嘘吐娘と顔役婦人
「賢者様!孤児姉とはよくても私達は駄目なんですか?」
「孤児姉ずるーい!」「陛下の癖に気がきかない!」
「仕方ないじゃない陛下だし。」「そりゃそうか。」
私に詰め寄る孤児娘達、その様子を苦笑して見ている孤児姉。
まるで上の姉が独り占めしているおもちゃを妹達が欲しがっている図に見えるな。
って言うか私はおもちゃか!
今いる場所は王宮の食堂、仕事が一段落して食事休憩を取っているときの会話である。
周りも子供達の他愛もない姉妹喧嘩としてみているけど時折、もげろとか、地獄に落ちろとか言う声が聞こえるのは気のせいだろう。
「御主人様、妹分達は若い下級貴族達とか下働きの男性陣に結構懸想されているみたいですから。」
「まぁ、私の娘達は仕事も出来て器量よしばかりだから人気があるのは否定しないぞ。嫁に欲しいとか言ってくる貴族連中もいるからな。」
こっちまで悪い虫がいるのか、注意せねば・・・・・・・・・・
「別に悪い気はしないんだけど、賢者様ほどの男はいないし・・・・・・」
「陛下が次王子様をあてがおうとするのは勘弁して欲しい。」「王宮には良い男がいない。」
そこで自分に指を指すのが何名かいたけど無視されている。哀れな・・・・・・・・・・・
そこは指差すところではなくて男を磨いて振り向かせるのになるところだぞ。
若いって無謀だな。
この若者のように俺様最高というのを異世界では中二病と称すて流行っていると聞いたことがあるが、ある種の自己顕示欲が引き起こす精神病の一種なのだろうか・・・・・・・・・暇があったら調べてみたいものだ。
調べるほどでもないと思うんだけど・・・・・・・・年齢とか関係なければ実例がそこらじゅうにあるんだし。(by療養神)
治療法は・・・・・・・・・・・
びゅん!(匙を投げる音)
ないわけだ。
やっと、やっと投げることが出来た!(by療養神)
療養神様、そこまでうれしさを表さなくても・・・・・・・・・
「賢者様!私達も貰ってくださいよ!」「孤児姉ちゃんだけだと持たないでしょ。」
「私達で養ってあげるから。」
「いいでしょ?」「けんじゃさまー」「私達も悪くないと思うんだけど・・・・・・・・・・」
「妹達!ご主人様が困っているでしょ!」
私の思索を断ち切るかのように声をかける孤児娘達に叱る孤児姉。
賑やかな事だ・・・・・・・・・・・
孤児姉と婚約をしようとも大して変わらない日常というものがそこにあるのだろう。
なんか怨嗟の感情がわきあがっている様だが、無いもの強請りをしている無粋者がいるのだろうか?
「王室顧問、いうべきではないと思うのだが少しばかり彼女達を抑えてもらえないかね?其処彼処で血の涙を流している若い衆を見ていると職場の精神衛生上宜しくないのだが。」
何故か料理長(王宮男爵位)に私が怒られた。騒ぎの元である娘達に注意すればよいものを・・・・・・・・
「保護者の責任です。」
ごもっとも・・・・・・・・・・
その後孤児娘達が陛下に直談判するのだが、それは笑い話としておこう。
そうだな、笑い話だ・・・・・・・・・そうだ、そうであって欲しい・・・・・・
妻妾あって、性愛神殿に通う暇がないなんて未来は・・・・・・・・・・
周りの妻帯者はようこそ仲間よという目で暖かい視線を送るのがとても・・・・・・・・・・・やるせない。
そんなことはさて置いて(私の精神衛生上的な意味合いで)・・・・・・・・・・・・食事も終わったし、補佐見習を見つけるとするか。
酒国の姫大使様の依頼をこなさないと・・・・・・・・
別にいつでも良いのだが忘れないうちにこなしておかないと、私の面子というものがあるからな。
貴族というものはまこと面倒くさい。
私に対する怨嗟の声だの生暖かい視線が満ち満ちている混沌とした食堂を後にするのであった。
官僚部屋から宰相府だの王室府を探してみても見つからない・・・・・・・・・・・
どこにいるのだろうかね?
ふむふむ、休日で母親の元に会いに行っている・・・・・・・・・・
市場に行ってみるか。
お前等も行くだろう。
「はい、御主人様。」「おつきあいしまーす。」「補佐見習と傷跡娘の逢引を邪魔するわけですね。」「仕事も飽きたし気分転換に悪くないですね。」
なんか、官僚部屋のほうから王弟殿下の声がした気がするけど気にしてはいけないのだろう。
「誰が毛の生えたタコダァァァァァァ!!」
地の文を読まないで欲しいものだ。それにあまり怒ると茹蛸になるぞ。
沸騰したお湯に塩加減は3%強、ややにがりの強い塩のほうが味が出る。茹で時間は120秒、これが美味しい茹蛸の調理時間だ。ちなみに王弟殿下は食えないぞ。(by作者)
作者、それは活物で作るときのものだろう。普通に売られているものはもっと時間かけているぞ。保存とかの面から・・・・・・・・・・・・(by漁労神)
蛸つながりで、蛸は茹でるより蒸すのも悪くないぞ。(by厨房神)
「この邪神共めぇぇぇっぇ!!」
王弟殿下は地の文のみならず神々の会話も読み取る稀有な能力を持っているのだろうか?
能力の無駄遣いだな。
移動する事一時、我等一同は市場に着くのであった。
補佐見習の姿を見たときには、既に姫大使の姿があったのだった。
「ああ、王室顧問。貴方に依頼した件だけど市場で飲んでいたら酒盛男爵親子の姿が見えたからそのまま話を聞いているわ。」
私が話を通す前に自力で段取りを取ってしまいましたか。
仕方ないですか、この酔っ払い大使は酒盛市場が縄張りみたいなものだし出会うよな。
「旦那ァ・・・・・・・・・じゃなくて、王室顧問卿この姫様俺を発案者だとか持ち上げているけど勘違い解いて貰えない?」
「息子、お前の誤算かもしれないけど評価してくれる者をないがしろにするのは良くない。」
「かーちゃん、俺はもっと弁当とか広げるのを考えていたのに・・・・・・・・・・この酔っ払い達ときたら・・・・・・・・・乱暴狼藉はしないのが救いだけど朝から晩まで酒盛をしているし・・・・・・・・国家機密とか平然とわめいているし、王妃様の年齢を公表して被害拡大しているし、俺達の事をネタにしてうざいし・・・・・・・・・・」
補佐見習、一番最後のが気に入らないだけだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見な、私達が幸せすぎるのを嫉妬しているだけ。ちょっと【傷跡娘の物語】が認知されすぎ。少し恥ずかしい・・・・・・・・・・皆冷やかしすぎ。」
多分それが原因でこの傷跡娘夫婦が構われてしまうのだろうな。
難儀な事だ。しばらく王都から離すか?
「賢者様、姫大使様が酒盛市場のことをお義母さんに聞いているけど酒国には酒盛市場がないの?」
少し愚痴って気がすんだのか傷跡娘は質問してくる。
「市場で勝手に酒を飲んでいるらしいけど、道端だし邪魔臭いのだろうな。だから酒盛部分を作って青空酒場に酔っ払い達を押し込んで隔離したいんじゃないのか?」
「こらこら王室顧問、我が国の愛するべき酔いどれ達をそのように言わないで貰おうか!彼らが酒を飲んでいるから我が国の税収があがるのだから・・・・・・・・・・」
「それは失礼いたしました。」
そうだった、酒国の税収の二割は酒税だったっけ・・・・・・・・・・どんだけ飲んでいるのか・・・・・・・
それ以前にどれだけ税金かけているのか疑問だが・・・・・・・
といいつつ、酒盛市場での酔っ払い達が落としていく金は増加傾向にあるけど、其処まで割合としては多くないはず・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よぉ!王室顧問じゃないか!こっちで飲まないか!」
「久方ぶりの市場での酒は旨いねぇ・・・・・・・・・・」
「孤児娘達じゃないか、こっち来て酌してよ!」
「王室顧問殿、我等の卓に来ないか?いま、王都東部地区伯の果実酒の口開けをしているんだが・・・・・・・・・・・」
うん、酒盛の単価が高いのは否定しない。
国内外問わずに貴族階級やそれに準ずる者達が飲んでいれば、金は落ちていくよなぁ・・・・・・
私が呆れている間に姫大使と小売婦人が酒盛市場部分の運営に対して話をしている。
孤児姉に孤児娘達は端切れ屋で固まっているし、傷跡娘も連行されている・・・・・・・・・
極北戦士は奴隷戦士達と酒合戦しているし、それを囃したてているのは魔王国の連中に騎馬の民だし・・・・・・・・・・
大使に官僚達は酒盛しているし・・・・・・・・・・其処に乱入する、西方平原国の某侯爵に霜降国の子爵様・・・・・・・・・・
って、言うか官僚共、逃亡中なのになんて剛毅な・・・・・・・・・・
馬鹿ですか!つける薬はないのですか!普通遠くに逃げるでしょう!
びゅん!(匙を投げる音)
「・・・・・・・・・・・・・・・・是は俺の手柄にされてもなァ・・・・・・・・・・・・」
補佐見習のぼやきは誰も応えるものがいなかった。
気持ちは判るが、諦めろ・・・・・・・・・・
私も酒を嗜むがこの光景にはあきれ返っているのだ。