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聖域の詩と傷だらけの盾

国境地帯からの報告を受ける国王陛下


『隣国の囚われし者が物言わぬ躯となりて帰還すること多数。少し隣国〆て来ます。』


王室顧問からの報告書、簡潔にして物騒。追伸がある。


『先日送ったデブ兎、あれ愛玩用でしたが・・・・・・・・』


「あれ、愛玩用だったのか?」

陛下が一抱えでも持ちきれない毛玉を思い浮かべて困惑する。

同席している宰相も

「あの肉付きとか脂ののりとかどう見ても食肉でしたな。」

「私としてはあの毛皮のふかふか具合からして毛皮用かと・・・・・・・・」


進軍報告よりもデブ兎の用途で困惑している王室の面々他、

「わし、美味しかったから追加で送ってくれと頼んでしまった。」

「まぁ、笑い話ということで王室顧問もそこは流してくれるでしょうし。」



次に商会公からの報告書。

『わしが折角出資したのに踏み倒されてムカついたので干す。(意訳』


「これどれだけ踏み倒されたんだ?」

「陛下、前金4国で金貨一万程度に諸領主に同程度ですから金貨二万程度でしょうか商会公にとっては一月分の粗利益に匹敵する額でしょう。」

「しかし商会公を怒らせてあの国々大丈夫なのですかね?」

「まず、無事ではあるまい。交易は迂回路を利用されるだろうし商品はたぶん敵対した地域に入れないように封鎖するだろう。下手すれば、行商や隊商を買い取って自分勝手な価格にすることとかもするだろうし。」


執務室に広がる沈黙。

「啓蟄地方の復興を思案させるか?」

「それよりも商会公をなだめたほうが・・・・・・・」


平原中に煌く白銀の輝き・・・・・・・・・


「白銀じゃなくて鋼色だし俺のは黒鋼だし。」

「俺は竜骨鋼」「魔力銀であるから白銀で間違いないが」

「驢馬の骨なんだが」「俺は千年樹の枝だしちがうよな。」

「神秘緋金属だから普通に赤だな。」

「肉体が武具である我ら竜族は白銀とはいえぬな。氷竜族だの白竜ならばその表現が詩的で良いのだろうが。」

「青鋼多重層鍛造である我が刃は白銀という陳腐な表現で表されるのは不愉快である。」


口々に戦士達が文句を言う。

うるさい物だ、そっちは放置して・・・・・・・・・・


「我等の武具を愚弄するのか?見てみろこの多重層鍛造の艶かしさを!一寸ごとに違う模様を描き剛柔違う切れ味が何層にも肉を切り裂き骨を絶つのだ。あの感触といったら・・・・・・・・・・・・」


うん、放置だ。

「ご主人様よろしいので?」

刃物キチガイ(ブレードハッピー)は放置するに限る。大方作者が青紙のアジ裂きだのを新調したから刃物にハァハァするために入れた一節だろう。ただでさえ、酒代がかさんでいるのに包丁を衝動買いしやがって・・・・・・・・・」

「ご主人様ご主人様・・・・ それは関係ない話ですから。」

「うむ、そうであったな。」


忠実なる孤児姉の言を受け入れ白銀の群れに目をやる。

白銀の軽鎧に白銀の盾を纏った一番古い戦士団を見やる。その煌きは白銀!

古くは人族の盾であり、今は弱者の盾である。我等が聖域守護偏狭伯私兵団。

盾と共に林立する鑓の穂先は光を反射して勇壮である。

盾を持つ先陣部隊にその隙間から攻撃する長鎗部隊。さらに二層目の盾部隊に鑓部隊、この鉄壁を置くにあるのが弓兵に魔道兵。彼等は盾の間から無慈悲に死を振りまくのだ。その後ろには更に軍楽隊が控えている。そこで流されるのは【我が両の手は聖域也】!

虐げられた者はこの曲を聴いて救いの手に導かれるだろうし、敵対するものは恐怖するのだ。

ぶははひゃははっ!

さぁ、恐れ戦け!この白銀の軍団を貫き通すものは何者もない!


「だんなぁ、疑問に思うのだがなぜ軍楽隊が必要なんだ?武器も持っていないからいい的にしかならないと思うんだが?」

「孤児弟よ、軍楽隊を舐めてはいかんぞ。彼らの音楽は一種の儀式魔法でな、味方の能力の底上げとか疲労回復を行うのだ。更には・・・・・・・・」


私が手を上げて合図すると軍楽隊は【我が両の手は聖域也】を演奏し始める。

音楽は啓蟄地方に向かって流れ始めて空中に私の姿を大写しにする。

さて、始めるとしますか。

私の仕事を増やしてくれた愚か者達に鉄槌を下すべく。


大写しにされた私の姿は私の行動と連動して挙動する。

私は大業な動作で隣国に向かって語りかける。


「私は人と魔を隔てる狭間の国、某王国にて男爵位を戴いている王室顧問である。隣人諸君、君達は我国の民草に対して浚い隷属の身として子々孫々まで貶める。抗う者を嬲り、無力な者を食い物にして利益を得てきた。我等は礼を尽くして返還を求めた。その返礼として躯にして返すとは何たる非道!我等は報いを与えるとしよう。君達を見せしめとして後の者達への戒めとしよう。さぁ、剣持つならば持つがよい、白銀の盾が幾度打ち付けられようとも砕けることはないだろう。歩みを止めようとしても、百やそこらでは押し留める事も敵わぬだろう。後悔するが良い!した所で過去は変えられぬ。神に祈るが良い、我等が来るまでの間祈るくらいの時間はあるだろう。但し、君達の祈りを聞き届けてくれる神々がいるとは思えないが!」


ここで私は悲しげに掌で顔を覆い言葉を続ける。

「啓蟄地方の貴族諸君。私は君達が所属する人族連合の法に反していることを告発せねばならない。心あるものは聞き君達の王に注進するが良い。王が聞き入れられないというならば、人族連合議会に届け出ることだ。この地方の地主や領主の何名かは自らが庇護しなければならないものを奴隷として売り飛ばそうとしている。これは民草を守らねばならないという貴族の義務を蔑ろにする物だ。貴族義務事項第二項にある。民を売り飛ばすことについての判例も約300年前の雨水候の判例があるではないか!先賢が民草を慈しみ育てているのに君達はただある権利だとして先賢の遺産である豊かな民を食い潰すだけで飽き足らず子々孫々に継ぎ誇るべき貴族のあり方を蔑ろにする。なんと悲しい事だろうか、我等の祖が盾となったのは何のためであろうか?我が祖である聖王が願ったのはこのような愚かな貴族諸君が民草を虐げる国であったのだろうか?神々が我ら人の子に求めたのはこのような世界であったのだろうか?神々は奴隷を好ましく思っておらぬ、何故に不幸を振りまくまねをするのだろうか?問いたい!」


私は顔を上げ剣を抜き高く掲げて号令する。


軍楽隊の曲も終盤になり最後の一音が私の号令と重なる。

「往け白銀の盾の担い手達よ!我等は生ける聖域である!理不尽に泣く者の盾となり、幸いを願う無力な者達の道を切り開く刃となれ!!」


我が号令をうけて煌く白銀がガスガスと大きな音を立てて前に進む。

空中に映る我が姿も消え、隣国に写るのは白銀に包まれた歩兵集団であろう。


隣国の国境に現れる白銀の軍団の行進。姿と共に流れる軍楽。

【後悔せよ!祈りの時間くらいはくれてやる】






国境地帯は恙無く通り過ぎる。

結構な数の領主達が我国の力を知っているのと戦場になることを嫌って、多少の条件付であるけど濃度を解放しているからである。

それ以前に公爵私兵団達が色々暴れた後だからとばっちり食らいたくないだろう。


中ほどまで来ると領地を守る領軍が列を成して襲い掛かる。

所詮は寄せ集め、多少は弓矢などで戦力を減らしてからと知恵は回るだろが、白銀の鎧を貫くほどではなく盾に関しては雨粒にも似た音を立てるだけである。

先制のつもりなのだろうか?

攻撃というものの手本を見せてあげるとしよう。

魔道兵が【爆裂火球】の術法を敵陣の手前で炸裂させる。

敵陣を焦がすか焦がさないか程度であるが、炸裂音に騎馬兵達は馬を宥めるので手一杯である。

振り落とされるものも出てくるし、愛馬に踏まれている。あれは結構むごいものだ。

農奴達を駆り立てたのだろうか?粗末な装備の男達が棒切れに包丁をくくりつけた程度の槍で立ち向かうのだが・・・・・・・・・・・


盾に阻まれて攻撃が通らない。逆に盾に殴られて、合間からの鑓に叩かれて・・・・・・・・

倒れた所に踏みつけられて・・・・・・・・・手足を狙って頭や胴体は避けているようだが戦闘力は殺がれている。


地面に落ちた蝶に群がる蟻のように指揮官と思われる一団に我等が白銀の盾は詰め寄ってくる。

がつんがつんと盾を叩く音が聞こえるのだが段々力弱くなり聞こえなくなるのである。


そして、戦いの後に残るのは手足を折られて呻く農奴達と袋叩きにされた領主の一団である。



領主達の一団は最低限の手当てをして武装解除する。

農奴兵達は良く染みる薬を塗って手当てをした後で一纏めにする。

骨折程度ならば薬を塗れば数日から十日程度で治るから申し訳ないが痛みに泣いてもらおう。

命あるだけ有難いと思ってもらおう。


農奴兵達の薬を塗られての悲鳴は近隣に響き渡り、私達が逆らうものには惨い事をするという噂が流れるのである。




あれはむごいと思うのだが・・・・・・・・(by岩石神)

我が信者達もあれの痛みは泣くほどだからな。(by戦神)

死ぬよりはましでしょう。(by豊穣神)



「末弟様、最初に降伏勧告をする忘れてましたが・・・・・・・・・・・」

「それは嗜みに欠けることをしてしまった。反省せねば・・・・・・・・・・」


その日はこの近辺の村に陣を張り、捕らえた者達を村人達(大半が農奴であるのだが)の手を借りて手当てさせたり地勢を調べたりしている。

捕らえたり討ち果たした貴族は近隣の貴族らしく他には少数残っている程度らしい。

その辺は少数の兵を使者として出して逆らうなと釘をさしておいて、軍団を休ませるとしよう。


徴発だのする必要もなく物資は十分だ。

略奪だのする面倒はないし、精々水場を確保したり場所を占拠する程度だ。

その夜は兵達も良い汗をかいたと馬鹿騒ぎをする。遠巻きに不安げに見つめる村人達がいるのだが、我等が無体をするつもりでないことに一次的に安堵している。それでも娘を表に出さないだけ警戒しているのだろう。


そして、農奴兵の中に家族だのいるらしくそれらを引き取りたいという声がちらほら・・・・・・・

身代金代わりに労役を形ばかり課して解放する。

これで植え付けの季節に彼等も間に合うだろう。

そして数日過ぎる。



数日に渡り響く悲鳴や呻き声が奥にある領主達の恐怖を煽るらしく攻撃の手が出てこない。


農奴兵の粗方が快方に向かっているのを確認した我等は隣国の王都に向かって進むのである。



別方向からは公爵の私兵団達がそれぞれ進んでいるが、我等よりも進度が早く我等が隣国の都に着く頃には陣を張っているのであった。

歩みが遅いのは仕方ない、重装歩兵だし・・・・・・・・・・

速度重視の騎馬兵主体の荒野の民に竜や何かを利用して空の旅をする人外兵団にろくな装備なしで駆け抜ける奴隷兵士達に速度面で勝てるわけはない。

決して、小休止が長いわけではないのだが・・・・・・・・・・



隣国の都についた我等の元に啓蟄地方の諸王国連盟で停戦の使者が訪れるのである。


刃物は良いねぇ、多層鋼の刃紋はきれいで良いよう!

これを肴に酒を飲もう。

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