王都帰還と官僚始末
某王国に接する国境地帯其処には小さな礼拝堂が現存する。
其処が人族連合に対する弱者の反撃の拠点だということはあまり知られていない史実である。
其処は小さな小さな性愛神を祀る礼拝堂であるのだが其処を代々祀る者達はは反骨の士であった。
ある者は奴隷として売られ幸運の末に自由民としてこの礼拝堂を守る役目を得て奴隷達の理不尽に対して身命を賭した。
またある者は性的被害者の為に神意を問い命を散らす。因みにこの性的加害者は国ごと破門対象となり王族貴族階級が性愛神殿有志戦士団の餌食となったのは笑い話である。
その流れを作った老夫婦と若者の話をするとしよう。
この礼拝堂は何処にでもあるような性愛神の祠であった。
娼婦達がせめて自分が生んだ子供達が幸いであるように祈り、誰かに告げることが出来ない性的被害者達がその痛みを吐き捨てる場所である。
望まれぬ子供達を産んだ女性達が共に生きるとお互いに益で在らぬと子供を託す場所であり、安息所であった。
此処を差配する老夫婦は何代目であったのだろうか?
この老夫婦はその地において世界に省みられぬことない者達の為に尽力するのである。
手伝う者も奴隷戦士に自由戦士、元農奴・・・・・・
その手伝う者のなかに神々に対して単身問い殴る者がいた。
その者の名は伝えれれていない。
その者は開放農奴の出であるのだが其処に惚れた女性が無残に無体された経験を持つ。その為に女性たちに対する保護を誓い行動するのであった。
一説に拠れば彼は神に対して抗議をして殴りつけ呪いを受けていたのだが呪いをものともせずに虐げられし者達の為に駆け回っていたという。
その者が最後の時にせめて惚れた女の元で死にたいと手足を失い這いずりながらこの地に向かったのは悲恋の物語として伝えられている。
その老夫婦の最後は伝えられていない。
見取る者がある程度の幸いがあったことは筆者は願いたい。
啓蟄性愛神祠縁機より
私は子供達を引き連れて官僚部屋へ向かう。
半年振りくらいの官僚部屋は白い山脈を積み上げていた。
本当に仕事を増やしてばかりいるのだな・・・・・・・・・・・・
其処でも子供達が仕事に追われているのだった。
「けんじゃさまー!!」
私に気がついた子供達が駆け寄ってくる。官僚共も久方振りに見る私の姿に軽く挨拶をしてくる。
久しく見ないうちに背丈が伸びているようだ、仕事振りも積み重ねていくうちに自信を持ってこなしていく。
官僚達程ではないが後釜達に届こうとするくらいの実力はあるようだ。後数年もすれば官僚達と並ぶのだろう、その頃にはどのような道を選ぶのだろうかな楽しみである。
私は駆け寄ってくる子供達を撫でながら息災であることを歓ぶのである。
「お前等ちゃんとやっているか?」
「うん、ちゃんと一月連続勤務とかしているよ。昨日はやっと休みをもらえるかと思ったら近衛のおじちゃん達が仕事が在ると捕まえに来るし・・・・・・」
「こっちも孤児院で皆と遊んでいたら・・・・・・・・・」
「貴族のおじちゃん達が仕事を山ほど置いていくし・・・・・・・・・」
「王弟殿下の髪の毛は薄いし」「王妃様は女の子達を攫っていくし・・・・・若さ吸っているの?」
「タタミイワシの在庫は少ないし」「仕事が知らない間に増えているし・・・・・・」
「休みって何?」「賢者様も孤児娘のおねーちゃん達も帰ってこないし」
「孤児弟のおにーちゃん宛に色街からの誘いの手紙が来ているし・・・・・・・・」
「養子に来ないかとか部下にならないかという貴族がうざいし・・・・・・・・・」
「暗がりに連れ込もうとする王兄殿下が危険だし・・・・・・・」「姫大使様は灰髪のおにーちゃんを暗がりに引き込んで(略」
なにをしているのやら・・・・・・・
官僚達に視線を向けると顔をそむけて誤魔化しやがる。
しつこく視線を送ると
「いやぁ、子供達が有能で仕事が捗るしここぞとばかりに片付けたら仕事が増えてくるんだ。」
「我々も市場で飲んでいると近衛に連行されるし・・・・・・・・・・禁酒令を発動させるとかいきまく宰相がいるし参ったよ。」
「そもそも子供達は数ヶ月程度の手伝いだったはずだぞ。如何して今もいるのだ?」
「王室顧問、陛下が子供達を囲い込もうと更に延長したのだ。商会公様の例もあるから脇から攫われないようにしているのだ。本音を言えば、子供達が着てから事務処理が大分捗って楽だと言っているのだが・・・・・・・・・」
「王宮管理官、そういえば宰相閣下も子供達を今から仕込めば次期は無理としても次次期宰相が出来るとか息巻いていたな。」
「其れはお前等がならんか!子供達に重責を押し付けるな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・出世したくない。」「酒が飲めなくなる。」
本当にこいつ等につける薬を・・・・・・・・・
びゅん(匙投げる音)
「官僚のおじちゃんたち其処まで酷かったのか・・・・・・・・」
「父上が言っていた。官僚さん達は有能だけど怠け者、仕事と出世から逃げ出そうとするから捕まえようとするのが大変だと・・・・・・・・・」
貴族の三男坊(父親は近衛隊所属)はしみじみと孤児達と愚痴をこぼしている。因みにお前も孤児達と同等の扱いされているのだろうが・・・・・・・
「孤児達と同条件なのは良いけど、少し休みが欲しい・・・・・・・・・家に帰ると父上から近衛の仕事を手伝えと命令されるのは・・・・・・・・・・・」
「お前も苦労しているのだな。」
「はい、賢者様。大人が信じられなくなりそうで・・・・・・・・」
「こんなに頼れる大人がいるというのにか?」
「どこがですか!!書類を届けるたびに宰相閣下の愚痴を聞かされるのですよ!もっと仕事しろといっても聞き入れてくれないと!」
「我々のような下級官吏に何を要求しているのやら、閣下も人使いが悪い。」
「十分高級官吏だぞ。仕事しろ仕事!私にまで仕事が回ってきたらどうしてくれるのだ!」
思わず私は釘を刺したのだが聞く耳を持たないだろう。
「けんじゃさまー、最低な言い回し・・・・・・・・・」
孤児の一人が何か言っているが気にしない。
私は自分が一番可愛いのだ。お前等が育ってくれれば私が楽できる。
なんか孤児達やら官僚共が冷たい視線を投げかけてくるのだが気にしない。
「久しぶりだけど変わらないなな王室顧問は。」
「けんじゃさまだしー」
「賢者様に師事したせいでなんか仕事に追われることが決定するとは・・・・・・・・・士官の口を求めていたから文句は言えないけど・・・・・・・・・・」
「三男坊も苦労するな。どう見てもお前中間管理職だぞ。」
「兄上達もこっちに来ればよいのに・・・・・・・・・・・近衛に逃げやがって。」
「後で推薦状を書いて近衛団長とかに送ってあげるよ。そうすれば君の兄上達も・・・・・・・・」
「近衛文官さん是非ともお願いします!兄上達より出世するのは心苦しいので、共に栄達の道を往きましょう。」
「見込みのある若者が軍で燻っているのは良くないからな。我等官僚としては導かないと。」
三男坊、なんか黒くなっているぞ。
多少黒いところがないと官僚と渡り合えないから丁度良いか。
「けんじゃさまー 三男坊さんの言葉が別の意味に見えるんだけど。」
「気にしたら負けだ。」
「どう考えてもお兄さん達に酷いことしているみたいだし。」
「孤児よ、私がそんなことをするわけないじゃないか!兄上達にも良い思いして欲しいから誘うだけだよ。少々血縁びいきということで心苦しいのだが。」
「三男坊よ、血縁びいき結構ではないか!使えるものは親でも神でも使え!これが官僚の基本だ!」
「はいっ!近衛文官さん。」
その後、三男坊の兄上達は近衛隊書類・経理担当に配属されて泣きを見るのだが其れは別の話。
彼の家では盛大な兄弟喧嘩が始まるのだろう。
剣戟の音が響き渡り白い紙ふぶきが舞い散る光景が眼に浮かぶようだ。
「けんじゃさまー もどってきてー」
その後子供達に夕食をおごる約束をして、陛下達の元に向かうのであった。
そういえば孤児姉達はどうしているのだろうか?
あの場に放置とか・・・・・・・・ まさかな。
そのまさかだったりして(by荒野神)
なんだかんだいってこの話をつづり始めてから一年が過ぎたのだな。
この話は何処に向かうのだろうか其れが疑問だ。
さて、これから仕事だ寝るとしよう。