・・・・」
「黒髪の子供よ。そりゃ我等だって見栄もあるし欲もある。今回の事で王都の者からの好感度が上がったし、良い子供達が沢山手に入った。部族間での割り当てとかが大変だがそれだけの価値もあろう。」
「子供達はどうなるの?」
「我等の子供達と一緒に育てて騎馬戦士になるも良いし、羊飼いになるのも良い。荒野を巡る案内人や皮職人、鋳掛け屋だとか色々職はあるよ。進みたい道を進めば良いさ。」
「ふーん、世界が違ってもやることは一緒か・・・・・・・・・・暇があったら兄妹分に会いに行くのも悪くないな。」
「いつでも向かえば良いさ。我等荒野の民の天幕はお前に対して開いておるからな。」
「感謝を語り部。」
「おやおや、黒髪の子供も我等の流儀に馴染みかけているようだな(苦笑」
「持ってかないでくださいよ、私が不便になるから・・・・・・・・・」
「金貨30枚じゃダメか?」「せめて300枚・・・・・・・・・」
「牛が群れごと買えるではないか!!」「これでも安いくらいだ!!」
「語り部様に御主人様、孤児弟を売らないでください。」
「おやおや、それは失礼した・・・・・・・・・・」「500ならば即売るのだがなぁ・・・・・・」
「そんな事言って、王妹殿下辺りが聞きつけたらどうするのです!本気で買いにかかりますよ!」
「うわぁ・・・・・・・・・・・・(ガクガクブルブル」
孤児弟の壊れた・・・・・・まぁ、そのうち回復するだろう・・・・・・・・・
「心配ない、黒髪の子供。我等の天幕にいる間は腐った女は入ってこない!」
「騎馬戦士さん・・・・・・・・・・・」
「でも、女衆が腐っている可能性は?」
「流石に子供を襲う馬鹿はいないだろう・・・・・・・・・・ 腐った女は風の神様が嫌っているからな。」
だって、馬族守護神との交合本とかありえないだろう。(by風の神)
本当だ、我等は兄弟分としているがそんな関係ではない!作った奴を破門してやろうと思ったが、文芸神に止められた。(by馬族守護神)
いいじゃない!美しい男の友情・・・・・・・・・飛び散る汗、ぶつかり合う肉体、深まる感情・・・・・・・・・すばらしいわ!!(by文芸神)
其処か邪神!!いらんもの召喚しやがって!!此処であったが百年目!!くたばりやがれ!!
私は神秘緋金属張扇を構えて神気のする方角に向けて振りぬくと確かな手ごたえと共に名状しがたき者が吹き飛ぶ風を感じる・・・・・・・・・・
ひどいわーーーーーーーーーーっ!!(by文芸神)
いい仕事をした。
私は空になった玉杯に酒を注ぎ足すのであった。
見事だ(by馬族神)
彼と彼の養い子達に祝福を授けよう(by風の神)
私の中に力がみなぎるのが判る・・・・・・・・
王室顧問よ、汝の息子達には風の悪戯に遭遇する確率を上げてやろう。娘達には風の悪戯から守られるよう加護を与えよう。汝には風で帽子(鬘含む)が飛ばされる事のない加護を与えよう(by風の神)
うわぁ、微妙・・・・・・・・・・
しかも禿げる前提か!
「ご主人様は頭の形が良いからはげても問題ないかと・・・・・・・・・」
「まぁまぁ、王室顧問殿はげは絶倫の証じゃぞ。」
その後王宮付き祭司と文芸神殿から苦情が来たのだが無視無視・・・・・・・
寮のほうに帰れない旨を伝えてもらって、ついでだから孤児娘達がいたらこっちに来させるかな?
馬族守護神×風の神本 文芸神殿の女神官が作成したそうです。彼女は神ジャンルの第一人者として名を残すことになるのだが本編には関係ありません。