貴人聖域法と孤児
あらすじ 職人達を見捨てたらスリを捕まえた。
護衛官にスリを働いていた子供を捕まえた。己の置かれた現状を理解するにつれ護衛官は子供に対して怒りを露わにする。
怒る気持ちは理解できなくはないが武人ならばスリくらい捕まえろとは言わんが隙を見せないで襲われないようにしてほしい・・・・・・
捕まえた子供を見る、年齢は十に満たないくらいか? 薄汚れた黒髪の餓鬼でたぶん男だろう。
栄養状態はあまりよくないらしく手足が細い・・・・・・・・
裏で大人が手を引いているスリか? となると大人を捕まえないと意味がないだろうな・・・・・・・・
兎も角、護衛官の馬鹿をなだめないとか
「この餓鬼!!某のモノを狙ったからにはそれなりの覚悟ができているんだろうな!!」
「おぅ!逃げられなかったんは残念だけどカマでも何でも掘るなり、ころすなりしやがれ!!」
「ならば望み通り殺してやろうが、一思いに死ねると思うなよ!」
「なんだったらこの護衛の騎士様はご主人様に手を煩わせてスリを捕まえるまで気が付かなかったマヌケ野郎だって死ぬまで喚いてやる!この見せ掛け野郎!!」
嗚呼、煩い・・・・・・・・
口汚く罵り合う護衛官と子供に頭が痛くなってくる。
護衛官、貴殿は仮にも王室の守護者だろう・・・・・もう少し頭を使ってしゃべってくれ・・・・
だんだんと人が集まってきたし少し黙らせるか。
「少し黙ってくれないかな? この案件は王室法務官の私が預かる。王室護衛官殿、貴殿の失態を報告せねばなるまい。そして子供、この事件は王室役職に連なる者に対するものとして応対する。最悪反逆罪として類縁の者も処罰の対象になる覚悟なされよ!!」
「「えっ!!」」
「少なくとも王室護衛官たる貴殿はたかが子供に油断なんて失態は十分処罰の対象だぞ!」
「ちょ、まて!!某と貴様は友人だろう!同門の兄弟分を見捨てるというのか?」
「断腸の思いだが仕方あるまい。私は法と王室に剣を預けているのだから・・・・・・・・ 勿論、兄弟弟子の貴殿を売る羽目となる私もそれなりの誠意を見せねばなるまい、剣の師に対して利き腕の腱を切るくらいで許して貰えれば良いが・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「そして、子供!我等の身分を分って事に及んだのだろうな? おのぼりさんの田舎男爵のマヌケな従者ではなく、王室護衛官で王宮士爵だ。傍流であるが王室の血門である。そして私は王室法務官、血筋的には大したことはないが守護辺境伯の三男坊であり王宮男爵位を戴いている。我ら二人に対して狼藉を働くということは王室にたてつく反逆者と言う事で血脈、人脈共々累を及ぼす事を理解できるだろうな!!」
げっ!王室付処刑専門護衛官かよ!! とか この餓鬼終わったな! とか聞こえたのは気にしない!
って、言うか護衛官貴殿の噂尾びれつきすぎ!!
そんな周りの声を聴いて
「お、おいらはいいから他のみんなを勘弁してくれよ!!」
「無理だろうな、子供の君に対しては保護責任として保護者にももれなく刑罰が降るし、そもそも王室役職に対する犯罪は王の行為に対する反逆とみなされることもあるから。よくて追放か労役、拷問の末に死罪というのもよくある判決だな。」
あっ、子供が泣き出した・・・・・・・・・
怒りが冷め始めた護衛官、泣いている子供をみてうろたえている・・・・・・・・
二三発殴って済まそうとしたならばそれでよかったが剣を抜きかけていた時点で貴殿を擁護するつもりはなくなったよ。
薬が効きすぎたかな?
後は背後関係でもあればそいつを捕えるなりしておけばよいだろう・・・・・・・・
なんて考えていると
「申し訳ありません、貴族様!! 私の弟が何かしでかしたのでしょうか? 私の身に何がありましても構いませんので弟だけは弟だけは・・・・・・・・・」
泣きながらしがみついてくる娘さん。
まいったな、どこか静かな場所に身を移すか・・・・・・・・・
護衛官 貸一つな!!