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王都帰還と国王始末

王宮荷物搬入口


そこには薄高く野菜が積まれている荷車がある。先ほど官僚部屋(たこべや)に連行された農園孤児が所有する荷車である。荷馬は近衛の馬房に連れて行かれた。

後ほど持ち主の元に返還されるのだろう。


野菜の山を前にして、近衛兵達はどう扱ったらよいのだろうかと思案する。

「この野菜、こっちで片付けるとは言ったけど如何する?」

「ふむ、これだけ見事な野菜捨てるには惜しい。家に土産としてもって帰るか。」

「そりゃ、隊長は家庭持ちで嫁さんも婆さんもいるから野菜を持ち帰れば家計は助かるしおいしい者が食えるしで万々歳でしょうけど、一人身で隊舎暮らしの俺達はその恩恵に与れないですよねぇ?」

「なぁに、これから非番だろう。嫁に腕を振るってもらって・・・・・・・」

「たいちょー、俺夜勤ですけど。」

「おれ、書類仕事が・・・・・・」


隊長、暫し思案して。

「家庭持ちは土産として良い。残りは近衛の賄いとして利用しよう。この野菜の代金は近衛隊の給食費から出してもらうように申請しておけば問題ないはずだ。否、農園孤児の給金に上乗せという形で官僚室経由で払っておけば問題ないな。」

「さすが隊長!近衛の調理場に運びましょうぜ。」

「そうだな、お前等!この野菜の運び込みと仕分けが終わったら今回の任務は終了だ!さっさと済ませてうまい野菜で一杯やるぞ!」

「「「「諾!」」」」


夜勤組と残業組を除く連中の声が重なり合う。

声を出さなかった連中もさっさと済ませようと荷車を動かそうとすると。

「この野菜はどうしたんだい?近衛の買出しとは違うようだし?」

「料理長か、昼間農園孤児を市場で見かけたから王宮に連行したんだがそんとき彼の売っていた野菜を押収したから内々で食べようと思ってな。」


野菜を手にとって眺めていた料理長、鮮度も質も良い野菜を見て何かが疼いた様だ。

「この野菜を譲ってくれないか?」

「料理長のほうで買い取るのか?」

「うむ、これだけ鮮度の良いのは久方ぶりだ。ここの所乾物か漬物ばっかりだったから皆も喜ぶだろう。」

「・・・・・・・・・そっちで作ってくれれば、食べに行けば良いだけだしな。手間が省けるか。」



注)王宮の職員向けの食堂は近衛でも利用可能。


「今夜にでもこれを使ったのができるのか?」

近衛の一人の質問に

「うむ、これから仕込みにかかるから夕餉からだな。くれば振舞うぞ。」

「なら、いいか。隊長、俺は不満ないですぜ。」

「で、食堂の調理場に運べばよいんですかい?」

「こらっ!勝手に進めるなっ!まぁ、私が家に持ち帰る分だけ残してくれるならば問題ないぞ!」

「うわぁ、隊長ずるい!」

「ふっ!悔しかったら偉くなって特権振るえるようになってみろ!」


不適に笑う隊長にずるいと文句をつける部下達、そんな様子を見て調理長は

「決まりだな。悪いが調理場まで運んでくれないか?」

と、上手いこと近衛を使う算段をする。


さすがに近衛もそこまではする気はないので、調理場の下っ端を呼びにやるだけなのだが・・・・・・・


農園孤児の野菜は王宮の夜食として下働きとかその他諸々の胃袋を満たすのであった。




追記、調理場に運ばれた野菜を巡って食堂の調理長と王室担当の料理人が寄越せだの寄越さんだのといった喧嘩をしたのは近衛の勤務日誌に記されていた。

陛下は宰相府で共に執務をしているらしい。

取り敢えず向かってみるか。


てくてくぞろぞろ・・・・・・

官僚達もついてくる。目的は職場環境の改善(労働争議)。また返り討ちに遭うような気がしないでもないが・・・・



歩くこと数十歩、宰相府に立ち入る。

「王室顧問、良く来た。」

私が来るなり宰相が声をかけてくる。あいも変わらず白い山脈が築かれている。

白い巨塔だと療養神殿になるのだろうか?


それは別世界だ。(by療養神)


「宰相閣下、如何すればあそこまで子供達を壊せるんですか?寝る場所とか用意してないというじゃないですか!休日もなしで働かせたら子供なんてすぐ壊れますよ!」

「そうだ!そうだ!」「子供でなくっても壊れるだろう!」「我等にも休日を!」


背後で官僚どもが五月蝿い!

「ふむ、子供達については寮母伯と官僚に任せたのだが・・・・・・・」

「そもそも、寮母は兎も角、官僚に手配を任せるのは・・・・・・・。それ以前に寮母はどうして介入してこなかったんで?」

「・・・・・・・・・・初孫が生まれるとかで・・・・・・・・・・・息子の所に・・・・・・」


うん、それは重要だよね。でも貴族なんだから仕事はしっかりとこなしてくれないと・・・・・・

聖域守護辺境伯家も前線に張り付いているし、他の貴族家だと・・・・・うん、役に立たないどころかこれ幸いに・・・・・・・・・・・


「そこで閣下とかが配慮しないので?しかも私の部屋がなくなっているし。」

「・・・・・・・・・・・・寝床は寮の部屋があるし、食事は食堂でいつでも取れる。官僚が仕事量を配慮すると思っていたのだが・・・・・・・・・それ以前にわしも子供だということを忘れていた。すまん!」


・・・・・・・・・・・下手な貴族家の子息達よりは仕事できるよう仕込んだからな。それが仇となったか。

って、いうか貴族の教育を見直したほうが良いのかもしれないな。


「成る程判りました。私が居ない所で子供達を働かせるのが如何に危険かというのを・・・・・・・・・・子供達は回復するまで王宮には寄越しませんよ!後、うちの農園孤児を市場から強制連行するのはやめてください!」

「えっ!わしは知らんぞ?財務官、お前命令したか?」

「いえ、宰相閣下の命令だと思ってましたが。陛下は?」

「わしも知らんな。お前等命令したか?」

「いえ、農園孤児回収命令は半年程前に楡林卿と諍いがあって謹慎していると聞いて出した覚えはありますが今は撤回してますし・・・・・・・・・・・」


なんか、話が見えてきた。

撤回命令が出ているが近衛に回っていないんだな。それで・・・・・・・・・・・・

って、半年前の書類とか・・・・・・・・・・・


どれだけ書類貯めているんだ!

「王室顧問お前が悪いんだろう!孤児姉弟や孤児娘達傷跡卿夫妻を全部まとめて前線に持っていくから書類がたまるたまる。国境地帯で保護したのを寄越してくれと貴族諸家から嘆願来ているし、子供達が『食堂でピーマン使わないで』と議題出して混沌としているし・・・・・・・それに財務長が乗っかってくるし、ちなみに財務長は奥方の手料理でピーマン嫌い克服するために定時で帰るし仕事がたまるたまる。法務長は戻ってこないし、王太子殿下はどこに居るのやら・・・・・・・」


私が子供達を粗方持っていったのは否定しないが、前線事務をこなして作戦を円滑にする目的だったではないか。これは軍事、外交的にも是とする行動であったはず。

そこで後方がガタガタになるのは・・・・・・・・なんだかなぁ・・・・・・・そろそろ引退するから気にしないけど。


「王室顧問引退なんて考えていないだろうな?」

「勿論引退は考えておりますよ。期間付で契約したじゃないですか。」

「無論更新は」

「考えておりません!」


「・・・・・・・・・・・・・・即答だよ」「俺たちを見捨てるのか。」「俺たちも職を辞するかな?」

「それ、いいねぇ・・・・・・」

「ああ、官僚諸君。君達の辞職は却下するからな!」

「な、なんと・・・・・・・・」「ひどい!」「自分が引退したいばっかりに・・・・・・・・」

「勿論、王室顧問のも却下しよう。」

「当たり前だろう閣下!」「王室顧問の引退認めるなんて国をつぶすつもりか?」


なんだかガチャガチャ五月蝿い官僚ども、引退は譲らん!


「王室顧問王命である。続投せよ!」

「断る!」

「王命だぞ!」

「拒否権もらってますし。私に頼るなと常日頃から言っているじゃないですか!面倒くさい!」


なんか話が脱線しているな。戻すか。

「で、私を急遽王都に呼び寄せた理由とは?」

「ふむ、書類がたまっているから・・・・・・・・・・・・というのは置いといて、決着がついたのだから実際の話を報告してもらおうと思ってな。書類だと鼻毛だとか摂政姫殿下の収集物を焼却処分したとかしか記されていないから・・・・・・・・・・・・」

「えっと、しっかりとした書類も届けてますけど・・・・・・・・・」

「そっちは末王女に任せてみた。」

「末王女様のつぶれた原因は陛下ですかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


十かそこらの子供に無茶振りするな!

王太子殿下は如何した次王子様とか王弟(はげ)とかいろいろ居るだろう。

気を取り直して。


「勿論その報告書は陛下も目を通していますよね。」

「うむ、末王女がいくら政務に通じても子供だからな。居つかない王太子(むすこ)を廃嫡して末王女を女王に据えるのも悪くなかろう。王配に相応しい者は目星がついているしな。」

「孤児弟は駄目ですよ。荒野の民とか奴隷公爵令嬢が狙ってますから。」

「問題ない、騎馬公にはそなたの家族が王家と繋がるのだと言えば良いし奴隷公は適当な相手を見繕って置けばよかろう。」

「奴隷公本人は納得しても令嬢が如何出るか?止めるならば近衛中隊規模は用意しておいてくださいよ。」

「・・・・・・・・・・まぁ、孤児弟の第二夫人とかと言う手もなきにしもあらずというか・・・・・・」

「そうそう、孤児弟は手を出している女性が二桁ほど居るから・・・・・・・・・」

「そっちも師匠譲りというわけか。って、言うかあの年で何をしているんだ!」

「ナニをでしょう。見てくれは良いしアッチも強いみたいですからなぁ・・・・兄弟は。」

「何の兄弟だなんの!」

「そりゃ、穴兄弟!」

「はっきり言えばよいというもんじゃないだろう!」

「えっ!これでもぼかしたつもりなんですが・・・・・・・・・・・・同じ女性を・・・・」

「いうなぁっぁぁぁ!!」



なんだかアホ臭くなって来た。

取り敢えず、埋まっていた私の報告書(昨日置いといたのだが気づかれなかったようだ)を掘り出して陛下に差し出す。


「報告書です。数字について必要ならば細かい明細を用意いたしますが如何しますか?」

「いきなり話を戻すな。ふむふむ・・・・・・・・・・・」

陛下は報告書に目を通すと

「理解した。十分すぎるほどの成果というわけか。所で啓蟄神の神職達を吊るすのは良くないぞ。流石に啓蟄神からの抗議とか来るだろう。」

「それについては・・・・・・・・・・・・・・最近市場で屯している神々の飲食代を立て替える代わりに仲裁をお願いしてありますので大丈夫です。」



仲裁と書いて脅迫と読む。(by通りすがりの神)

そんな金額飲んだつもりないのだが(by厨房神)

私らのような信者をほとんど持たない弱小な神にとっては・・・・・・・・・・大金なんですよねぇ・・・・・(by某辺境地方神)

神官長から切々と怒られた。(by西域地方担当地方神)



王室顧問が建て替えてくれなかったら我が神殿が・・・・・・・・・・(by某王国地方担当地方神)


神々は遠慮というものがなかったからなぁ・・・・・

金貨20枚。これは一財産だ。どんだけ飲み食いしていたのやら・・・・・・・・・

ちなみに官僚や大使連中が奢った分はまた別である。



でも、これで神学的な面からの援護がされるのだから安いのだろう。



神々買収するな自制しろ!自制!(by節制神)


節制神様、そこは貴方の同輩に・・・・・・・

その後、王宮付の祭司殿に愚痴る節制神の姿があったそうな。

気持ちはわかる。




「王室顧問、神々からの面は理解した。で、開放した者たちがほとんど王都に来ないのはどうしてだ?」

「それについては、啓蟄地方の地主領主達で目端の利く者が待遇を改めて雇いなおしたのが半数、直接受け取りに来たのが残り殆どで・・・・・・・・・・・・王都には身寄りのない子供とか都市部でないと生かせぬ特殊技術者が少数来ているのみです。」

「何でこっちの嘆願を入れてくれなかったのか?」

「単純に迎えがあるほうが安全に安価に運べるからですけど何か?補佐見習が色々伝を使って各地の貴族に連絡したそうですが・・・・・・・・」

「漏れた連中の対策はして置けよ。」

「まだ、数百ほど残っているはずですからそっちに手配しましょう。」

「頼んだぞ、後お前の子供達を雇いたいという話も処理しておけ。」

「はっ!」


そこまでは仕方ないか・・・・・・・・・・・


「そういえば陛下、私を急遽呼び寄せたのは良いのですが国境地帯に居る子供たちは如何しているのでしょうか?あまり遅いと国境地帯に居座りそうなんですが。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・忘れていた。」

「ぉぃ!」




周りすべてから冷たい視線で見られる陛下。取り敢えず、呼び戻す命令書を作成するか。

命令書の配達は飛竜族に任せるけど帰還手段は任せるとしておいて・・・・・・・・・

流石に竜につかまれてとかは良くないからな。あれはトテモ辛かった。


「所で陛下、なぜ私が竜につかまれて連行されるように連れてこられたのですか?」


私の疑問に陛下は

「早くとは言ったが手段は言っていないぞ。文章官か竜族側の勘違いだろう。」


後であの飛竜はしばく!文章官もしばく!

私は心の防備録に深く刻み込んだ。


「所で王室顧問、書類が懐かしいだろ。一緒にやっていかんか?」

「せっかく書類仕事からはなれて健康になったのに・・・・・」


しぶしぶ手伝う羽目となった。



その後出された夕餉には農園孤児の育てた野菜が出ていたのは笑い話である。

所で王室付料理人の目の周りがアオタンになっているのはなぜなのだろう?

取れたての野菜の美味さは最高である。

酒が進む進む。

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