国境地帯と商会公
御前会議の後で各自で奴隷開放のために動き始めるのだった。
何故か西方国境地帯伯の所に私達師弟は居候する形となっている。
「お前の弟子達が切欠だ!師匠ならば尻を拭いてやれ!」
陛下・・・・・・・・あくまでも私に仕事をさせるつもりで。
馬車にて半月かけて、国境地帯伯の国境検問のある街に腰を落ち着ける予定である。
その間にも書類が竜族の航空便で届けられるのには無駄だなと思ったりするが気にしたら駄目なのだろうか?
「ふふふっ!王室魔術師団と商会公技術研究所の総力を結集して作り上げた振動がほとんどなく、車内で仕事やらなにやら出来る移動執務室。広さは空間魔法の応用で官僚部屋並に作り上げているし連絡用の魔術も完備しているからいざとなれば王都の判断を即時手に入れられる。おかげでわしが移動中にも仕事が満載で満載で・・・・・・・・・・・旅を楽しめない。」
「商会公、自慢は良いですけどどうして私達まで仕事しているので?」
「気にするな王室顧問、この馬車は商会公家の私物で貸出料ばかりに移動中の御主等を借り受けたのだ。前に引き受けた子供達といい、お主の所は人材が育っておるの。王室を見限って当家の教育顧問でもしてもらえぬか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・仕事しないで良いならば引き受けますよ。」
「それだと意味がないじゃないか!」
馬車の中は広く快適である。空間魔法を利用しているため馬車自体の重さは軽く馬の負担も少ない。下手すればこの中に大量の物資を詰め込んで運ぶのもありだろう。
この馬車は一台欲しいな。執務室だからって、飲食物がない・・・・・・・・・・ちょっとそれが寂しくもあるのだが。
子供達も手を動かしながらも口寂しいのか物足りなさそうな顔をしている。
「王室顧問、子供たちは優秀だが食べながら仕事する癖は何とかならなかったのか?」
「官僚達という悪い見本がいるから影響受けてしまいまして。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・優秀なのだが悪癖が・・・・・・・・・・・多いな。」
「人材なのか人災なのかわかりませんからね彼らは。」
「確かに。所で王室顧問、お前が投資した某国の葡萄農園王国の民が囚われているから勝手に引き上げて別の所にまわしたぞ。」
「それは助かります。結構好みの銘柄だったのですが、持ち直せますかね?」
「どうだろうな。賃金労働者に切り替えるにしても、数年はかかるだろうし・・・・・・・・・・」
「そこを指導するといって、美味しくいただいてしまうのでしょう。」
「勿論だとも、わしは商人だからな。」
「しかし、仕込が大変で実りまで時間がかかりそうですな。」
「仕方あるまい、溜め込みすぎていると思われないための隠れ蓑だしな。」
外の御者から合図がある。
竜便が届いて新しい書類が来たのだろう。
ふと思うのだが竜の鳴き声はどうなるのだろうか?
きゅいきゅい なのか ぎゃお なのか?
好みが分かれるのだろうが・・・・・・・・・・・・・・・
娼館で竜族娘を買ったときは普通に人の声で啼いていたが。
それはさて置き。
ひっきりなしに竜を飛ばしてくるのは勘弁願いたい。
竜族に含む所はないのだが、仕事が途切れないのは切なすぎる。
「商会公様と賢者様の会話って・・・・・・・・・・」
「悪徳商人と外道貴族の会話だな。」
「いえてる。」
「一部王室に対しての不敬表現とか混じっているし。」
「組ませちゃ拙いんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・(言えない。おいらも商会公様の儲け話に一口かましてもらっているなんて)」
子供達は好き勝手にいっている。
一応お前等の俸給(私の配下にいる孤児娘達や孤児姉の分)は投資して儲けている部分から出しているのだが・・・・・・・・・・・
「ご主人様、そう言えばこちらに投資した部分は如何いたしましょう?不渡りの情報があありますが・・・・・・・・・・・」
「もう暫く様子見でいこう。あまり引き上げすぎると本当につぶれかねない。金貨40枚なら何とか取り戻せる。」
うん、孤児姉は愛い奴だな。
ちゃんと見るべき情報を見つけてくれる。
頭を撫でてやると、嬉しそうにそれを受け入れてくれる。
わしわし
「・・・・・・・・・・・・・でも、これって・・・・・・・・・」
「なんかインチキ臭いんだけど。」
「師匠もえげつないよな。」
「人聞きの悪いことを言ってはいけないな。子供達、情報もまた重要なんだから。それにこの情報は外に漏らすと危険だから内緒な!お前達もこの情報を使って儲けてみるかい?」
「商会公、剛毅ですな。うまくやれば半年で倍に増やせるぞ!」
「・・・・・・・・・・・・・・じゃぁ、私も金貨一枚分だけ。」
「傷跡娘!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だって、補佐見習いと一緒になれば日頃の費えとか新居とか色々掛かるから・・・・・・・・・・・・・・」
「仕方ないな、俺も金貨四枚。商会公様、確実な所でお願いします。」
「良いともさ、孤児娘達はどうする?」
「えっと・・・・・・・・・・・使いすぎました。」
「私もちょっと手持ちが・・・・・・・・・・」
「金貨一枚くらいなら・・・・・・・・・・・・・でもこれを投資するとちょっと後がつらいかな?」
にこやかな顔をしている商会公。
その後馬車の中ではお金の使い方について講義されるのであった。
よく考えたら、王室顧問の行為って内部者取引だよな。(by作者)
法令には違反してないし、問題ない。(by商業神)
とりあえず儲けすぎは良くない。自重しろ。(by節制神)
王弟殿下なんて【もう、けがない】なのに(by演芸神)
それは少しむごいと思うぞ。(by毛根神)
なぜ神々まで便乗しているのだろうか?
「・・・・・・・・気にしたら駄目だと思う。」
ごもっともです傷跡娘。
そして国境の町に着く。伯の私兵団が警備している物々しさを除けば普通の地方にある町である。
検問があって、そこの側に位置が開かれて隣国との交易品がまず最初に紐解かれる。
ここで買い物をするのは近隣の者とか小商い達。ある程度の規模の隊商にまぎれて移動する者もいるからどれが誰だか良くわからないが。
とはいえ、珍しいものはあまりないな。
「王室顧問様、隣国とは生活様式が似通っていますから然程珍しいものはないかと。名産といえば麝香草で育ったウサギなんかは美味ですよ。」
「説明ご苦労、国境警備隊員君。少ないがこれで皆で飲んでくれたまえ!」
「有難う御座います王室顧問様。我等一同貴方様に忠誠を・・・・・・・・・」
街の案内をしてくれる国境警備隊員(伯の私兵団の一部所である)に数枚の銀貨を落とし込んで礼をすると素直に喜んでくれる。
別に忠誠までは要らないけどな。
「うおっほん!あーあー、王室顧問。ワシの部下達を引き抜かないように!」
後ろから声をかける西方国境地帯伯。そう言えば同行していたな。
拙い場面を見られたなと顔を青ざめさせる警備隊員君。
「後で警備隊員の心得について話すとしよう。隊長にはワシから直々に話を通しておくとしよう。」
哀れ警備隊員君。骨は拾ってあげよう。
もし職にあふれたら雇ってあげるからおいでね。
「引き抜かないようにと言いながら私の子供達には随分執心に引き抜きかけているじゃないですか!お相子ですよ。」
「ふむ、少なくとも王室顧問には断りいれていると思うが・・・・・・・・・・」
「その割には後ろ後ろ・・・・・・・・・・」
そこには私の娘達に粉かけて撃沈している国境警備隊員達(主に未婚の若手隊員)がいる。
「ねぇねぇ、警備隊に来ない?美味しいお茶とお菓子を用意しておくよ。」
「結構です。」
「これから非番になるから・・・・」
「えー、どうしようかなー?賢者様に断りいれないと」
「一緒に事務仕事しない?」
「そっちかい!!」
どうして若い男の誘い文句って定番なのだろうか?
「最後のは違うと思うけど・・・・・・・・・・・」
「遊びの誘いじゃなかった・・・・・・・・・」
「どんまい!」
「あの馬鹿ども・・・・・・・・・・・・・・警備隊事務長まで・・・・・・・・・・」
伯の額は青筋が立っている。
若者達に幸あれ・・・・・・・・・・・・・
後で酒樽の一つでも差し入れるから強く生きるんだよ。
私達は油を絞られている警備隊員の若手達を尻目に宿に向かうのであった。
せっかくの休みなのに前日電車に乗り過ごして、宇都宮まで行ってしまった。
面倒だから宿とって、朝は餃子食って帰ってくる。
せっかく年末以来の休みだったのに・・・・・・・・・・・