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孤児諸々とお礼参り

むかしむかし とある王国に貧しい孤児院がありました。

どれだけ貧しいかというとカビの生えたパンであってもご馳走で

道端に生えている草が生きていく糧という有様です。


そんな暮らしだから孤児院の子供達は常にお腹が空いていてちょっとしたことで死んでしまうのです。


そんなある日のこと、お腹をすかせた孤児達に幸運がありました。

それは春待祭りという行事で【わかち】という施しがあるのでした。


孤児達は自分達にも幸運があるのかもしれないと町を歩いていました。


町の人たちは汚い孤児達を見て施す気にもならないと近所の綺麗な子供達にお菓子をあげて孤児達には何もあげませんでした。


孤児達は仕方ないとあきらめてとぼとぼと歩いて帰り道につきました。


そんな中良い匂いがする家々の中で一人のおばあさんがうなだれている孤児達を見て可哀想に思い自分と家族の為のご馳走を孤児達に振舞ったのです。


孤児達は始めてみるご馳走におばあさんに感謝しながら食べつくしてしまいました。

孤児達は生まれて初めてのお腹いっぱいという感覚に喜びを感じながらおばあさんに感謝して帰りました。







おばあさんは一人お腹を減らして、孤児たちの笑顔によい事をしたと重い寝床に着くのです。

おばあさんの家族が帰ってきました。家には食べ物がありませんでした。

おばあさんが一人で食べたのかと家族皆しておばあさんをなじりました。

おばあさんは何も言い訳をせずにお前たちは飢えを【わかち】なさいと寝てしまいました。

家族は祭りの日にお腹を空かせるなんてとおばあさんを恨みに思いながら寝床に着きました。

その日からおばあさんは家族に嫌われてしまうのです。

でもおばあさんは本当に必要な子供に必要な食べ物を与えることができて幸いだと思っていました。




暫くしておばあさんが家族と仲違いした事を知った孤児達はおばあさんの恩に報いたいと思いました。

でも孤児達は自分たちが食べることにも事欠くほどの貧乏暮らし。貧乏神が逃げてしまうほどの無一文でした。


どうしたらおばあさんが幸せになれるのか孤児達は相談しました。

でも、子供である孤児達には方法が知りませんでした。

そこで孤児達は賢者様に知恵をもらいにいきました。


賢者様は裸で困っている人の相談には知恵を貸してくれるのです。

でも、賢者様は知恵を貸すに値するかどうかという事を気にする人で困っていても考えの足らない人には知恵を与えないのでした。


孤児達は考えました。考えは足りないけれど賢者様に仕えれば知恵を与えてくれるかもしれないと・・・・・・・

孤児達は賢者様の元に行って教えを請いました。

賢者様は教えを与えようとしませんでしたが孤児達は賢者様の身の回りを整えて裸でも快適に暮らせるようにしました。

賢者様は意地が悪い振りをして文字を知らないとだめだとか数字を覚えないとだめだとか貴族に負けない剣を覚えなさいとか色々無理難題を言いました。


でも、孤児達は初めてのご馳走を与えてくれたおばあさんが困っているのを許せなくて無理難題を歯を食いしばりながらこなしました。


無理難題をこなすうちに孤児達はいつしか賢者様の弟子として王様の偉い家来になったのです。

王様の偉い家来になった孤児達は王様がくれる御褒美をすべておばあさんの元におくるのでした。


おばあさんの家に届けられた褒美の宝物の山を見て家族はびっくりしました。

でも、おばあさんはその贈り物をすべて困っている人に配ってしまいました。


家族は褒美の宝の山を全部人にくれてしまったことを詰りました。

でもおばあさんは貧しさを【わかち】なさいと寝てしまいました。


孤児達はそれを聞いてさらに王様のために働いて褒美の宝を勝ち取って、おばあさんに差し出しました。

それでもおばあさんは困っている人に分けてしまいました。

家族はかんかんでおばあさんを家から追い出してしまいました。


孤児達はそんなおばあさんを見つけてお城で住まわせました。

そして自分達が得た宝物をすべておばあさんにあげたのでした。

お城に住んでいてもおばあさんは変わらず困っている人に宝物を分けてしまいました。


お城の王様は孤児たちが働いて御褒美に宝物をあげてもすぐになくしてしまうことに不思議に思っていました。

孤児達はとても偉くて国を大きくするのにとても役立つのにどうしてみすぼらしいのだろうと思っていました。

そこで王様は家来を使わせて孤児たちの様子を見に行かせました。


孤児達は宝物を大好きなおばあさんのところに送って自分たちは貧しい暮らしに満足していました。

おばあさんは宝物を困っている人に分けて自分は満足していました。

困っている人は助かったことに感謝をしておばあさんにお礼を言うのですが、おばあさんはならば困っている人を助けなさいと諭すだけでした。


困っていた人がさらに困っていた人を助けて国から可哀想は人がいなくなりました。


家来はこれに感激して王様に伝えました。

家来の話を聞いた王様は感激しながら孤児達を捕まえて話を聞きました。

おばあさんはやさしい人で彼女がくれたご飯で今の自分があると誇らしげに語りました。そしておばあさんが優しいから家族に追い出されている話を聞くと王様は兵隊を連れておばあさんの家族の元に話し合いに行きました。


王様が話をするとおばあさんの家族はびっくりをして、私たちが間違っていましたと涙を流しながら許しを請うのです。

王様は優しく、謝るならばおばあさんにだよと諭しました。


真実を知って心を入れ替えたおばあさんの家族はおばあさんに謝って家族みんなで仲良く暮らしたそうです。


おばあさんは長生きしました。

そして時が過ぎておばあさんが亡くなったとき、国を挙げて弔いの鐘が鳴ったそうです。

そして、おばあさんを惜しむ涙は川となって海のかさを上げました。

おばあさんを惜しむ人は列となった国の境まで届いたそうです。


孤児達はおばあさんのようになりたいとカビの生えたパンをご馳走といいながら困っている人のために働きました。


助けられた人はすべて立ち直ってさらに困っている人のために働きました。


王様はこれらの人が馬鹿を見ないように影から手を伸ばしました。


そうしてこの国は不幸な人がいない国となったのでした。


めでたしめでたし



童話 春待ち祭りのおばあさん より


なぜか知らないが孤児達は日ごろから世話になっているものたちに春待祭をきっかけにお例参りをしようとたくらんでる。

基本実害はないのだが中々にぎやかなことだ。


あーでもない、こーでもない・・・・・・・・・

「だから、衛士から情報を得れば良いだろ。やつらは日ごろから俺達の助力で犯人逮捕とかできているんだから。それ以前に賢者様から借りた金を踏み倒していたし・・・・・・そこをゆすれば・・」

「市場にいれば色々話が聞こえてくる。何人かは王都を離れているけど、普通に挨拶に来たといえば教えてくれると思うよ。」

「僕達も王宮の役人扱いだから普通に聞けば大丈夫かな?」


酒場の衆、なんかごめん・・・・・・・

「貴族の旦那、子供達に末恐ろしさを感じるんだが・・・・・・・・」

「心配するな、今回は純粋な感謝の意だし貴族の屋敷を一つ潰すとかはないから問題ない。」

「・・・・・・・・聞かなかったことにする。」


女給は頭を抱えて厨房に入っていった。


こりこり・・・・・・・干し野菜の煮物はいけるな。



「王室顧問様、俺達は蚊帳の外だけど良いのかい?」

「補佐見習、ほっとけ・・・・・・・実害はないし、子供達は世話になった人にお礼言いたいだけだろうしな。」

「・・・・・・・・・・・・・・そういえば、賢者様私達が成人扱いって如何いう事なの?」

「傷跡娘、昔の国王が守護聖域辺境伯家式の教育を修めた者は年齢身分問わず成人扱いだという王命を発していたんだ。さすがにお前らは兎も角孤児達(ちびども)だと成人扱いには早いと思うから撤回するように根回しするつもりだが宰相閣下が気づいてね・・・・・自由意志だとか言って囲い込みそうで怖い。」

「宰相くらいだったら畳鰯を食い尽くされれば泣きを見て諦めそうだけど、貴族緒家の連中が・・・・・・・・うるさそうだけど・・・・・・・・・」

「どっちにしろ、孤児達には成人扱いはまだ早いよな。」

「だな・・・・」




そして、そのまま孤児達は孤児院に帰り、我々は寮に戻る。

次の日

「王室顧問様、どうなっているんですか!」


孤児院を訪れた私に院長が開口一番疑問の声を発する。

孤児院に庭に物資の山。硬貨の袋を商人に渡す孤児の姿があった。


「なにやっているんだい?」

「賢者さまおはようございます。昨日話していたお礼参りの物資を用意してもらったの。」

「色々な人に世話になったから全てに恩返ししたいしね・・・・・・・・」

「運び手も用意できたよ。極北戦士だけど・・・」


行動がすばやい・・・・・・・・

「そりゃ、行動は早く正確にと官僚さん達に教わったし。」「行動始まってしまえば抑えられないから行動する前に押さえろともいわれたよね。」「おばーちゃんの驚く顔が見えるね。」

「明日にはもっと物資が届くから・・・・・・・・・」

「おにーちゃんたちのてつだいする。」「あたちもおれいいたい。」


わらわらわらわら・・・・・・・・・・


孤児院総出で始まっている。

「王室顧問、子供達の行動は軍事教練の見本だな。」

「麦秋老、貴方の仕込みですか?」

「まさか、基礎は教えたがここまで応用に走られるとは思わなかったぞ。」


「王室顧問様!なにがどうなっているんだか・・・・・・・・」

「院長、案ずるな。子供達はお礼を言いたいだけなんだから。」

「しかし、この物量とか・・・・・・・・お金はどうしているんですかね?」

「王宮勤めの子達が稼いだのと奴隷商人とかの褒賞があるだろう・・・・・・」




わいわいがやがや・・・・・・・・


そして当日。

その日の夜は王都はちょっとした騒ぎに包まれていた。


「おじちゃん、一昨年はありがとう。」

「坊主ども良いって事よ。」

「これ、お礼です。」

「きにすんな・・・・・・・・って、って・・・・・・・」

どかどかっ!


「おばちゃん、いつも助かります。」

「おれまぁ、立派になって。うちのクソガキにも見習わせたいわね。」

どすどすっ!

「えっ!」

「これはお礼です。」


「衛士さんいつもご苦労様です、これ差し入れです。」

「すまないねぇ・・・・」


「おばあちゃん、昨年はありがとうございました。」

「おやまぁ、ちっこいのがたくさん。どういたしまして。」

「これはお礼です。」

どすっどすっどすっどすっ!!

「あれあれ、まぁまぁ、気を使わなくても良いのに。」

「でもおばーちゃん家の分まで僕らにくれたじゃないの・・・・・・・」

「気にすることはないんだよ。【わかち】はそういうものなんだから。」

「ばあさんどうしたんだいって・・・・・・・・・うわぁ!」

「おばあちゃんにお礼を言いにきました。ここにおいてあるのがお礼の品です。」

「・・・・・・・・・・・・・・」




なんて言うか、重たいものを用意してない?

「王室顧問様、おいら達が用意したんは芋とか大根だからねぇ・・・・・・・・・・他にも乳酪とか・・・・・」

「なんて言うか食べ物で保存が利くものばかりだな。」

「下手な贈り物だと趣味とかが分かれるから。」

「その点だと悪くないな。」


家族の分の食べ物まで【わかち】をして肩身の狭い思いをしたおばーちゃんへの恩返しは成功したみたいだな。山積みとなった食べ物を見れば、そのときの食事代の数倍くらいは・・・・・・・

しっかし、凄いな・・・・・・・・この山。




そうしている間にも

「性愛神殿の神官様、孤児院より【わかち】にきました。」

「あれ、孤児院のちびどもじゃない。どうしたの?」

「性愛神殿で保護されている方々にも僕達の幸せを【わかち】あおうかと思いました。」

「・・・・・・・・沢山あるわね。」

「妹分も世話になりましたし・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・あの時は助けられなくてごめんね。」

「良いんですよ。悪いのはあの糞貴族ですし・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・しかし、良いの?」

「本当に良いの?」

「性愛神殿も手弁当で今もがんばっているのに王室からの手当てが少ないじゃないですか・・・・・・・僕らからも少ないですけど・・・・・・・・極北戦士さんたちお願いします。」


ぞろぞろぞろぞろ・・・・・・・・

どすどすどすどす・・・・・


性愛神殿には食べ物だとか酒だとか薬などが届けられていたそうな。




「かーちゃん、さむいね。」

「かーちゃんのそばにおより。」

「うん、あったかい。」

「ごめんね、かーちゃんが仕事失敗したばっかりに・・・・・・・・・寂しい祭りになったね。」

「でもかーちゃんがいるから問題ないよ。」

「どーもー、【わかち】にきました。」

「えっ!えっ!」

「飢えと寒さをわかちましょう。」


どすっ!


「嬢ちゃん、いいんかい?」

「だいじょうぶですよ。今宵は【わかち】あう日ですから。それよりも、食べて元気出してください。」

「お嬢ちゃんすまないねぇ・・・・・」

「あねーちゃんありがとー」



性愛神殿やら貧しい家庭にも【わかち】あっている。

本当に馬鹿者だな。ちなみに件の親子だが、私のコネで仕事を紹介してやった。

路頭に迷わせるのは忍びないからな。




今宵は賑やかだな。思わぬ闖入者に驚きながら色々な物を【わかち】あっているのはよい事だ。

そうしているうちにも物資の山も無くなっている。

子供達は色々な物を【わかち】あっていったのだな。


私は孤児院で酒を飲みながら、王都の騒ぎに思いをはせていると・・・・・・・・

「御主人様、私達も【わかち】あいましょう。今宵は寒いですし温もりとか・・・・・・・・」



はははっ、孤児姉よ。そう来たか・・・・・・・・


酒が切れたので今宵はこれまで。

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