叫びあえる子と指の数
性愛神の降臨から一夜、元農奴の若者は私達に聞こえぬ声に悩まされる。
神に逆らうなんて事をするから報いが来るのだ。
「ご主人様、あの若者がこのような呪を受けているのにご主人様にはなにも影響がないのはなぜでしょうか?」
「孤児姉、私のような敬遠なる神のし『うそだっ!』………」
ふむ、雑音が入るようだな。
「敬遠なるかみのしも『だうと!』・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・人の話を遮る無粋者がいるようだな。
「私ほどの人格者ともなると神々もおいそれと手を出せないよだよ。」
人格者と書いて脅迫者とよむ。(by演芸神)
神殿に査察と称してお布施を徴収したり、犯罪行為とか言って信徒をしょっぴくからねぇ・・・・・(by海洋神)
私たちの自由は芸術活動を束縛するし(by文芸神)
演芸神は兎も角、海洋神は漁労神と信徒同士が喧嘩騒ぎをして私が仕入れるはずだった酒をダメにしてくれたし、文芸神は言わずもかな。
王室顧問の機嫌損ねると我が癒し手達が苦労するから、最近匙代にも事欠くありさまだし(by療養神)
えっと、この俗ッ気の強い神様はやたらめったら匙を投げまくるから会計殿が苦労していたぞ、しかも査察と書いて会計補助と読ませるつもりだろう。少しは自分の所の会計を育てやがれ!
良いではないか、お前の子供達は我が責任もって面倒みるから。それに性愛神だけ手伝うなんてずるいぞ(by療養神)
ふむ、我が頼もしき守護者だからな王室顧問は。(by性愛神)
ああ、話が進まない………
「なぁ、貴族の旦那。なんであの道楽貴族様は神々とあそこまでやりあえるんですかい?」
「やっぱ、貴族ともなれば神々とやりあえるくらいじゃないとだめなんか・・・・・」
「神殺し?」「日常的に神に喧嘩売るなんて・・・・・・・・・・・」
農奴達や国境警備隊員達があり得ないものを見ているような顔をしている。
「お前等、あれは別格だ。一緒にされては困る!」
「信仰心やら神に対する敬意が欠落している奴だからこそ出来るのだ。」
「わしはあそこまで悪辣じゃない。」
貴族連中がわめいているな。後で査察だ!
「あっ!王室顧問。査察と書いていじめとルビ振ってやがる!」
「やっぱそうだったのか!」「抗議しないと!」
「くそっ!神はいないのか?」
いるよー(by森林神)
「くそっ!見捨てられたか………」
わざと神を無視するとはなかなかにやるではないか。
「何ができるんだろう?」「話進めない?」
「こういうときは一度話が落ち着くまで避難するのが第一だね。」
なぜか子供達が後ろに下がっている。
そこから現れたのは神秘緋金属張扇を構えた孤児姉である。
「皆様、少し本筋にお戻りください!」
そこから巻き起こる打撃音の数々、人も神も等しく叩きのめされるのであった。
「皆様失礼いたしました。」
一礼をした孤児姉の後ろには叩きのめされて地に付している屍(死んでないけど)が多数あるだけであった。
「ふむ、あそこまでの威力がないと神々に通じないのか。」
力尽きながら変な納得をするな農奴の若者。
数刻後、やけに威圧感を増している孤児姉におびえながら皆作戦を立てるのであった。
「あれが王室顧問の最終的良心回路!」
「王国の最後の砦・・・・・・・・・・・」
「今の打撃は・・・・・・・はぁはぁ・・・・・・・ぐはっ!」
気持ちの悪い虫は駆除しないとな。
冗談神器片手に話を元に戻そうとしている姿は愛い物である。
「賢者さまが一番脱線させているような・・・・・・・・」
うるさい!
「声のするほうに・・・・・・・・・・俺は助けに行くだけだ!」
ああ、そういえばこいつがいたな。
呪いという名の探索能力持ち。神に刃向う馬鹿…………
少なくとも非人道的な扱いを受けているのを助け出すには十分であろう。
その馬鹿に絡むのはやはり馬鹿。奴隷軍団の裸鎖である。
「なぁ、にーちゃんよぉ。そんなぼろぼろのなりで助けられるのかい?」
「うるさい!どうせ俺は死ねないんだから、突っ込めばいいだろ!」
「威勢がいいねぇ・・・・・・・ 旅の道連れはいらねぇか?」
「えっ!」
「馬鹿みたいに突っ込むだけが助けるんじゃないんだよ。馬鹿かお前は!」
うわぁ、裸鎖にバカと言われているよ、私だったら耐えられないね。
「ご主人様茶々を入れないでください。」
気をつけよう。
「だったら、どうすればいいんだよ!」
「簡単な事だ、おれ達は強い!お前みたいなヒョヒョロモヤシはどこに助けたいものがいるのか指示せばよかろう。馬鹿なお前でもできる簡単な仕事だ!少なくとも指の数だけは助けられるのだろう。行くぞ!バカ者。」
「うわぁ、はなせはなせ!揺らすな傷に染みる!」
「聞こえないなぁ・・・・・・・・・・・ 行くぞお前ら!」
「「「「はっ!」」」」
元農奴の若者を抱えた裸鎖(東邦建国公解放奴隷戦士団 三席戦士長 公領男爵位)が配下の奴隷戦士たちをひきつれて国境を越えていくのであった。
少なくとも十人、うまく群れごと保護できればもっと助けることができるな。
両の手の指の数だけでも出来れば儲けものだ。
「費用対効果が・・・・・・・・・・」
補佐見習、そろばんで戦をするな。
「わしも少し援護してやるかね。」
商会公も重い腰をあげて国境を超える用意をする。
「公は何をなさるので?」
「なに、簡単な事よ。事の経緯を伝えて、交易の道を閉ざすか見逃すか選択を迫るだけだから簡単な仕事だろ。」
「それって、国を滅ぼすのと同意だから!」
「考え直してください!」「うわぁ・・・・・」
私の教えを受けに来ている他国の地主や貴族達が頭を抱えている。
商会公に縋りついて考え直すように言ってくる者もいる。
では、こっちも彼らに選択肢を選ばせるとするか。
「生徒諸君。ちょいと頼みたいことがあるのだが良いかな?君達も農奴解放したり王国出身者を帰郷させたりで人が足りなくなるだろう、そこでだ、今落とし前をつけさせる連中の所持する農奴達の保護をお願いしたいのだ。ほら、私達は陛下からの命令で王国出身者を保護しなければならないが他国出身者をどうこうしろとは言われてないわけだ。君達は保護という名目で彼らを労働力として確保してしまえばよいのだ。もちろん賃金労働者として雇い入れてくれるのならば我等も出来うる限りの助力をしようではないか。もちろん交易に関しては君達に優先的に回すようにする。どうだね、国のためにもなって君達の利益にもなる。しかも善良な地主とか領主と尊敬されるぞ。どうかねどうかね?勿論、他国の流儀というのもあるだろうから強制はできないけどね。あと、性愛神殿と冥界神殿、療養神殿の三神殿から破門回状の準備があるという話も善意で教えておこうじゃないか。これはほんの私からの善意の情報提供だよ。どう、扱うも君達に委ねようじゃないか。」
私の説得に顔を青くして思案に入る他国の地主達。
まぁ、王国からの侵攻ならば人族連合経由で助力が来るかもしれないが神殿からの口出しには辛いものがあるだろうな。神の名というのは使い勝手が良い。
説得と書いて脅しと読ませないように(by節制神)
「うわぁ、えげつない。」
「これ、あの農奴の若者に聞かせなくてよかったね。」「・・・・・・・・・聞きたくなかった。」
「おいら、弟子を名乗りたくないよ。」
「孤児弟お前はいいよ、商売の道なんだから………俺なんて政治にどっぷりだよ。はぁ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・私がいるから。一緒にいてあげるから。」
「すまんな、傷跡娘。なんか、汚い人生送りそうだよ。」
あのぅ、勝手に話を・・・・・・・・(by療養神)
後で子供達を派遣しますので・・・・・・・
うむ、王室顧問の言や良し!世界に癒せざる傷を負わすバカ者は私の本意ではない!子供達よ。かの虐殺者達は我らと相いれないものとする。(by療養神)
不要に殺しすぎるのは世界の天秤を乱す行為だ。我等冥界神殿も一口乗ろう。後でこっちにも手伝いよろしく。(by冥界神)
我が誇りである王室顧問。かの者の悲しみと怒りは我の心を震わせるに十分である。(by性愛神)
おまえら!買収されているんじゃねぇ!自重しろ!自重!(by節制神)
後ろから聞こえる、神々を買収しやがったよとか。えげつないとかいう声は無視無視。
悔しかったらやってみるがよい。
こっちにも、手伝いよろしくー(酒精神)
さてと、酒が切れたので飲んできます。
って、お気に入りの数が時間ごとに増減している。
減るばかりかと思ったのに!
不思議だ。