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孤児諸々と蝦蟇蛙

昨夜は【わかち】の夜で深酒をしてしまった。

酔いと時間を【わかち】あう飲み友達がいることは幸いな事だ。

一人は細君や子供達と時間を【わかち】あいたいと一杯だけ引っ掛けて帰っていったが・・・・・・・・・・・


是は独り身と家族持ちの差か・・・・・・・・早い所嫁さん見つけよう。


それはさて置き、酒盛市場にて王都南部地区伯(がまがえる)が市場にて昼餉とも酒盛ともつかない食事をしている。

その辺は別に珍しい事ではない。伯爵(がまがえる)も飯を食らうし酒盛市場は貴賎を問わず飲み食いする所、建国公達が揃って酒盛していた事もあったし・・・・・・・

伯爵(がまがえる)が供を連れて飯を食らっているくらいなら、珍しいが理解できるのだが同行者が不思議な面々だった・・・・・・・

王城に詰めている王宮雀(やくたたず)に貴腐人達・・・・・・・・・・・この辺だったらつるんで飲むこともあるだろう・・・・・・・・もてたいもてたいとこっそりとしている心算で騒いでいるのを見たことがあるし・・・・・・・・・

私兵団・・・・・・・・・・・緒家の私兵達が一歩離れたところで飲み食いしている。

護衛の心算だろうか?散々飲み食いして潰れているのもいる。役に立たないだろう。


私兵達からは

「我等が愛すべき蝦蟇蛙に乾杯!」「貴人聖域法(アジール)の担い手に乾杯!」

等とがなり声が上がる。それにあわせてガチャンと杯を壊さんばかりの杯をぶつける音がする。

嗚呼、杯を重ねて奏でる音はもっと繊細でなければならないんだ!そんなぶつけ合いなんて美しくない・・・・・・・・・・・


しかし、なんか違和感が・・・・・・・・・・・なんだろう?


伯爵(がまがえる)の両隣と後ろに女性?

どう見ても、性愛神殿や花街の玄人筋の女性ではなく、生活の労苦は見えたり多少年喰っていたりするが素人筋の女性達だ。金にあかせたりして無体しているのかと思いきや彼女達の目からは純粋な感謝と思慕の視線が・・・・・・・・


彼女達は伯爵(がまがえる)に酌をしたり甲斐甲斐しく世話をしている。

まるで好色外道な王室顧問が孤児院の娘達にしていることのようだ。

あの男も、地位と権力を笠に着て年端もいかない娘さんを己のものとして扱っているからな・・・・・・・・なんて、うらやまし・・・・・・・・ゲフンゲフン、けしからん事をしているのだ。俺だって・・・・・・・・

いかんいかん、話が脱線した。

伯爵(がまがえる)に従う女性達は口口に礼を言っているらしいのだが取り合わず、鷹揚に構えて彼女達に礼はいらんといっているようだ。

そんな伯爵(がまがえる)に彼女達は臣従の礼をとっている。

更に彼女達の家族と覚える貧しき身なりをした人々が群れ集って臣従の礼をとっている。老若男女、病苦におかされた身を押してきている者がいるし怪我している男もいる。子供達も尊敬の念を隠すことなく大人達の真似をしている。


何なんだ是は?


伯爵(がまがえる)は動揺を隠すかのように手を挙げると臣従の礼を取っていた者達は立ち上がり詰め寄る。あの王都南部地区伯爵(どくがえる)には人々からの賞賛を受けるなんてことは生まれて初めてだろうから吃驚しているのだろう。

いつも厚顔不遜な伯爵(エロガエル)が押されているのを見るとざまあみろとも思えたりする。でも年頃の娘さんが抱きついてくるのは許せん!

いくら生活の労苦が隠せない平民の娘さんだとはいえ磨けば光る玉と見た。

あんな可愛い子を・・・・・・・・うらやまし・・・・・・・もとい!けしからん!

潰れ蝦蟇蛙の不細工面の分際で!


ああ、俺も可愛い彼女が欲しい。



王都勤務衛士隊分隊長の独白。


如何して私は仕事をさせられるのだろう。

って、言うか官僚程度の扱いと言うのは宜しくないと思うのだが如何なのだろうか?


「ほら、法務官!もとい王室顧問!きりきり働け!」

「って、言うか。王妃様、何ノリノリで鞭を構えているんですか?」

「いやぁ、是も楽しそうかなと・・・・・・・・・・」


私は近衛兵を呼ぶと王妃様を案内してもらう。

行く先?勿論、双子山のそびえる執務室だよ。

本人は双子丘がいい所だろうけど・・・・・・・・・・・


「王室顧問?」

「王妃様、女王様ごっこをするのは構いませんが自らの執務を蔑ろにしないでくださいね。」


ぎくっ!といった擬音が聞こえるくらいに動揺した王妃を近衛に託した後、私はこの山を崩しに掛かる。

って、言うか私の仕事ではないのだが・・・・・・・・・・・

この件に関しては如何してくれようか・・・・・・・・・・・・


「王室顧問、話に聞いたのだが官僚並の扱いをされた孤児達の為に立ち上がったと言うのは・・・・・・」

「本当だ。」

「ならば、俺たちの待遇についても一言・・・・・・」

「勤務中に酒を飲みながら仕事をしている官僚達に手助けは出来ない・・・・・・・・・・・・」

「食事とるくらいの時間をくれ!」「4日ほど監禁されているんだが・・・・・・・」

「酒を・・・・・・・酒を・・・・・・・・・酒がなければ仕事にならない・・・・・・・・・・・」

「ううっ!おさけ・・・・・・・・・・・・・・・・」


えっと、官僚達に待遇改善というよりは健康診断とか治療とか・・・・・・・・・・・

必要だと思うのだが・・・・・・・・・・


びゅん(匙投げる音)


手遅れですよねぇ・・・・・療養神様。


あたりまえだ、今私は蝦蟇蛙・・・・・・・・・・もとい、王都南方地区伯の運び込んだ者たちを面倒見るので忙しいのだ。好き好んで酒精中毒の駄目人間共の面倒まで見なくてはいけないんだ!(by療養神)



確かに・・・・・・・・・・・

そうしている間にも官僚達が・・・・・・・・・・

「我等の待遇が酷いという事は理解していたがこれほどだったとは・・・・・・・・・・・」

「王室め!」

「やつらはサボっているんだ!吊るせ吊るせ!」

「断固抗議しないと!酒を寄越せ!酒盛する時間を寄越せ!と」


「「「「「おおっ!」」」」」


官僚達は国王執務室に向かって突貫して行った。

時折、ばこっ!とかべきっ!などといった打撃音が聞こえるが気のせいだろう。


まさか、王室も官僚達を潰して自らの首を〆る羽目になるようなことはしないだろう。








数刻後、仕事の山・・・・・・・・・・・・

かりかりかりかり・・・・・・・・・・・・

如何してこうなった。


「御主人様、お茶をどうぞ。」

「済まないねぇ・・・・・・孤児姉、お前がいるから助かるよ。」

孤児姉の頭をなでてやるとくすぐったそうに受け入れてくれる。

いつもどおりなのだが愛い奴よ。


「所で賢者様、官僚さんたちは?」

孤児娘の質問は至極当然だ。私は窓の外を顎で示す。


ぷらーん、ぷらーん・・・・・・・・・・・・・

吊るされている官僚達がいる・・・・・・・・・・・・のに気がついたようだ。

「えっと、賢者様」

「王室に文句を言いに行ったら・・・・・・・・・・返り討ちに・・・・・・・」

「戦闘力はないからねぇ・・・・」「って、言うかこの処理誰が?」「・・・・・・・・・・・私達?」


ご名答、って、言うか私も巻き込まれるのか・・・・・・・・・・・・・

私達だけでは面倒だぞ!

「御主人様、弟子の貴族子弟がいると思うのですが。」

「でもあのおにいちゃん、役に立たないよ。」

「でも部下の方々は・・・・・・・・」「なるほど・・・・・・・」


ふふふっ!ここにあるのは偽造法務官印と宰相印・・・・・・・・・陛下の玉璽も・・・・・・・・・・

「御主人様、普通に許可を得たほうが・・・・・・・」

「そうだな。そこの孤児、宰相閣下と陛下の許可貰ってきてくれ。」


「はーい!」

とてとてとてとて・・・・・・・・・・


私の用事を言いつけられた孤児は素直に駆け出していった。

可愛いものよ。


暫くして許可が下りたので近衛兵を伝令に彼等を呼びに行く。

って、いうかぶら下がっているのに酒を飲んでいるとか余裕だな官僚共。



「いやぁ、中々絶景だね。」「うむ、王都を見下ろしながらの酒というのもおつなものだ。」

「おーい、こっちにもくれ!」「高いぞ!」

「仕方ない・・・・・・・・・・・・・・つまみを提供しよう・・・・・・・・・」



ぶらーんぶらーん・・・・・・・・・・・

何処に酒だのを隠し持っていたのかが疑問だが。

そうして、仕事が増えるのであった。ついでだから孤児弟と同道者を。


ぶらーんぶらーん・・・・・・・・・・・・


官僚達は今日も(無駄に)元気です・・・・・・・・・・・・・







「で、宰相閣下・・・・・・是はどうするので?」

「ぶら下げても反省の色が見えないし・・・・・・・・・・・地下牢に入れても、牢番を買収したり独自の入手方法を用意しているらしく酒を・・・・・・・手に入れているから無意味だし・・・・・・・・・・」

「放逐はしませんよね?」

「勿論だとも、こんな危険物を世に放てるか!」

「それ以前に私のほうに仕事を回しませんよね。勿論孤児達にもですよ。」

「・・・・・・・・・・・・う、うむ。留意しよう。」


視線をそらす宰相閣下。仕事させる気満々だったな。


かりかりかりかりかりかりかり・・・・・・・・・・・


「賢者様、僕達そろそろおなか空いたんだけど。」「あきたー!」

「休みの予定だったのに!」「如何してあたしまで・・・・・・・・・・」

「王女様は国のお金で食わせてもらっているからいいでしょう。」

「ぜんぜん仕事が終わらないよぉ・・・・・・・・・・・」


孤児達は仕事をさせられている。なんか紛れ込んでいるのもいるけど気にしない・・・・・・・・・・・


「私は末王女だぞぉ!仕事を押し付けるなぁ!」

私も宰相閣下も視線をそらすのだった・・・・・・・・・



「くそぉ!大人なんて汚いんだ・・・・・・・」


うむ、大人は汚さも受け入れているもんだよ・・・・・って、私も被害者だ!


なんか、最近私のことを蔑ろにされている気がする。孤児達だの傷跡娘だの・・・・・・・・あろう事か王宮侍女100人に聞きました【抱かれたくない貴族ベストテン】に選ばれた王都南部地区伯に前書きで活躍するのか知りたい・・・・・・・・・・・


そりゃ、伯は愛すべき馬鹿者だからだよ(by作者)

ああ、こんな腐れ道楽者と違ってね(by性愛神)

我が愛し子達の叫びを子供だからと無碍にしないだけで賞賛に値する。(by暗黒神)

あの姿形であっても大事なところは歪まずにいられるのは周りの者たちにも敬意に値するし、それよりも本人が道違うことがないということは一つの奇跡だろう。我は無力な神であるが、奴が誰かの幸いを求めるのであれば我が存在を賭けて力を貸そう。(by蟾蜍神)

誇りを取り戻したものを無碍にする心算はない。彼の者の幸いを求める叫びは応じることがなければ我としての意味がない。(by某王国地方担当地方神)








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