叫びあげる子と性愛神
我が国の民草を害されて陛下も多少は気合が入ったようだ。
今いる兵団を率いて早急に保護しろと命令してくる。
それでは戦であろう、私自身怒りを隠せないがそれは下策だ。
戦をすれば人心が荒れるし治安も悪化する。
なにより、間違って攻め落としてしまった日には私の仕事にされてしまうではないか!
そっち?(by啓蟄地方担当地方神)
王室顧問だしねぇ・・・・・(by某王国担当地方神)
煩い神々だ。特に我が守るべき民草を害することを見過ごした腐れ地方神どもは一度信仰禁止令でも出してみるかな。信仰するべき神は我が敬愛する優しき性愛神と酔いどれたちの愛すべき飲み友達である酒精神を主神として、暗黒神に風の神に・・・・・・・・・
文芸神と芸術神は邪神だよなぁ・・・・
勝手に信仰体系を作らないようにや○しき我が信徒である王室顧問よ。(by性愛神)
ちょ!勝手に邪神にしないでよ!(by文芸神)
自重しろ自重!(by節制神)
我等が愛するべき女達の守り手である性愛神様、御身の優しさを受けながらもはしたない者、取るに足らない者とする悲しき世界を変えたく思います。
ところで一文字伏字なのはなぜですか?
「えっと、王室顧問。神々と普通にやり取りしないでください。神殿側のありがたみがなくなるじゃないですか!」
「いや、私なんかはましなほうだよ。そこにいる子供達を見てみるがよい。」
神々と交信している私に苦情をつける美乳の女神官。王都より性愛神殿有志一同と療養神殿癒し手群を引き連れて国境まで来てくれたのだ。但し、苦情の内容が少々俗っぽいぞ。
妬んでいるのか?
そして、私に促されて孤児院出身の子供達を見ている女神官。
子供達が暗黒神と語らっているのに驚いている。
「ちょ!王室顧問あれって・・・・・・・・・・暗黒神様!」
驚いているのは判るけど暗黒神様をあれ扱いするのはどうかと思うが。
うにょうにょな黒い外見の割には結構高位の神だから驚きや戸惑いは理解できるけど。
あっ、崩れ落ちた。美乳の女神官の信仰が壊れかけている。
「女神官様、貴女のあり方は間違っていないですから。弱き者の盾となり、安息所である貴女は立派な性愛神の愛し子ですから・・・・・・・・」
「王室顧問、どうして神は私に声をかけてくださらないのでしょうか?」
「それは性愛神様じゃないから判らないが、貴女を見守っていることだけは確かですよ。それにあの子達は暗黒神様の遊び友達ですし・・・・・・・・・・・」
どうして、神官の信仰告白を聞かなければならないんだ?
ああ、我が愛しい娘。お前は我が加護を受けて統べるべき立場を与えられても更に求めるか、我が愛はお前にも注がれているというのに・・・・・・・・・・・・(by性愛神)
神の顕現を目の当たりにして女神官はひれ伏す。顕れ出でた神に敬意を示すかのように。
性愛神は柔き光をその場に降り注ぎながら信徒達に語りかける。
平伏す必要はない。お前は善く遣っている。弱き者を守り導き、その身をもって安息所となり飛び立つ者の踏み台となっている。ここに集いし我が子供達よ、彼女は我が誇りだ。子供達よ、お前たちも泥水を啜る境涯から這い上がった今でも幸いなきを嘆き傷ついた者の為にあろうとする姿は我の誇りだ!
ああ、なんという幸いな神であろうか我は!
我が心を震わし、幸いなれという声を世界に行き届かせる同志達よ。
お前達は我が僕にあらず。ただ、暗闇の中を手探りで道を探す同道の朋である。
小さな灯火よ、世界に足跡を残す標よ。我の導き手よ!
我が声の無きことを寂しいと思うかもしれない、なれど我は共に在ろう。
汝らが幸いを求めることをあげて先に進む限り。(by性愛神)
性愛神は美乳の女神官を抱きしめ頭をなでる。
女神官は感涙を流している。その場にいる信徒達も神の朋と称されて感激して平伏す。
性愛神は両の手を広げ、臥所の香の匂いのする風を優しく送りながら語りかける。
平伏す必要は無い、我が求めるは幸いなる世界。
世界中に散らばる我が子供達よ、いや、朋よ!
我が世界に融けて語り掛けることが無くとも、我が神域にて姿を顕すことが無くても、常に共に在り続け見届けることを誓おう。
さぁ、祝福を受け取るがよい!
我が祝福と共に世界に幸いの声を満ち溢れさせておくれ。(by性愛神)
その場に満ちる柔き光。
性愛神の信徒達に降り注ぐ加護。
連れ込まれた農奴達を癒し手疲れた体に活力が戻る。ついでに療養神殿の癒し手達の活力も回復させたようだ。
敬意と礼をこめて平伏す場の一同。我も敬愛をこめて平伏す。
だが平伏さない者もいる。
先の開放農奴の若者だ。
「神様、聞きたいことがある。」
なんだ?質問するがよい。(by性愛神)
「どうして、力を振るってすべてを救わないんだ!どうして助けてくれないんだ!」
若者は性愛神様に掴み掛かるかのように詰め寄る。
それを取り押さえようとする周りを引きずってにじり寄る。
「答えろ!答えろ神様よぉぉぉ!」
愛しい者を失った憤りを誰かにぶつけないと気が済まないのだろうな。
神とてすべてができるわけでもないのに・・・・・・・・・・
若者は取り押さえる手を強引に振り払うと駆け寄って殴りかかる。
ごすっ!
性愛神様の顔面に拳が突き刺さる!
神に手を上げた若者も無事では済まない、その拳は砕けて血塗れとなっている。
それでも、無事な方の手を叩きつけようとする。
「こたえろよぉぉぉぉぉ!!」
若者は殴りかかる。性愛神様に打撃を与えることは無理だが構うものかとばかりに叩きつける。
ぐしゃ!
若者の拳が砕け肩までがたが来たようだ。両の手をぶらりとだらけさせ、性愛神様をにらみつける。
気が済んだか若者よ(by性愛神)
あえて拳を避けなかった性愛神様は若者に語りかける。
愛しいものとの理不尽な別れはつらいであろう、ここは脆き人の子の世界だ。我が力を振るうには大きすぎて他の悲劇を生んでしまう。我が愛しき朋の力を通してしか世界に在ることができない。力があっても無力とは・・・・・・・・・
人も神もままならないものだろうな。
つらかったであろう・・・・・・・・・・・・・
だがな、神に歯向かう愚かな若者よ。おまえは人の物を欲しがる駄々っ子にしか過ぎない。
そんな愚かなるお前に神罰をくだそう。
両の拳の指の数だけの者を救いきるまでの間、お前は虐げられし者の叫びを耳にするのだ。
起きている時も寝ている時もその叫びを聞き続けるのだ。
声ならぬ声、あげる事すら許されぬ者達が叫ぶ心の痛みを聞き続けるが良い。死ぬことは許されぬ、死して尚、叫びを聞き続けながら贖いの道を歩むのだ。(by性愛神)
性愛神様は若者の頭をつかみ何事かつぶやき、無造作に放り投げる。
平原に転がる若者は耳を押さえながら性愛神様をにらみつける。
「こんの、糞神!どうして、この声を放置してやがるんだ!俺は行くぜ!声の源へ・・・・・・・・・・・さっさと助けて糞忌々しい神の祝福からおさらばしてやるんだ!」
本当に馬鹿な若者だ、合わせてばか者とでも言うべきか。
ばか者は傷ついた体を揺らしながら性愛神に背を向けて歩み始める。
王室顧問、面白いことを言うな。(by性愛神)
性愛神様はばか者を慈愛の篭った目で見て襟首をつかんでから。
愚かな駄々っ子よ。その体では満足に動けないだろう。
療養神に頼んで癒してやろう。療養神よ、この馬鹿につける薬を(by性愛神)
馬鹿につける薬か・・・・・・・・・・匙を投げるべきか?
その拳というか両腕の傷であればこれを使うが良い。神に歯向かう愚か者にはこれが良かろう。(by療養神)
って、療養神の声がしたと思ったら其処にあるのは一つの膏薬が入った薬壷。
ああ、なんか判った気がする。
療養神の癒し手達が神より下された薬を手にとってばか者に駆け寄る。
ばか者はそんなもの要らないと振り払おうとするのだが癒し手達はしがみ付き押し倒し、ばか者の動きを止めて薬を塗りつける。
癒し手達は癒すためならば手加減などしない、それがどんな残酷なことであろうと・・・・・・・・・
あんな重症であのしみる薬を塗りつけられたら・・・・・・・・・・
ばか者の悲鳴は平原中に響き渡り、でぶ兎達がいっせいに逃げ出す。
「あれは本当に沁みるんだよなぁ・・・・・・・」
補佐見習いがしみじみと語ると心当たりのある者達は同意とばかりにうなずくのであった。
薬を塗り終えられた若者は腕が砕ける前より重傷に見えるのは私の気のせいであろうか?
痛みのあまりに気絶して涙鼻水失禁とぼろぼろになって平原に打ち捨てられている様を見ると。
あきれ返ってというか疑問の視線を向ける我々に癒し手は
「あの程度ならばこの薬で十分ですな。念のため今日明日は安静にしたほうが良いでしょう。貴方達も怪我したら塗って差し上げますよ。まだ、沢山ありますしね。」
と、イイ笑顔で返答するのであった。
癒し手達は基本的に加虐趣味でもあるのだろうか?それとも療養神の趣味なのか?
そ、そんなことは無いぞ。多分無い、ちこっとはあるのかもしれないが、まぁ、覚悟しておけ。(by療養神)
あれ?脱線した。