嘘吐娘と吐露
この話は少々欝な話であります。
幸いなると話に求める方は飛ばしていただいくなり、他の作者様の幸いなる結末をお楽しみくださいませ。
「私はそんなに綺麗な人生を歩んでいない・・・・・・・・・・・・・・・」
そう前置きされた傷跡娘の語りが始まる。
「私が生まれたのは国の名前はわからない・・・・・・・・・・・・私はその村で生まれて死んでいくのだろうと幼い頃思った。村の名前は干草郷、見渡す限りの畑には黄金色の穂がたわわと頭を下げて実りを摘み取った後の干草が一年中芳しく漂う所だった。そこで私は一人娘として生まれた。父母の名前は知らない・・・・・・・・・・・・・・・名前があったのかもしれないし、なかったのかもしれない。それでも二親は郷の皆から受け入れられて、二親も皆を尊重していた。私は幼い子供として皆から愛されていた。小さい子供は貴重で未来への紡ぎ手として慈しまれる。勿論私のほかにも子供達はいて、皆が兄弟姉妹として団子のようにまとまって遊んでいた・・・・・・・・・・・・・・」
「干草郷・・・・・・・・・・・・どこかで聞いたような。」
「暫し黙れ、霜降大使。」
「うむ・・・・・・・・・・・・」
「そこの地主の爺様は私達を大事に大事にしてくれていた。多分郷から出ることが出来なかったのは私達が出ることを許されない身分だったからかもしれないけど、病に伏したものがあれば薬師を呼び癒しの御技を振るわせていって誰もが幸い出会って欲しいと心砕いていた。私達にも目を配ってくれていて、飢えている者がいないか、不本意に虐待されている者がいないか見張ってくれている。郷の皆も皆元気で幸いで麦の粥と乳酪と塩蔵燻製肉を食べて働いている。私は郷で少ない女の子として大事にされていた。そのまま良い日々が続けくのだと思い続けていた。」
傷跡娘は涙を浮かべながら幼き日々を語っていた。
孤児娘達は羨ましそうに彼女を見つめて私に擦り寄ってくる。
そうか、お前達は親の温もりも知らなかったんだな・・・・・・・・・・・
彼女達をなでてやりながら話を聞いている。
「そんな日々が続いていたならば、多分私は一人の村娘としてその土地に縛られながらも幸いと思っていたのだと思う。今思ってみれば、誰も郷から離れていないから農奴だったのかもしれない。不幸せな貴族よりも幸いな農奴、それはそれでよい生き方だと思う。でも、ままならないのは世の流れ。地主が年の為なのか死んで代替わりをした。そこで継いだのが従兄弟甥に当たる男だった。その男は収穫は土地から自然にもたらされる物と思っていた男で、私達の事も絞れば絞るほど出てくる油と勘違いしていたのだとおもう。今となっては確認をする術は知らないのだけど・・・・・・・・・・・・」
そこで傷跡娘は辛そうな目をしている。
公爵令嬢は肩を抱いて、傷跡娘の頭をなでている。
そこで一息ついたのか傷跡娘は更に話を続ける。
「新しく地主になった男は従兄弟叔父から男爵位を貰って郷を我が物にしようとしている。それ自体は珍しくもない自分が偉いんだと見せ付けたいもの。でも、それに巻き込まれる郷の皆は良い迷惑。地代と言うか税が上がり皆飢えていく。そうして飢えた里の皆の中から年頃の娘を選んで自分の物とする。下手すれば誰かの連れ合いであってもお構いなし・・・・・・・・・・・・・・・ 私の母も目をつけられてしまった。父は運悪く怪我をして、病の床、地代を稼ごうにも女手一つでは家族を食べさせる事すらおぼつかない・・・・・・・・・・・・」
そこで傷跡娘は末王女を見て
「・・・・・・・・・・・・悪いけど王女様、皆に飲み物を持ってきてもらえないだろうか?語りすぎてのどが痛い。」
察しの悪い末王女、
「臣下が小間使いに頼むように主筋に命令するの?」
「王女様、おいらと一緒に飲み物を取りに行きましょう。ほらっ!」
孤児弟が気働きをして末王女の手を取って部屋を出るのだった。
部屋を出る二人を見て
「・・・・・・・・・・孤児弟有難う。」
と呟き、語りを続ける。
「母はあれこれ手を尽くしたけれど多分身を任せたんだと思う。ある夜、母は沢山の美味しい物を持ってきて私達に食べてといってきた。父は病の床から泣きながら済まないと言いながら一口食べたのだった。その後、郷の皆が余所余所しくなった。母が囲いモノになったことで裏切り者と思われたのだろう。それでも地主の息の掛かったものだから逆らったらどうなるか・・・・・・・・・・・・
父は気を病んで食を断って朽ちていった。母は私を守りたかったんだろうか、地主に身を任せて食べ物とか色々得ていた。そうして、月が巡り、星が流れ、季節が変わっていった。そうしているうちに母も飽きられていったのか食べ物をもらえる回数も減っていって、親子して腹を減らしていく羽目になった。そんな中でも母は私に飢える事がないように気を配り、自分の分も分けてくれる。郷の皆は助けてもくれない。自分達だけ助かる事で精一杯だし、地主に尻尾を振った私達親子が困っているのを当然の報いだと思っても哀れとも思ってくれないから。自分が困っているときに誰かを思いやることができるのは滅多にいないのは今となっては知ったけど、このときは郷の皆を恨んだりもした。
これが私の嘘の一つ。私は何時も誰かの幸いを願う優しい娘ではない。自分が良い思いをしたい、助けてくれない事を恨み、幸せになりたいと叫びながら何も動くことが出来ない。」
囁くように思いを告げる傷跡娘。寮母はそっとその体を抱きしめている。
「・・・・・・・・・・・・・・そのくらい誰だって思うことよ。」
寮の女衆はそんな傷跡娘を守るように周りを睨み付ける。
目をそらしたり伏したりする周りの中で咳払いをして公爵夫人が
「傷跡娘、続きを・・・・・・・・・・・」
と命ずる。
「季節は流れていく。母は私を食べさせようと働いて痩せていく私も一緒になって働くけど稼ぎは追いついてこない。土地を離れようにも他所で暮らすほどの技を持たない私達はしがみ付く様に過ごすしかなかった。地主が母に迫る回数は減っていき、他の女性に迫る回数が増えていく。私達を汚いものを見るように見ていた人達もその恩恵を受けるにつれて、当然のように施しを受け入れていく。私達はそんな彼等を軽蔑するように見ている。そのうちに私達のように捨てられるのだと手招きしながら・・・・・・・・・・・・
どうしてこんな気持ちになるのかは知らない。貧しさが心を荒ませると言うけども、その中でも光り輝く者が居る。それが私達でなかったのは確か・・・・・・・・・・・・・・・・
私達を尻尾振ったと馬鹿にした者も身を任せるようになって捨てられて・・・・・・・・・・・・また誰かが身を任せるようになって捨てられて・・・・・・・・・・・・・・
そうして、郷は荒れ果てていった。地代は上がってしまっているけど払えるものは誰もいなくなってしまった。地主は次に人を売ることを始める。働き手を若い娘を・・・・・・・・・・・・誰も地主に逆らえなくて、逆らった若い男は大きな木にぶら下げられて骨になって自然と落ちるまで地面と接することが出来なかった。地主は荒くれ男達を率いて、地代の払えなくなった者を売り払い始める。私達親子も・・・・・・・・・・・・・・この語りに母のことは言うべきではなかった?」
奴隷公は
「いや、傷跡娘よ。お前の生い立ちに必要と思えることをお前の言葉で語ればよい。此処はお前の語る物語だ。」
西方平原国の大使は
「どこの国だろう?人族連合において債務奴隷を認めていないはずだが・・・・・・・・・」
それに応えて何処かの大使。
「それ以前に、農奴であっても小作人であっても食えないほどの地代だの要求をしてはならないと決められているはず。」
「後で本国に問い合わせてみよう、該当する場所があれば問い詰めるのも悪くない。」
「農奴を売り払うのは禁止されているはずだが・・・・・・・・・・」
そこで戻ってくる孤児弟と末王女。
座を一時中座して、飲み物が配られる。
「傷跡娘、飲み物は足りた?」
「有難う御座います、王女様。」
傷跡娘は末王女の聞かせたくない部分を飲み物を取りに行かせる口実で避ける。
奴隷公の入れ知恵か?
しかし、此処までの話で苦いものを噛み潰したような顔をしている聖徒王国の随行武官。
綺麗な世界で過ごしてきたから見知ったものが苦難を得て涙する過去を過ごした事を受け入れがたいのだろう・・・・・・・・・・・・・・・
「随行武官さん、飲み物を取ってきてもらえます?」
「いや、どういう顔をして良いのか判らないが飲み物を取ってくるほどではないだろう。続きを・・・・・・・・・」
随行武官に軽口を叩く傷跡娘に続きを促す、そして語りは続く。
「私達も売られる、それが現実になったとき目の前が暗くなった。この郷で生まれて育って、誰かと一緒になって子供を生んで朽ちていくのを当たり前のように受け入れていた私は世界が崩れていくのを感じた。母も地主の言いなりになってきたのはそれを防ぐ意味だったのに・・・・・・・・・・・・・・・・・
目的が果たせず、親子別れ別れになって売られていくことに気がつくと心身ともに壊れてしまった。」
そして、傷跡娘は前髪をかきあげるとおでこを見せる。
「私は綺麗な顔になった、傷跡がなくなったと言われてそれを否定していなかったけど黙っていたことがある。」
おでこを見ると引きつったような切り傷とそこに焼き付けた火傷が見える。
息を呑む一同。
「私は傷を敢えて全部治さなかった。私が過ごした過去を忘れたくなかったし、この傷跡と共に私は過ごしたのだから・・・・・・・・・・・・・・そして、母が呉れた最後の贈り物を無碍にしたくなかったから・・・・・・・・・・・・」
傷跡娘は頭を下げ
「ごめんなさい、私は優しくも綺麗でもない・・・・・・・・・・・・・・皆からお金を貰いながらも、目的を果たさず・・・・・・・・・・・・・」
雷竜の長が言う。
「小さな娘。お前は優しく愛らしい。今の姿は十分に目的を果たしている。」
まぜこぜ種族の公爵は言う。
「その思いは笑うことも否定する事も我が認めない。」
北の民の女性が言う。
「傷跡娘、お前は顔に傷がある時だって良い娘だ。うちの極北戦士だって求愛するくらいの器量よしだ。」
義母となる予定の婦人は黙って抱きしめる。
そして傷跡娘を見て
「このくらいならば問題ないわ。髪をたらしても目立たないし、額飾りをして隠すのもありだわ。」
街娼の守り手たる女神官が、
「十分化粧で誤魔化せますわ。後で御出でなさいな。」
と、許容する。
補佐見習は黙って頷く。
皆に受け入れられて恥ずかしくなったのか赤い顔をした傷跡娘が話を続ける。
「話を続ける。
地主に売られることを告げられた夜。母は私に綺麗な顔をしていると色狂いの餌食になってしまうと焼けた炭を私の顔に押し付けていった。そして包丁で浅く浅く傷をつけていく。私は痛くて泣いた。でも母は泣きながらごめんねと謝りながら・・・・・・・・・・・・・・・手を止めなかった・・・・・・・・・・・」
傷跡娘は顔を撫でながら話を続ける。
孤児姉に孤児娘達はそのくだりを聞いて私にしがみ付き怯えた顔で私を見る。
可愛い娘達を落ち着かせるべく、頭を撫でてやる。
それでも泣きそうな顔をして傷跡娘の話に耳を傾ける。
末王女も父王にしがみ付き、不安げな顔で話を聞く孤児弟には街娼達が身を寄せて落ち着かせようとしている。
奴隷公は厳しい顔をして睨み付けるかのように話を聞き逃すまいとしているし、騎馬公は握り締めた拳から血を流している。
奴隷戦士に人外戦士達は文句をつける先を見つけるかのごとくきょろきょろしているし、騎馬戦士に極北戦士は手元に武具があれば神々に喧嘩を売りつけ地獄の門を押し破らんかの如くに目を血走らせている。
その様子に怯えている聖徒王国の随行員に聖騎士は殴りつけて話を聞けと黙らせる。
傷跡娘の話は続く、
「私の顔に傷をつけ終わった母は力尽きたように眠った。眠る前に『この傷跡をも受け入れてくれる誰かに出会えると良いね』と言ったのが最後の言葉だった。多分、長い苦労で体が限界だったのだと思う。そうして目覚めることがなかった。前日まで、何事もないように振舞っていたんだけど私にも疲れているんだなというのが見てわかった。でも、でも・・・・・・・・・・・・・・・・」
傷跡娘は目を潤ませる。
「夜が明けて、地主が見たのは顔中血だらけにした私と抜け殻の母。売り物になりそうなのが駄目になって怒り狂った地主は母を蹴り飛ばし、私を殴りつけた。そうして、痛めつけられた私はボロボロの姿のままで奴隷商人に叩き売られた。傷がなかったら数倍にもなったのにと奴隷商人が言っていたが、体中に痛みが襲う中私は母が最後に呉れた贈り物を感謝していた。何も持つことが出来なかった母が呉れた贈り物。傷跡で私は守られた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
すすり泣く街娼達、王宮の下働きの女性達も同じ女の身で顔に傷を得なければ守れない境遇に憤りを隠せないである。他の女性陣もほぼ同様で王妃は何かを思案するかのように考えを巡らせているし、聖域守護辺境伯前婦人は目を吊り上げて叫びたいのを堪えている。大使夫人は握り拳に魔力をこめているし公爵令嬢は腰に手を当て愛剣を抜き出そうとしているのだが所持していないのに気がついて剣を探し始める。傷跡娘を守ろうと寮母に小売婦人が傷跡娘の傍により、農園公夫人は夫と商会公に何か耳打ちしている。庭園公は涙を隠さず、全てを受け入れるかのごとく話を促す。
「・・・・・・・・・・・・・売られた私は何日過ぎたか判らない。薄暗い部屋の中で光差さぬ馬車の中で詰め込めるだけ詰め込まれて死んだらその場で捨てれていった者たちを見ながら私も何時かこうなるのかなと思いながら過ごしていた。ある日、外の世界で騒ぎが起きて光の下に連れ出された。そこに居たのは厳つい男達で、公爵様の私兵達だと知ったのは大分後のことだった。私の姿を見た男達は慌てて私と他の囚われになった者達をつれて綺麗な建物に連れ込んでいった。そこで、私は手当てをされる。」
「・・・・・・・・・・・・あの時は酷かったわ。慰み者として拷問されたのかと思うほどの傷を負って生きているのが不思議だったもの。」
「俺も、あの時は傷跡娘を冥界神殿の手に委ねる羽目になるのかと思ったぞ。」
「顔中傷だらけで手足も曲がっていて、生かしているのがかわいそうになったくらいだもの。」
「顔面は切り傷、火傷。生命に異状はないが王都の療養神殿では治療不可、手足の骨折に打撲は手当てもされてないから治療が難しい。何よりも栄養失調と怪我から来る衰弱が酷かった。」
神に仕える者達はあの時の様子を思い返して言う。
「綺麗な建物、そこは性愛神殿だったのを知ったのは後の事。私は傷薬を塗られて、多くの人達が輪になって祈りを捧げてくれていた。祈りの歌が流れるたびに体が楽になるのを感じた。多くの人に命を分け与えられて私は生かされた。その中に補佐見習、貴方が居たのを私は知っている。賢者様も倒れるまで祈りを捧げてくれたのを私は見た。ありがとう、この場になってやっと言える。」
「なに、私のは王家に対する嫌がらせだ。礼を言うほどのものではない。」
偽悪を嘯く私に、顔を背ける補佐見習。
「ふん、母さんのついでだ。目の前で女の子が死んだら目覚めが悪いからな。それに女神官様にお願いされたからだ、命の焔を燈すのを手伝ってと・・・・・・・・・・・・」
「まぁまぁ、息子。かっこつけちゃって。」
小売婦人、そこはからかう所じゃない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・命の焔が灯った私は怪我の手当てをされ、顔の傷は匙を投げられて動けるようになったら孤児院に迎え入れられた。そこで賢者様を初めとする大人達にいろいろな事を教わった。文字に計算・・・・・・・・・世界の事、歴史の事・・・・・・・・・・・・私達のようなものが居る理由。私は流されるままに学び、如何して選ばれたのか判らないけど官僚の手伝いをすることとなる。
あとは、ここにいる皆が知るように私の顔を官僚見習の貴族に馬鹿にされてそれに憤った補佐見習が殴りかかり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
補佐見習は顔が赤い。
「そこからはさらっと流してくれ。恥ずかしい。」
「・・・・・・・・・・・・・・そうする。私を庇ってくれた補佐見習に惚れた。母の最後に言った言葉ではなくて、私を見てくれていると感じたから。官僚の補佐としての日々が過ぎて、知り合いが増えていった。この日々は幸せだった。でも母も父もいない・・・・・・・・・・・そこは寂しい。それでも、孤児院の皆が居て孤児娘達が居て孤児姉弟が居て賢者様が居て・・・・・・・・・・補佐見習が居てくれている。こんな私が満ちていて良いのだろうか?それを噛み締めながら日々を過ごして、傷跡を消す術を賢者様が見つけてその費えを補佐見習が稼いでくれた。私なんかの為に・・・・・・・・・・・・」
「馬鹿言うな。お前だから俺は金を稼いだんだ。」
「えっ!それって・・・・・・・・・・・・・」
「ふんっ!」
赤い顔をしてそっぽ向く補佐見習。
微笑ましいものを見るような甘いものを食べ過ぎたような顔をする皆。
ううっ!此処で言いたくなるな。誰か冷気魔法を・・・・・・・・・・と
言わないけど。
「補佐見習が稼いでくれたお金で傷跡を消して、補佐見習と婚約をして今ここにいる。私は補佐見習に感謝をして愛している。私は補佐見習を手に入れるために大人になるべく東方建国公の奴隷戦士の試練を受けてこの語りをする。これが私の生まれてからの軌跡。輝石の様な煌きをもった人たちに助けられて奇跡の様な今がある。鬼籍にはいった者たちの積み重ねの上、私は一歩踏み出す。これを持って語りを終える。」
厳しい顔つきの奴隷公は一転、破顔し
「よく語ってくれた。我等奴隷の試練は自分の過去を語り痛みを追憶して乗り越えることにある。遥か昔、祖王に従った我等は囚われの日々を語り合い苦い思い出を忘れず幸いの道を進もうと誓い合ったのが始まりだ。ここ数年奴隷上がりのものがいないから語りも意味がないと思われていたが、お前の語りで語って先に進むものがいるということを示してくれた。感謝する。苦難の道から先に進めるものがいるということだけで我等が剣を振るい盾となる意味がある。」
奴隷公は立ち上がり場の者に怒鳴りかける。
「これをもって傷跡娘の成人の儀を終えたと我等奴隷戦士達は認める。場に立会いし皆の衆!不服あらば我が剣を持ってお答えいたそう!」
その声を聞くや否や奴隷戦士達が立ち上がり
「我等の妹分として受け入れよう!文句のあるものはあるか?」
とすごむ。
まぁ、誰も否とは言わぬのだが・・・・・・・・・・・
補佐見習が立ち上がり、傷跡娘を抱きしめて優しく髪を撫でる。
この語りで一番辛い思いをしたのは傷跡娘なのだからそれを労わるかのように・・・・・・・・・・・・
馬鹿な子達だ、大人しく私の庇護下にいればよいものを飛び立とうとする。
それが望みだといえばそうなのだが、少し急ぎすぎだろう。
願わくば、彼等の道に幸いがありますように・・・・・・・・・・・・
では今宵は是まで。