馬族長老と孤児姉
あらすじ 孤児姉弟は危険人物(主に変態的な意味で)から安全を確保する意味で騎馬公の天幕に招待される。
ちなみに一人称は馬族の長老格で語り部。
大地と風の申し子たる荒野の民。我等が詩をはじめるは人族連合なる街の民が泥の中を転べ回る豚であったときより古く、魔族と称する諸々の民が獣のごとく種々の世界に適応するよりも古い。
我等は荒野の成り立ちと共に生まれ、その地に生まれついた馬や牛や羊や山羊等の諸々の獣達の助けを借りて一族を率い、詩を紡ぎ、恋を語らい、戦を楽しむ。
街の民も諸々の民も己にあるものだけで満足せずに忌むべき盗人と化して世界を食いつぶしていく。
我等荒野の民、その歴史は古けども正しくとも力がなく、力なき正しさはもはや正しさといえない。
何故、隣人を慈しみ 何故、身内ですら敵と出来るのか?
我等答えを知らず踏みにじられる日々を送る。男達は短槍を手に守ろうとするが、異界より来る勇者なる外道どもは生きたまま同胞を焔で甚振り三日三晩かけて焼肉にする。女達は子を守ろうと剣を手に馬を駆るが魔王なる非道の君主は従わぬ我等を大地で覆い生きたまま大地への奉げ物とする。
子等は日に日に少なく、このままでは正しき歴史を伝えるものも世界の正義も途絶えるかと思われたとき。
一人の街の民、声を上げる。
戦火の絶えぬ故郷を前にして正義とは何かと小さな声を上げ、踏みにじる強者に何の意味があろうかと叫びを上げる。
彼は小さな焔。なれど見縊る事勿れ、小さな種火でも世界を焼き尽くす焔の渦になる事もあることを知れば。
まず、従いしは王族、狭間の地にありて人族の防人たらんとする荒ぶる男。叫びをあげた初めの男に、自らの眷属の行く末を案じて王位を与え人魔全ての弱きを守る盾とならん。
次に従いしは奴隷。 人族の尖兵として死ぬべき定めを助けられ、声上げた男に命を借りを得た戦士。万を超える軍団従えて、咎なき囚われ人を解き放つ解放の旗手とならん。
復習の狼煙を上げたるは商人。不誠実たる人族に家財全てを奪われて、信義は何かと声上げる。黄金の壁を築きつついまだに答えは得られずに・・・・・・・
癒しの御手が従わず、その身を削り慈悲の詩ついに光を失いぬ。更に世界を癒そうと命を燃やす癒しの御手に涙ながらに問う男。出来るからだと癒しの御手に傷ふさぐまで待たれよと陣の一つに留め置く。
涙流すは農園主、手塩にかけし実りの詩が一度の戦で灰となる。飢えたる民をまとめつつ、一度燃えれば百を植え、千が燃えれば億を植え、大地全てに実りを齎す。彼が歌うは実りの詩よ、紡ぐは戦が終わりてあとの百をも越える実りの季節。
懐深きは異形の男。人魔全ての世界から外れた哀れな孤児を鉄の拳で守りつつ、男に慈悲を願い出る。彼欲するは聖域を 小さな小さな聖域を 些細な願いの代償に勇者を殴り魔王を叱る。彼の叫びは血の叫び、声を上げたるその後に残るは異形の朽ちたる骸。
最後に従う我等が祖。千をも越える民草全て、戦支度に身を包み。世界を包む戦の傷に否と声上げ狼煙を上げる。
千の千倍超える敵、万をも超える悪意の渦に。人魔全てを敵にして、万超える日々声上げる。何故戦うと、何故話さぬと・・・・・・・・・・
千の千倍超える敵、万をも超える悪意の数に、億の至誠を示して治め。六の光と一つの盾と数多の民が壁となり、戦のおろかさ訴える。人魔全ての敵は我等かそれでもこの血で終わるなら。世界の傷が癒えるなら、惜しくはないと笑い往く。
ついに音を上げ人と魔は初めて話を交わしたる。
戦の愚かさ身に染みて、一度剣を収めたる。
子等よ忘れる事なかれ。一度抜かれた剣は振られ、百をも超える悲嘆を得ると・・・・・
今一度の戦火に世界は二度と耐えられぬと・・・・・・・・・・・・・
小さな娘よ、黒髪の子供よ、我等が長が迎え入れたる新たな家族。
この詩 その身に刻み込み自分と誰かの幸いのため生きてく事を切に願う。
何度でもこの天幕にこられるがよい。
そのたびにこの詩で迎え入れ、君達の物語を聞くことを楽しみにしよう。
長話をしてしまったかな? この年寄りの癖だと笑い飛ばしてくれ・・・・・・・・
これ、女衆! 小さな子が飢えてしまうではないか!
肉汁に羊酪に麦焦がしを存分に用意しなさい。炙った肉もあるだろう。脂の乗った所をたっぷり与えなさい。
この王都は捕らえる獣も摘む事のできる草もない乾いた地。人の心も乾いて手助けもなくここまで生き延びたのが奇跡。
痩せこけた手が子供の証か?飢え死にする一歩手前ではないか?
ワシが長話をするからだと・・・・・・・・・それはすまなかった・・・・・・・・・
さぁさぁ、子供達よ存分に食べなさい。我等天幕に居る荒野の民はお前らを家族として迎え入れよう。
遠慮するでない・・・・・・・・・・・・・・ 感謝もいらない。子供に食わせるのが大人衆の役割よ・・・・・・・・・・・
なに、食えぬ弟妹に遠慮しているだと・・・・・・・・・・・・・
幼い身で何を考えている。食って力をつけて弟妹達を守れるようになるのがお前等の成すべき事よ・・・・・・・・・・
さぁ、食え! 力が足りねば法務官をせっついて庇護下に入れさせてしまえ。
あの法務官なる男も無力を知って無知を恥じて今頃叫んでいることだろう。あれも昔語りの一族の、始まりの王族の末。理不尽に踏みにじられる幸いをと願う声を無碍にはしまい。
本当にこんな子供に理不尽を強いるなぞ王都の者は無慈悲にも程がある。戦士よ、孤児院なる場所を押さえておけ。必要ならばこの宝の原石を荒野の民で貰い受けて富と名誉を増やそうではないか。
黒髪の子供よ、何故食べぬ?
なんと、弟妹が満ち足りぬ現状で自分だけ満ち足りるわけにはいかないと・・・・・・・・・・そして盗みを犯した自分が家族として迎え入れられる資格がないと・・・・・・・・・・
大丈夫だよ、法務官なる男は君達だけを満たして満足する男ではない。だから食べて良いのだよ。
それにその盗みは弟妹のためであろう。方法は良くなかったが思いは十分理解できる。荒野の民が受け入れずとも我語り部の名において君達を受け入れよう。
よしよし、大変なところで生きてきたんだねぇ・・・・・・・ ここに居れば大丈夫、飢えも理不尽も全て守ってあげよう。
いらない?
寧ろ守る力が欲しいと・・・・・・・・・・
馬鹿な子であるな。 戦士よ、黒髪の子供に戦いを教えな。
庇護よりも誇りを守り大事なものを守る術を得たいとする気概をつぶすのは大人のなすべき事ではない。
娘よ、法務官が戻るまでは時間がある。女衆と共に手仕事でもしてみるか?
お前の手も働き者の綺麗な手だ。皸とか胼胝とかがあっても恥じ入ることがない綺麗な手だ。
簡単な刺繍ならば作る時間もあろう。
複雑なものが作りたければいくらでも居てもいいのだよ。
なぁ、女衆。
この娘が好いてくれる者が居ればそいつは幸せものだよなぁ・・・・・・・
見てみたいと思わないか?
働き者の良い娘が幸せな番となるところを・・・・・・・・・
小さな客人にして新しい家族よ。
君達はどんな物語を聞かせてくれるのかな?
ワシは楽しみじゃ・・・・・・・・・・・・
今回も微妙に別視点でありました。次は法務官視点に戻るかと・・・・・・・・・・・思いたい・・・・・・・・・




