王都帰還と宰相始末
官僚部屋を出た私は宰相閣下の執務室に向かう。
子供達ははぞろぞろと付いてくる、宰相府に入りきらないのではないだろうか?
「王室顧問様、なんか鴨の親子みたいですね。」
通りすがりの狐耳の小姓君に言われたのは言いえて妙だと感心する。って、言うか私は親鴨か!
むしろ鴨の群れを見て野性を取り戻さないか心配である。
どっちでもよいか。
微笑ましい物を見たとにこやかに挨拶をして去っていく小姓君。ふさふさの尻尾がゆらゆらしているのは誘っているのか?
「誘っている?狐の尻尾が王室顧問を?王室顧問が獣愛好家だとは!」
どっから湧いて出た王妹殿下!
「誰が獣愛好家だ!獣だけじゃなく麗しい女性はすべて愛せるぞ!」
「王室顧問、流石にそれは最低な発言だから・・・・・・・・」
王妹殿下に言われるなんて・・
項垂れる私、女性を愛でる事が最低だとはなんて哀れな価値観なのだろう。男色見物愛好家の世界は深い・・・・・・・・・・・
ああ、神よ!どうして貴方方はあのような忌々しき異世界人をこの世界に届けたのでしょうか?
あーあー、私に振らないように。(by海洋神)
そもそも送り込んだのは文芸神、連帯責任にするのはやめてくれるかな(by王王国地方担当地方神)
なによ!私が悪いって言うの?(by文芸神)
勿論だとも、お前の子供が我に対して不埒な書物の題材にするのはお前の監督不行き届きだ!即刻その首根っこをねじ切って我と風神に詫びとしてささげるがよい!(by荒野神)
神々が論争し始めた。
これは無視して・・・・・・
「王室顧問様!何でこんな神気が?市場でもないのに・・・・・・・」
神気に気がついて飛び込んできた王宮付き祭司が開口一番質問する。
「そりゃぁ、忌々しき異世界人と王妹殿下がどうしてこの世に存在しているのかと恨み言を・・・・・・・・」
「それは解ります。文芸神殿の苦情をこっちに回されたり、市場の飲み代を請求されたり・・・・・・・・・・・・・貴方の子供達が神殿財政に大鉈振って予算が削られたり・・・・・・・・・西部国境地帯に左遷させられた神職が嫁さんもらってうはうはだとか、うちの若いのが官僚部屋の前を通ると引き込まれて仕事させられたり・・・・・・・・・・性愛神殿の黒髪娘に振られるは、茶髪娘に振られるは・・・・・・・・・・・・」
だんだん関係ないことを愚痴り始める祭司、だから王宮付きなんて地位はあるけどロクでも無いものを辞めて田舎にひっこんで民草と共に交わって神々を讃えていればよい物を。ちなみに性愛神殿の娘さんたちは私のお手付きだし上得意として下にも置かない扱いしてくれるな、年季明けたら置いてくれとまで言われたし好い娘さんたちだ。
しかし、神殿関係の厄介事を押し付けられているようで哀れに感じるな。少し良いことをしてやるか。
「落ち着かれよ祭司殿、王国神殿に寄付とまではいかぬが護符を譲ってもらえぬかな?【年齢詮索妨害阻止】の護符を孤児院全員と国境地帯にいる私の教え子達の分をお願いしたい。金貨10枚くらいまでならば・・・・・・・・」
「王室顧問様、その護符は王妃様が工房に押し入りまして・・・・・・・・・・護符作りの職人たちと祈りを込める神職達全て・・・・・・・・・・・・・」
「ま、まさか・・・・・・・・・・」
「ええ、【王妃様最高と認識させる】護符を・・・・・・・・・・・・延々と作らさせられて・・・・・・・」
「なんてひどい・・・・・」
王妹殿下のつぶやきに私は同意する。
何が悲しくてばb・・・・・・・・げふっ!
「賢者さまは護符持っているでしょ。」
ごもっとも、もちろん特殊効果の指輪(販売価格銀貨二枚)のせいではあるが
「僕たちだって皆持っているから。王宮勤めでは必要だって官僚さん達が・・・・・・・」
「・・・・・・・・それは違うと思う。どんな必要性が?」
祭司が思わず疑問の声を発していたが誰も答える者がいなかった。
後日財務官に聞いたら
「ああ、あれね。王妃様が張扇片手に怒鳴り込んだり、宰相閣下が殴りこみに来たり陛下が(中略)・・・・で、色々死んだふりとか・・・・・・ 子供達は自力で壁のシミに擬態ができるからいらないんだけど、私達の多芸さに魅かれたのか技を磨いているよ。近衛相手の戦闘訓練の時に効果音とか必殺技っぽい雰囲気を出していたのはすごいなと思ったよ。」
なんだかなぁ・・・・・・・・
さらにこの話を聞きつけた演芸神殿が特殊効果の指輪を使った派手な殺陣を旅芸人や役者達に極めさせたというのは笑い話である。
いやぁ、客のうけが良くって満員御礼で子供達が潤って万々歳だね。(by演芸神)
さて、宰相府。
官僚部屋から歩いて数分。中を見てみると白い巨塔が・・・・
書類の積み上げ方にもそれぞれの個性があるものだな。
そこでも子供達が………四苦八苦しながら数字と格闘している。どれだけ人が少ないのやら・・・・・・・・
書類の山の奥で陛下と宰相閣下があーでもないこーでもないと言いながら処理しているのである。
子供達の前で生々しい話はやめてほしいものだ。
「王室顧問ただいま帰着いたしました。」
私が声を上げると陛下達は顔をあげて、
「久しいな王室顧問。どうだ一緒に書類でもやらんか?」
「酒場に誘うように書類仕事を押し付けるのはどうかと思いますが。あと、呼びつけるにしても飛竜を群れでよこすのは勘弁してください。啓蟄の都が大混乱で都を守る兵士なんかちびってましたよ!本当に配慮という言葉を・・・・・・・・・・・・・」
文句を言うが聞く耳を持っていない。
「子供達、再会の記念だ。飯でも食べに行くよ!」
「うわぁい!」「城から出してもらえなくて・・・・」「賢者さまも孤児院に行くんでしょ!」
子供たちは大喜びで仕事を放り投げてついてこようとする。
「ま、まて・・・王室顧問、仕事が・・・・・・・・今子供達に抜けられたら・・・・・・・・・」
「呼びつけた件は少々配慮に欠けた。だから子供達を持っていかないでくれ!」
「王命である。子供達を仕事に就かせないさい!」
「断る!大体どれだけこき使っているんですか!半月も休みを与えないとか王妃の年齢ネタの犠牲になるとか・・・・・・配慮する約束だったじゃないですか!そして官僚部屋に王妹殿下が出没しているし危なくて私の眷属を預けるわけいかないです!では、書類の海に埋もれていてください!私は旅の疲れをいやしがてら子供達と情報交換しますので!」
私は子供達についてくるよう促すと喜んでついてくるのであった。
眼の下に隈とかどれだけこき使ったのやら……
その後、夜の街に繰り出して子供達と久方ぶりに歓談するのであった。
啓蟄での報告書?そんなものは旅の間の宿でまとめ上げて宰相閣下の机に叩きつけておきましたが何か?
さてと、酒を飲むからこれにて