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叫びあげる子と兎料理

化蝶国王都・・・・・・・・・・

其処から聞こえる悲鳴が俺の耳から離れない。


其処にいるのはどんな苦難を味わっているものなのだろうか?

今までも聞こえた悲鳴の元を辿ってみると、痴話喧嘩に悪戯のお仕置き、一度なんかはお楽しみで喜びの悲鳴を上げている場面に乱入してしまい場を白けさせてしまったことなんてのもあったし・・・・・・・・・・・・


「若いの今度は此処から悲鳴がするんだな。」

「ああ、なんか俺心が折れそうなんだが・・・・・・・・・」

「でも、稀に本当の苦難に遭うこともあるのだろう。さっさと呪いを解いて自由になれ。付き合うこっちの身にもなれ!」

「ごめん・・・・・・・・・」


何で呪われている俺が謝らなくてはならないんだ。



そりゃ、神を殴るなんて愚行をするのが悪いのだ。(by極北神)

あの拳は痛かったぞ、主に心が・・・・・(by性愛神)


王都にある、貴族だか大金持ちだか判らないが大きな屋敷だ。

塀沿いに植えられた木々の手入れされている所を見ても金が掛かっているのだろうな。

この中だ!

今度こそ悲劇を止めることができることを祈ろう。


って、いうかどの神に祈れば良いのだ?




ふむ、それは良い所に気がついた。君の場合はどの神に祈っても弄られてしまうだけだよ。(by療養神)

神々が趣向を凝らして様々な悲鳴の元に導いているからねぇ・・・・・(by厨房神)

そろそろ当たりを用意してあげるのが慈悲というものだろう。って、言うか我の子供達の元に導いておくれ。(by荒野神)



俺は開け放たれた門の中に脚を踏み入れる。


国境地帯に腰を落ち着けて数ヶ月、助け出された民草は結構な数に膨れ上がっている。

しかし、王国の土をふんだ事もないというものが居るようだが?


デブ兎がのそのそと散らばっている平原の一角、荒野公の供出した天蓋の群れが所々に出来上がっている。煙が立ち上っているのを見ると食事時なのだろうな。

ちゃんと喰っているかな?

王国で幸いの道を見つけることが出来ればよいな。






「はいはい、番号札を持っていてね。貴女は何処の出身だったのかな?」

「えっと、祖父が王国の民だったのですが・・・・・・・・・・幼い頃に奴隷商人に騙されて西方平原国で奴隷にされたらしく後に奴隷から農奴に身分を上げてもらって・・・・・・・・・・後ろに続いているのが私の子供や孫なんですが・・・・・・・・・・」



ずらっずらっ!

矍鑠とした老婆の後ろから数十人の様々な年齢の者が・・・・・・・・・・・

顔の造作を見れば血の繋がりを感じるねぇ・・・・顔の造作が違うものも居るけど連れ合いとか・・・・・・

話を聞いている孤児娘の顔が困惑しているのが良く判る。


「えっと、お婆さん。後ろに居る一団は貴女の一族という事でいいのね?後、王国の何処の出かわかれば教えて欲しいんだけど・・・・・・・」

「何処だったかしらねぇ・・・・・・・・・?」

「ばあちゃん、死んだ大爺は王国の南だって言ってじゃないか!」

「あれ?俺は西の外れだって聞いてたぞ。」

「北の雪割の野だって聞いていたが?」

「それは従兄弟の嫁の母親じゃないか。」


ごちゃぐちゃ・・・・・・


一族の者があーでもないこーでもないと言い合っている様はうるさくて仕方がない。

孤児娘も諦めて


「では、皆さんのご先祖が王国各地から連れてこられたという事で・・・・・・・・・・仮住居と生活用品はあっちの奴隷戦士達から貰って下さい。後、炊き出しとかもありますけど幾つかの仕事とかもありますのでそちらで生計の足しになるものを得ることをお勧めします。」


「爺様が生きていたらねぇ・・・・・」「んだんだ。」

「でも、末娘の婿が王国民だったじゃないか。」

「還れないと思っていたけど生きて王国の土が踏めるなんて・・・・・・・・」

「あなた・・・・・・・・・・」

「見てごらん、ここが俺たちのふるさとだ。」


小さな子供を抱きかかえている若妻に逞しい若者。二人がひしっっと抱き合って喜びを分かち合っている。

子供も二人に挟まれて満更でもない様子。

そのまま、夫婦は・・・・・・・・・・顔を近づけて・・・・・・・・・


「はじまったよ、この馬鹿夫婦。」「二人の世界だねぇ・・・・・」

「子供衆もいるから、二人はほっといて行くよお前等!」


ぞろぞろ・・・・・・・


解放農奴の一族は奴隷戦士が管理する物資の集積地に向かうのだった。


「あのぅ・・・・・・・・・・」

孤児娘の前に残されているのは抱き合って家族の幸いを分かち合っている若夫婦。

何も聞こえていないのを理解したのか


「次の方どうぞ。」

次の一団の聞き取りをするのであった。



その様子を見ながら私は受け入れ先への依頼状を綴るのである。

因みにその若夫婦、一族から見捨てられたのに気がついてあわてて探し回るのだが泣きべそ書きそうになりながら合流したのが二日後であった。





そんなある日の事、王都と違って溢れるほど仕事がないのがとても嬉しい私は上機嫌で保護された連中に文字だの計算を仕込むことにしている。

少数ながら我が荘園(予定)でも受け入れるから我が眷族になる者に対しては十分教育をしないと・・・・・・・・・・


大人衆は日銭稼ぎとして設営だの周辺地域の街道整備、開拓等の土木作業に勤しんでいる。

奴隷だった連中は自ら稼いだ金で暮らせることが始めてのことなので目に喜色を浮かべて汗を流しているし、農奴だった連中もこれからの暮らしには先立つものが必要だと必死に働いている。

女衆も、仮住居を整えながら性愛神や療養神の信徒達の手伝いを代わる代わる申し出てる。

こうした彼等の手助けがあって、後から来るもの達も王国の土を踏んでからは不自由することがないのである。


そうして暫しこの地で養生した後、故郷が判る者は故郷へと、判らぬものは私からの依頼状を持って旅立つのである。


子供達は子供達で始めは其々の集団で固まっていたのだが、少々の喧嘩とかを経て仲良くなったりして一緒に遊んでいる。

まぁ、文字とかを教えているので知り合えば打ち解けるのは早いのだろう。

少々内気な子もいたりするが其々の集団のガキ大将とかが強引に引き込んでいる。



「まてまてー!」「にげるな!」


デブ兎が追い掛け回されている。

大人しくてもこもことしているからいい玩具なんだろう。

捕まりたくないのか必死に逃げるデブ兎。


「まてー、ばんめしー!」


なるほど、そりゃ必死になるわけだ。


「おっしゃ!つかまえたぞ!」「今夜はご馳走だねにーちゃん。」

「ああ!おれ達が捕まえたんだ、一切れじゃなくて塊でくれるはずだ!」


誇らしげに格闘の跡であろう擦り傷だらけの顔を満面の笑みに変えている年長の少年と弟妹分であろうチビ共。其処に抱え込まれている、彼等の晩飯(予定)のデブ兎。

彼の運命は丸焼きか、煮込みか?

私的には軽く炙ってから果実酒で煮込むのが捨てがたいぞ。


じたばたじたばた・・・・・・・・・・・・・

ぴょん!



油断大敵、デブ兎は少年の手をすり抜けて走り去っていった。

そして近くにある巣穴に飛び込むとそのまま出てこないのであった。


「ちくしょー!絶対お前を食ってやる!」

負けん気の強い少年の叫びとしょぼーんとした様子を見せる弟妹分。


その周りにはデブ兎はいないのであった。





別の場所に目を向けると

「うさちゃんうさちゃん。」

「もふもふだねぇ・・・・・」


子供達に撫でられるがままにされている別のデブ兎の群れ。

昼寝をしている子供に寄り添っているデブ兎もいる。

アレは以外と暖かいのだよなぁ・・・・・

野外で酒を飲んでいるときに足元にいると行火代わりに良い。


其処に忍び寄る先ほどの少年。


ガバット飛び掛るもデブウサギのほうが一歩上手で即座に反応して逃げ出し散り散りになる。

その暴挙に怒る撫でていた子供達。

少年の方も悪びれることがなく兎狩りを申し出るのだが、折角楽しんでイラのを邪魔されたり逃げる兎に踏まれて眠りの邪魔をされた子供達のほうは受け入れない。

言葉の応酬が少しあった後に喧嘩となる。


拳を振り上げているうちならば笑い話だがそこらにある棒切れとかを持ち出したり石を用意したりするようになる前に止めるとするか。

私が手を挙げると子供達の様子に気がついた大人達と奴隷戦士達が子供達を引き剥がしに掛かる。


勿論この喧騒にデブ兎は逃げるのであるが、平原は広い。適当に離れると草を食むのである。



その後子供達は大人達の説教を喰らって、皆して例のよく沁みる薬を塗りつけられるのである。

なるほどこうして子供は悪い事を覚えるのだな。


喧嘩した次の日は子供達は仲良く兎を追い回していたのは笑い話だ。

その晩に兎料理が出たところがないのを見ると成果はなかったようだが。



そして私の夕餉には程よく脂の乗った一匹の兎がこんがりと焼かれて鎮座しているのであった。


美味美味。




鹿肉の炙りをかぶりつきながら酒を飲むとすすむな。

お陰でキーボードもべたべただが。

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