繋いだものと離せぬものと
へたりかけている子供達を連れて辺境伯屋敷に戻る私。
孤児姉弟、孤児娘達、傷跡娘夫妻(予定)・・・・・・・・・
何時も通りの面子である。
屋敷に連れて帰ると侍女頭は下働きの女衆に指示を出して子供達が快適に過ごせるように整える。
「末弟様、子供達が来るならば来ると教えていただきませんと。」
と叱られてしまう。まさか子供達が竜に乗って突撃するとは思ってもいなかったしな。
確かに持成す側からすれば急の来客というのは扱いに困るものであろう、一族扱いされているとは言え爵位持ちも居るわけだしそれなりの対応が必要だからな。対外的には。
もっとも、そこらに街の子供に毛の生えたようなものだから其処まで丁寧に持成す必要はないのだが・・・・・・・・・・
清潔な寝床と暖かい食事があれば特に問題ない。
急に来て文句つけるわけないだろう、
とはいえ、私達が悪いのだから何も反論できるわけがない。
誤魔化すように笑みを浮かべるしかなかった。
「悪いな、今度からそうしよう。って、言うか今回は私は飛竜に拉致連行されて子供達は竜族を捕まえて突撃、連絡を取る暇がなかったと思うのだが?」
「それでも一度宿か何かに寄って使いを出すのが貴族の礼儀でしょう。」
口喧しく苦言を述べる侍女頭、言うだけ言ったら表情を緩めて
「子供達にもお帰りなさいませというべきかしら?」
「其れは違うと思うがな。此処は聖域守護辺境伯家の屋敷で我等は一応一家を立てる身であるからな。血族である私は兎も角、子供達は我が家だと思っていないだろう。どこが我が家なのかもわからぬ状態だし・・・・・・・・・・・」
「ならば家の一つでも購われるのが宜しいかと。」
「確かに、寮だと何時追い出されるかわからぬからな。一息ついたら購うとしよう。」
「そうですよ、農園は所有しているならば其処に屋敷を建てるのも宜しいのでは?」
「隠遁所として考えているが、今は開墾で手一杯だな。其れよりも子供達に何か落ち着かせるものを用意してくれぬかね?」
「いま、若いのに用意させております。」
程無くして、暖かい飲み物と胃に優しい軽食が用意される。
私は軽く口を湿らせる程度付き合うが、子供達は一度口を湿らせると旺盛な食欲を示す。
移動中は大量に食べると酔ってしまうから腹一杯食べるわけ行かないからな。
それでも胃が縮んでいたのか何時も食べる量よりは少ないようだ。
食べながら色々な話をして、そうしているうちに船をこき始める。
それでも話そうとしているのを遮って其々整えられた客室に送る。
渋々ながら子供達は眠るために部屋に行く、傷跡卿夫妻(予定)は同室に、孤児弟は明日は市場でも行って食べまくるぞといいながら・・・・・・・・・・・・・
孤児娘達と孤児姉は寝るのも惜しがっていたようだが、私と共に部屋に行き寝床に着くと寝息が聞こえ始める。
私から飛び立つ身でありながら依存するとは、この甘ったれが・・・・・・・・・・・・
暫し、安らかなる寝顔を眺め立去ろうとするのだが引っかかりを感じる。
ふむ、孤児姉が私の手を離さないのだな。この甘ったれが・・・・・・・・・・・
離そうとすると不安げな顔になるので暫し付き合うとするか。
其処に音もなく現れる侍女頭、
「末弟様、婚約者とは言え年頃の娘の寝床に居るのは嗜みに欠ける行為になります。」
「侍女頭か、どうもこの手が振りほどけなくてな。解こうとすると泣きそうな顔になるし・・・・・・・・」
「あらあら・・・・・・・・・・・微笑ましいことで。」
「参った物だ。私ともあろう者が子供の手の一つ振り払えぬとはな。」
苦笑する私に侍女頭は
「後程お茶でもお持ちいたします。」
と言って部屋を出るのであった。
ふわぁぁあ
こいつ等の寝顔を見ていると私も眠たくなってきたな。
私も椅子の背もたれに体を預けると目蓋を閉じるのであった。
少々短いですけど今宵は是まで。