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酒盛男爵と王妃様

また、孤児が王都にたどり着く・・・・・・・・・・・

「ここが王都・・・・・・・・」


王都の城壁を見た孤児は安心してか倒れこむ・・・・・・・・

たまたま通りかかった酒盛市場に農産物を売りに来た近隣農家のおっちゃん。

「おや、まぁ、餓鬼が倒れて居るな。衛士にでも渡しておくか。おい、餓鬼生きているか?」

餓鬼を拾い上げ荷車に積み込む。

「ううっ・・・・・・・ここは?」

荷車の上で気がついた餓鬼。

「何行き倒れて居るんだ?親は如何した?」

おっちゃんは大して案じても居ない声で気楽に問いかける。

「とーちゃんもかーちゃんもしんで、くわせるよゆうはないからおうとにいってけんじゃさまをたよれっていわれた。けんじゃさまはすばらしいひとだからおらのひとりくらいちゃんとそだててくれるからと・・・・・・・・とちゅうまで、ぎょうしょうにんといっしょにいたんだがみちがちがいうからとおうとまでのみちをおしえてもらってわかれた。二日ほどくってないけどけんじゃさまのもとにいけば・・・・・・・」


「おい!しっかりしろ!とりあえず売り物で悪いが飲んで食って一息つけ!ここで死なれたら迷惑だ!」

おっちゃんは売り物やら弁当やら餓鬼に与えて必死になる。そりゃ、見ず知らずの餓鬼とは言え自分の荷車の上で死なれたら後味悪いし商品の売れ行きにも関わる。寧ろ助けるならば助けきって、美談と共に商売をするのもありだろうという打算も働いているが・・・・・・・・

家に帰れば4人の子供とお肉がたぷ付いているが昔は可愛らしかった嫁さんがいるんでそれに顔向けできないことは・・・・・・・

もとい、目の前で死なれては寝覚めが悪い。親に死なれて必死に王都に向かった餓鬼を死なせるのは嫌だという個人的欲求だったりする。


決して、美談ではない。だけど、善意ではある。八割の打算と一割の偽善と残り一割の善意と・・・・・・・・

そうして餓鬼はは王都に辿りつき孤児院で保護されることとなる。


ここで餓鬼は全裸賢者なる者はまったくの善意で子供達を保護しているのではないことを知るのだが、それは笑い話。


「ああ、あの孤児院で保護されたんか・・・・・・・・・不憫だな。逃げたくなったら我が元に来るがよい。あそこの教育は並みの者では直ぐに壊れてしまうからな。」

「全裸賢者?王室顧問卿か・・・・・・・・ 彼の教えについて来れるのならばどこの国に行っても歓迎されるだろうが・・・・・・・・・ 無理だと判ったら衛士でも何処かの貴族でも保護を願え!」

「ああ、君もあそこの子か。気が向いたら王宮に来るが良いよ。栄達の道をつけてあげるから・・・・・・・・・・」

「君の言う全裸賢者様はね、嫌がらせの為に孤児達とか色々保護して王室のあらを嘲笑うために行動しているだけだから気にせず世話になりなさい。」



餓鬼は不安になった。

そして、洒落にならない教育に泣く事になるのだが、それは笑い話。

王妃が仕事している・・・・・・・・・・・天変地異の前触れか?


「旦那、単純に王妃様への化粧費が削減されるから稼いでいるだけだろう。」

「えっ!王妃避けの護符(年齢詮索できる護符)の売り上げ王妃に流れていなかったんか?」

「寧ろそんな冗談神具があること自体驚きだ!」

「補佐見習よ、お前も時々使う神秘緋金属張扇(おりはりせん)だって存在が冗談みたいなものだろう。」

「ううっ・・・・・・・世界は冗談で成り立っているのか?」


そう言えば駄洒落で成り立っている世界もあったなぁ・・・・・ザンスとかザマスとか言っていたっけ。(by演芸神)


王妃は白い山を崩そうと一心不乱に・・・・・・・・・・・・

あの、仕事嫌いな王妃が・・・・・・・・・仕事しなくて済むために事務官長を拉致して内乱に追いやった王妃が・・・・・・・・仕事をしている。

宰相閣下が泣いて喜びそうな光景だ。長寿系だから永続的に仕事をこなせる事務官の出来上がりだ・・・・・・・私の見立てでも後百年は戦えるはず。そうすれば私の生きている間、仕事しないで済むと言う事だろう。


ありがたやありがたや・・・・・・・・・・・


このまま仕事をしてわたしの負担をゼロにしてくださるというならば犬の糞を踏んだ跡の靴の裏でも・・・・・・・・・キスしたって構わない。



だけど、王妃だぞ・・・・・・・・・

どうせ三日ほどで飽きるに決まっている。


「旦那、いくら王妃殿下がアレだからって・・・・・・・・そこまで酷くは・・・・・・・・・」

「補佐見習、お前は王妃を甘く見すぎている。王族というものは仕事をサボるために我々をうまく使い潰そうとするものなのだ・・・・・・・・・・間違っていたら金貨を一枚あげよう。三日後には王妃は仕事をしていないと・・・・・・・・・・・・」

「んな、馬鹿な!」


三日後、王妃は仕事をしていた・・・・・・・・・・

「旦那、金貨な。」

「ああ・・・・・・・・・・・・・」


「傷跡娘、これで旨いものを食べまくろう。王都で人気の店を貸しきって・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・無駄遣い駄目。二人で暮らすにいくらあっても足りないから。でも、いつもの所で食べるのならば良いよ。」

「かなわねぇな、今夜にでも行くか。」

「・・・・・・・・うん。」


因みに金貨一枚あれば大抵の店は一日といわずに貸切のまま十日は出来る。

高級店でも一日貸し切った後で常に上客扱いされるはずである。

過ぎたる金を持たせるのは問題か?それとも傷跡娘相手だから際限ないのか?

これは面白い問題だ。追求する気はないが、したら甘いやり取りを延々と観察しないといけないだろうしな。

傷跡娘はしっかりした娘だから、無茶はしないだろう。

お人好しを発動させなければだけど・・・・・・・


ふと、気になって王妃と補佐見習の姿を見ると

「補佐見習、王室顧問に一泡吹かせるなんて中々やるわね。」

「いえいえ、王妃様が仕事してくださっているからです。この調子で執務に励んでくださると助かります。」

「私だって本気を出せば、このくらいやるわ。」

「それは宜しいですので傷跡娘に色々吹き込まないでもらえれば・・・・・・・・・・・子供が出来たら繋ぎとめられるとか、女のほうから押し倒せとか・・・・・・・・・・・俺の身が持たないので・・・・・・」

「据え膳食わぬは男の恥よ、補佐見習。でも、仕方ないわね程ほどにしておく。」

「お願いします・・・・・・・・・・・・」


結託してやがったんか・・・・・・・・・・

「だ、旦那!賭けはしたけど仕込みをしてはいけないという話はしていないだろう。第一、王妃様が仕事していれば王国政府は楽できるんだから旦那だって仕事来ないですむだろう・・・・・・・」

「馬鹿弟子が!その仕込がばれている事を王妃に知られたことが問題なんだ!知られていなければ、周りと結託して仕込んで賭けと称して仕事させることができるじゃないか!」

「あっ・・・・・・・・・・・」


私の言わんとすることを理解して項垂れる補佐見習。この馬鹿弟子が折角王妃に仕事をさせるからくりが出来る所だったのに・・・・・・・・・・勿体無い事をした。

うまくやれば組み合わせを変えたりして王妃を仕事させることが出来るじゃないか。

金貨が惜しくて言っているのではない、仕事するのが嫌だから言っているのだ。

補佐見習、お前だって王妃の仕事を押し付けられて苦労しているのだろう。少しは考えろ!


「なんか、この師弟はろくでもないことを考えて実現できない事に項垂れてますわね。お陰で私が助かったというべきか・・・・・・・・」

「王妃様、次の仕事が待ち構えていますから手を動かしてください。」


今まで空気だった、王妃付侍従官。空気読まずに仕事を押し付けるのか・・・・・・・・・・

それはそれで歓迎するが。


「・・・・・・・・・・・・・」

そんな一同を冷ややかに見る傷跡娘。


決してその視線に負けたわけではないのだが、仕事をする我等一同であった。


仕事も一息ついて茶を喫するのだがそこで王妃は聞いてくる。

「そういえば、補佐見習の爵位をあげるのはともかく見習いははずして一人前の文官として独り立ちしてもらわないと・・・・・・・・・・周りからも実力ある若者を見習いとしておいとくのは怪しからんと五月蝿くてね。」

「ふむ、王族ですら一目置く力量と義理とは言え公爵令嬢を恋人に持つ男を見習と言う立場に置くのは王国の品格にかけるとか言うのかな?」

「そんなところね。ねぇ、王室顧問。どんな役職が相応しいと思う?必要ならば爵位も付けるけど・・・・・・・・・・・」

「お二方、俺の存在を無視して相談するのは止めてくれ。俺は現状で満足しているし、必要以上に役職なり爵位なりを貰っても面倒事が増えるに違いない。俺にとっての面倒事は傷跡娘だけで十分なのに。」

「欲のないこと。法務長補佐でも副宰相でも用意できるのに・・・・・・・・」

「だから仕事させるために役職あげるな!」

「傷跡娘が面倒事?補佐見習、お前には失望したぞ・・・・・・・・・・・こんな可愛い娘を面倒事というその根性に!」




補佐見習、流石にその一言は許せぬなぁ・・・・・

可愛い可愛い私の傷跡娘に対して面倒事?ふむふむ、どうしてくれようか・・・・・・・・


「王室顧問、補佐見習は『面倒事』に集中していたいからそんな事を言ったのでしょう。寧ろ、『面倒事』以外の雑事に煩らわされたくないから言っているのでは?」


なるほど、口では憎まれ口を叩いても傷跡娘を大事に思って居るのか。


にやにや・・・・・・・


「王室顧問、補佐見習が傷跡娘以外に見向きすることはないでしょうし周りが許さないでしょう。なんたって”あの”【傷跡娘の物語】の主役の一人だからね。」

「それはそうか、もっとも奴にしてみればお膳立てされたみたいで嫌なんだそうだが・・・・・・・」

「あらあら、私達は無粋だったかしら。」

「かもしれませんな。」


意地の悪い笑みを浮かべる大人達、補佐見習夫妻はなんか諦めたような顔をしてお互いを見て溜息をつく。こらこら子供達溜息ついていると幸せが逃げるぞ。


「結局、俺は幾つも面倒事を抱える羽目になるんだろうな。」

「・・・・・・・・・・・・私も面倒事?」

「面倒事だ。だけど俺はお前以外の面倒事を抱える心算はなかったんだがな・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・///」


諦めろ、補佐見習。あの時法務副長の誘いを受けた時点で、否、傷跡娘を庇った時点で面倒事が押し寄せる運命だったのさ。異世界語でなんだったかな?【旗を立てる】とか言ったか。

そして傷跡娘、補佐見習の内面を読んで赤面するな。こっちが恥ずかしくなる。


さて、こいつ等の行く先は多種多様の面倒事が待ち構えているんだろうな。

それでも二人で手を取り合いながら一歩づつ進んでいくのが見える。綺麗に超えられないことが大半だろうけど越えられない面倒事はないのだろう。孤児弟のような翼はないけど二本の足で踏み越えて、互いに手を取り合って進んでいくのだろう。


「で、補佐見習としてはどの役職が良いの?法務官?宰相府付?貴族府や王室府なんかも歓迎するわ。何ならば余っている領地を下げ渡すからそっちに専念しても良いし、国王見習いでも良いわよ!」

「さらっと、王権を譲らないでください!因みに補佐見習は辺境伯家も断ってますから。大抵の条件ではなびかないのでは?」

「って、言うか王妃様。王太子様がいるでしょう!王家を押し付けないでください!」

「嗚呼王太子、あの子ここ一年ばかり王都に来ていないのよねぇ・・・・・仕事に支障が出ているから廃嫡でよいのでは?」

「・・・・・・・・・・・・廃嫡でも良いけど補佐見習に王位継承権はいらない。一緒に遊びにいけなくなるから。」

「傷跡娘の事を無視してまで上に上がりたくないからどれも要らない。」

「あらあら、無欲かと思ったら一番強欲でしたわね。」

「それはそれで微笑ましい強欲というべきでしょう。」




「あのぅ、追加の仕事が来たのですが・・・・・・」

侍従官、空気よめ!ついでに私にまで仕事寄越すな!

睡魔に襲われてきたのでこれまで。

眠たい・・・・・・・・


今日は一日寝ていたのに・・・・・・・・・・・

もう寝よう。

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