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嘘吐娘と奴隷屋敷

傷跡娘の成人の儀を行う日が近づく。

東方建国公家の成人儀礼、何を行うのであろうか。

多分由来ともなった奴隷に関することなのであろうが、一度は奴隷として捕らわれの身であった彼女がそれを乗り切れるか師として養父の一人として心配である。


「御主人様、奴隷公様から招待状です。」


なんだろう?中身を確認してみると傷跡娘の成人儀式をするからこられたしとある。

私を頭として孤児姉や孤児娘達にも参加を促すように記されている。

祝いでもするのだろう、それは良い事だ。

あの子も幸いとはいえぬ生い立ちだったから皆に祝福されて道を行けるならば幸いである。


「孤児姉、傷跡娘の成人儀式の招待状だ。孤児娘達も集めて準備しておきなさい。」

「はい、御主人様。でも、成人儀式とは言いますが何をするのでしょうか?」

「私も判らぬ。六大建国公家の成人儀式は一種独特だからな、昔話でも聞かされるのだろう。」

「なれば私達の来る意味は?」

「祝いの席に親しいものを呼ぶのだろう。」


そこで扉を叩き声を挙げる者がいる。

「王室顧問、いるかい!」


寮母である。

私は扉をあけ寮母を招き入れると彼女は招待状を片手に話を始める。

「王室顧問、お前さんも傷跡娘の招待状を貰ったんだろう。」

「ああ、それが如何した?」

「多分奴隷公の儀式はきついだろうから覚悟できているんかい?」

「きついって拷問でもされるのか?」

「寮母様、何があるのでしょうか?」

「お前達は知らなかったのか、王室顧問辺りならば知っているかと思っていたんだがね。道理で傷跡娘を奴隷公の養女にするのを反対しなかったわけだ・・・・・・・・」


寮母は傷跡娘を案ずるかのように

「多分、受ける方も辛いけど見ているほうも辛いから覚悟しておくんだね。孤児娘達にはわたしのほうから言い含めておくから本当に覚悟を決めて参加するんだね。」


寮母は言いたい事を言うと部屋を去っていった。

「御主人様、何があるのでしょうか?」


孤児姉の不安をぬぐう事がができない私であった。










当日、東方建国公屋敷に向かう私達。

残酷な試練とは何かと悩んでしまう。

「賢者様、傷跡娘大丈夫ですかね?」

「多分見ているだけしか出来ないが彼女を信じるしかあるまい。」


王都より馬車で揺れれること一刻、王都の東にある練兵場の一角にその屋敷がある。

国軍もこの練兵場を使うのだが公爵領になっている。常に軍靴で踏み荒らされているのか踏みしめられて固められた土にまばらに生える草。森やら草原やら畑で実りある景色がある中である意味異様であった。


「御主人様、王都近郊にもこんな荒れた場所があるのですね。」

「ああ、戦火が耐えない時代どこもこのような光景だったと伝えられている。その時から幾星霜も重ねて王都の周りも緑が戻ったそうだ。私も現場を見たわけではないから本当かどうか知らぬがな。」


無骨を屋敷にしたらこのようになるという見本が目の前にある。

我等一同は屋敷の門番に来訪の意を告げ案内されるままに進む。



案内された広間には軍装に腰布を巻いた奴隷公夫妻と令嬢、傷跡娘が出迎えてくれる。

椅子も卓もない、地べたに座る形になるのだろう・・・・・・・・・・・

ただガランとした部屋に続々と人々が入ってくる。


寮母と寮にいる女性陣が数人。

聖域守護辺境伯家(じっか)の面々。

宰相閣下に法務副長、官僚達から数名。本当は全員で来たかったらしいのだが仕事の都合でこれなかったらしい。

極北連合大使夫妻に極北戦士達、霜降国大使、酒国姫大使・・・・・・・他各国大使達数名

聖騎士、雷竜公、私も知らない人外達に聖徒王国の随行武官達。

六大建国公、農園公夫人、南方香料地帯子爵、西方国境地帯伯、他領地貴族数名。

性愛神殿の女神官他数名、療養神殿の癒し手、王国神殿の神殿長、文芸神殿の紡ぎ手、酒精神殿の酔っ払い

王宮の侍女や下働きの女性達数名・・・・・・・・・・

市場の顔役達に王都の職人達、娼婦達や孤児院の女衆の姿も見える。

国王夫妻に末王女・・・・・・・・・・

騎馬戦士達や荒野の民の語り部、天幕の女衆・・・・・・・ 奴隷戦士達や人外公の配下も数名見える。

商会公の隊商の長や農園公の所の女衆、後見知らぬ者達の姿も見受けられる。

そして、私達主従と孤児弟、孤児娘達、補佐見習親子が揃っている。


しかしこの面子まとまりがないというか、どういう基準で集められたのだろう?

場にいる者達は一同不振と不安を隠し切れないでいる。


集った順に飲み物を振舞われ、其々知り合い同志で固まっている。

多分貴族連中は経験があるのだろう、なんともいえない表情で傷跡娘を見て補佐見習を見る。

市井の者達は何があるのだろうかとお互いにヒソヒソ話をしている。


場に飲み物が行き渡ったのを確認した奴隷公は一礼をして場の面々に語りかける。


「この場に集っていただいた方々にお礼申し上げる。我が養女(むすめ)傷跡娘の為にこの場に参列してくださった事を。傷跡娘がこの地にて多くの縁を結び、心開いた者達が沢山いることをわしは喜ばしく思う。この場に招かれたという事は彼女が信頼しているという証である。身分、立場が其々おありだろうが如何かこの場においては彼女の顔を立てて儀式の立会いを勤めていただきたいと願う。」


ここで言葉を区切り楽にして欲しいと床に腰を下ろす奴隷公。

持成し主に倣い床に腰を落とす面々。

腰を下ろしたのを確認した公爵夫人は

「皆々様には我が養女(むすめ)傷跡娘の儀式を見届けていただきたいと思います。ご存知の方があるかと思いますが、当家においてこの儀式は祖王に従いし初代から身を落として涙する者達の悲しみと悔しさとを吐き出す場であります。今回は傷跡娘が己の過去を語り、過去を乗り越えて未来へと進むべき誓いを立てる場所でもあります。ここ暫く、当家において騙る事も聞く事も辛いという者は居りませんでしたが彼女の生い立ちからして語るのも聞くのも辛いでしょうが如何か見届けてやってくださいませ。この場に説明もなく御呼びたてしまったことは真に申し訳御座いませんでした。覚悟のない方がありましたら申し訳御座いませんが別室にてお待ちいただけますでしょうか?」


そこで席を立つ補佐見習。

「俺は今いるお前がお前だと思っている。お前が辛いと思うならば聞く心算はないしどんな過去を黙っていたとしても受け入れる。」

「補佐見習・・・・・・・・・貴方にこそ聞いて欲しい、傷跡娘の真実(ほんとうのわたし)を・・・・・・・」

「息子・・・・・・・・・・・」


小売婦人(ははおや)に肩を掴まれて座らされる補佐見習。

傷跡娘の言葉と母親に押し止められて素直に腰を下ろす。


「本当に言いたくないことは言わなくて良いからな。」

捨て台詞のように一言を発した後は黙って顔を背ける。少々耳が赤いのは彼の純情さゆえか・・・・・・


「他に見届けたくないという者はあるか?」

公爵の問いかけに誰ものる者はいなかった。


「では、始めて貰おうか・・・・・・・・・・・・ 我等捕らわれの一族に迎えられた新しい家族の物語を・・・・・・・・・・」



「はい・・・・・・・・・・・・・・・ あたし自身語るのに慣れていないので上手く言えないけど・・・・・・・・・・・」


そう一言枕においてから傷跡娘の語り(試練)が始まる。

少々短いですが今回は是まで。

しかし、前話が投稿されてその日に2200アクセスとは・・・・・・・・・・・

ちょっと吃驚。


多分年末年始は稼ぎ時で忙しいので滞る予定です。

嗚呼、酒が飲みたい。

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