聖域の詩と全裸賢者
嗚呼、此処に集ってきた者よ、私の名は王室顧問男爵。
狭間の国にて禄を食むものだ。
諸君らが此処に来たのは様々な理由があろう。
理不尽に囚われて助けられたもの。
今尚理不尽の最中で足掻く者。
王命にて主命にてこの地にて任を果たさんとするもの。
親類縁者を案じてきた者。
幸いなき声を拾わんと駆けつけた馬鹿者達。
他の理由で来たものも在ろう、それで良い。それで良い。
諸君等がここにいる理由も様々であろう。
命令だからと古の誓いだからと他者の押し付けにより行動する者。
ただ偶然にて居合わせたもの。
己が内なる衝動のまま、世界を変えようと立ち上がる大馬鹿者。
自ら一旗上げようと付き従う者があろう。
それで良い、それでよい!
人は一つに向かうだけでなく様々に目を向けて自分と誰かの為に幸いなる道筋を求めるべきである。
そして、我が所属する狭間の国(仮称)とその理念に従う馬鹿者達は今此処に奴隷労働で苦しむさまを見ながらの飯が不味いからと狼煙を上げよう。
因みに私は酒が不味くなるから協力するのだ!
(群集の笑い声が毀れ出る)
君達はどうかね?
奴隷、農奴だった諸君。
世界の片隅で飢えに苛まれて理不尽に痛めつけられて、妻女を誰かの欲望のままに差し出さざるを得ない。
それが当然とばかりに逆らうことさえ許されない。
君達はそれを是と言うか?
(そこで助け出された奴隷達からすすり泣きと怒りを押し殺した声が聞こえる)
様々に神に仕える信仰者達よ、君達は神殿に運び込まれた傷つき果てるものたちの姿を見て何も思わぬのかね?君達の神がそれを求めたのかな?一度声を発しただろう。【奴隷はよろしくないと】、君達は神々の言をいれる者としてそれを身捨てるのかね?
(神々に仕える信仰者達は否という声を挙げる。)
奴隷戦士達よ、荒野の民達よ、狭間の人外達よ・・・・・・・
君達は父祖母祖の嘆きを今再び繰り返すのか?
自らの無力を理由にそれを見逃すのか?
こたえろ!古の建国記の末達よ!お前らの誓いはその程度か!
(それに応じて否とか黙れとかという怒号が沸き起こる。)
王侯貴族達よ、君達は民草の牧人なる使命がありながら囚われる事を防ぎきれずその末にも苦難を押し付けている。君達は高貴なる身分である義務を怠り守るべき者たちの幸いを無碍にしている。君達に存在価値があるのか?
我等王侯貴族は民草達の導き手であり守り手であるのだ。
それを成さずに我等の意味があるのだろうか?
あるというのならば私に教えていただきたい。私はその意味を知らないから、立ち上がり幸いなき民草が為に義務を果たしに行くとしよう。
本当ならば世界にいる皆が少しでも目を向けてくれたのならば私は今頃怠けていられたのに・・・・・・・・・・・・・
(貴族達は剣を抜き、其々に誓いの叫びを挙げる。)
さぁ、其処にいる諸君。
理由がないならば私を言い訳にして進めばよい!
力が無いならば私を利用して力を得るが良い!
幸いを求めたいならばここにいる諸兄等と共に幸いを求める道を歩めばよい。
私は切欠として理由として力として責任を負うための生贄として今ここにいよう。
さて、諸君らは如何動く!
私は君達に問いかけをする。
私という触媒を得て、如何動くのかと?
私利私欲のために動くのか?大儀のために散らすのか?
願わくば自分も幸いなる道を繋げて、誰かも幸いなる道筋に一助を・・・・・・・・・
そして、私には道楽貴族として怠けることが出来る時代を・・・・・・・・・ふべらばっ!
(そこで、酒盛卿が神秘緋金属張扇片手に演説者を殴り飛ばす。その様子を見て笑う聴衆達。)
某貴族の家に遺されていた全裸賢者奴隷全廃宣言演説の一部より
神々の破門回状を出す条件として私に責任者になれと言う命令が下るのはどうかと思うのだが。
私は何処にでもいるような道楽貴族で酒と女を愛でながら静かに朽ち果てたいと・・・・・・・・・・
「仕事しろ王室顧問。」
「神々の命令です、素直に従いなさい。」
「師匠・・・・・・・・・・・」
「仕事しろ!」
「子供達の前で無様見せるな。」
色々・・・・・・・命令拒否権は?
そうか、神殿経由だから無理か・・・・・・・・・・・・
クソッ!
今まで動かないくせに今更私に仕事を押し付けるなんて・・・・・・・・・・・・・・
神々を滅ぼしつくしてやる・・・・・・・・・
滅ぼしても良いけどその分の我々の仕事受け持てよ。(by光明神)
そうか、世界ぐるみで私に仕事させようと・・・・・・・・・・・・
いっその事世界後と滅ぼすか・・・・・・・・・
世界滅ぼす力量があれば我が後継に相応しいかな(by破壊神)
まぁまぁ、一息ついたら怠ける事できるようにとりなすから(by某王国担当地方神)
ふふふっ、優しき我が信奉者が世界の理不尽を見逃すことが出来るわけないだろうが(by性愛神)
神々が鬱陶しい。人を便利な道具扱いして。
元々人の子は神の道具だし。(by水神)
結局の所請けざるを得なかった。
王命自体は無視すれば良いのだが・・・・・・・・・・・・
此処に集い群れる馬鹿者達のことを見捨てることができないというのが理由である。
見捨てられた身でありながら、身捨てる覚悟で私を慕ってくる大馬鹿者を管理しないと世界に傷跡を増やして私の隠遁生活の支障になろう。
それ以前に
「「「賢者様・・・・・・・・・・・・・」」」
「御主人様・・・・・・・・・」
うむ、子供達の視線に負けたのはしかたないことだろう。
私は何処にでもいる道楽貴族なのだから。
養い子達の期待に満ちた視線を無視できるほど強くない。
さて、其処までする義理はこの世界にはないのだが・・・・・・・・・・・・