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傷跡娘と辺境伯家

昔、盾の王国と呼ばれる所に傷跡娘と言う娘が居ました。

彼女は気立ては良いのですが顔に醜い傷がついていました。

だけれども娘は傷跡を恥じ入ることなく自分の仕事である賢者様と呼ばれる貴族の手伝いを真面目にこなしていました。


そんなある日、傷跡娘が仕事をしていると主人である賢者様と敵対関係にある貴族が傷跡娘の顔を見てなんと醜い顔だと馬鹿にしました。

傷跡娘は自分が醜い顔だと知っていましたが面と言われて傷ついてしまいました。

そんな傷跡娘の泣き顔を見て、立ち上がったのが酒盛市場の男でした。

彼は傷跡娘が一生懸命働いているのを見て姿形ではなくて性根が美しいものだと理解していました。

男は貴族に姿形で人を見定めるのは良くないと言いました。

貴族は取り合わず男を殴りました。

男は悔しくて悔しくて、何度も何度も立ち上がりましたが何度も何度も殴られました。

貴族は何度も立ち上がる男に嫌気を指して捨て去ろうとしましたが、賢者様が来て男が殴られている様に気がつき傷跡娘が泣いているのを知りました。

賢者様は何事かと聞くと貴族はこんな見た目が汚い者が仕事をしているなんて国が汚くなると答えました。


賢者様は貴族にこの娘と男程の仕事が出来るならば自分の職位を与えて、傷跡娘を王国から追い出すと言いました。

貴族はその挑戦を受けて、仕事をこなし始めました。


傷跡娘は仕事を持ち込んできました。仕事は山みたいにあって身の丈も高く積みあがりました。貴族はその山を片付けましたが、男が次の山を持ち込みました。

貴族はその山も片付けましたが、賢者は更に仕事を持ってきました。

貴族は更に仕事を片付けようとしましたが、傷跡娘と男が仕事を更に持ってきたのを見て怯えて逃げてしまいました。


貴族が逃げた後、傷跡娘と男は仕事を簡単に片付けて、貴族のこなした量の十倍をその日のうちに片付けました。


仕事をしている姿はそれはそれは美しいものでした。

傷跡のある顔でも誰かの為になる仕事は出来るのです。


次の日からは傷跡娘は男と一緒に仕事をしました。

傷跡娘は男が大好きで、男も傷跡娘が大好きでした。

二人は仲良く仕事をしていました。

仕事ぶりは真面目で丁寧、お陰で国は大いに栄えたのです。


そこで王様は国が栄えた事に二人へ褒美を与えようとしたのです。


男は日々暮らせるだけのお金が稼げているからと断り、傷跡娘は私よりも困っている人を助けてあげてくださいと言いました。


王様はそんな欲の無い二人を気に入って、どうしても褒美を与えようと考えていました。

大臣は貴族にしてはどうかと答え、王妃様は一杯の金貨を上げたらどうかと言いました。そして賢者様は娘は傷跡を恥ずかしく思って男に好きだと言えないから傷跡を消す魔法をあげたらどうかといいました。

王様は賢者の言葉をきいて、それは良いと言いました。


王様は国中に触れを出して傷跡を消す方法を探してもらいました。

その甲斐あってか小さな町に傷跡を消す医者がいることを突き止めました。


王様は傷跡娘に君の悩みを無くす事を褒美にと、娘と男を医者の通わせて傷跡娘は美しい娘となりました。


美しい娘となった傷跡娘は王様や賢者様や国の皆に祝福されながら男と夫婦になったのです。


そして二人は末永く幸せに暮らしたのでした。



めでたしめでたし・・・・・・・・・




聖徒王国で出版された童話【傷跡娘】より


「所で旦那、俺を見る周りの視線が厳しいものになっているんだが・・・・・・・・・」


補佐見習がそうこぼした。

婚約の発表から数日、傷跡娘の愛らしい様を見て二人仲良く仕事している所を見せ付けられたりしたら主に独身男連中に嫉妬の目で見られるのは仕方ないであろう。可愛い娘を独り占めしているのだそのくらい我慢しろ。


「独り占めって・・・・・・・・寧ろ、俺が独り占めされている気がするけど・・・・・・・・」

「それは否定しない。寧ろ、傷跡娘以外の物になりそうならば周りが許さないだろうさ。」

「・・・・・・・・・・・・所で婚約するのはいいとしても俺の意思は?」

「そんな物あったのか?別にお前も不満じゃないだろう。あんな可愛い娘を嫁に出来て・・・・・・・・・不満があるとは言わせないぞ!」

「そりゃ、無いけどさ・・・・・・・・・・・もう少し選ぶ余地とか・・・・・・・・・・周りに全てお膳立てされてしまったこの状況は・・・・・・・・・・・」


貴族なんて政略結婚とかが半数以上占めているし、別にお膳立てされた状況というのは珍しくも無かろう・・・・・・・・・・・・

少なくとも好いた娘を嫁に出来るのだから文句言うな・・・・・・・・


「補佐見習、私じゃ嫌?」

「そうじゃなくって、俺が自分で口説きたかったというか・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・馬鹿、口説くまでも無いのに///」

「いいじゃねぇか・・・・・・・・・・・・悪いかよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿。」





「えっと、そこの獣耳の近衛君・・・・・・・・これって喰えるか?」

「喰えるわけないでしょうが!こんな甘いの!それに犬じゃなくて銀狐系ですし・・・・・・・・間違えないでください!本当にもう・・・・・・・・・ここの所官僚部屋近辺の勤務が多いと思ったら・・・・・・・・・・・そういうネタかよ・・・・・・・ブツクサ」

「悪い悪い、後で団長に宜しく言っといてくれ。」

「まさか王城管理官様、このネタのためだけに近衛に口出してきているのですか?」

「俺じゃなくて民部官とか式部官が主に口出しているんだけど。」

「痴話喧嘩のネタ要員となるために故郷離れて王都まで来たんじゃないのに・・・・・・・・・・」


銀狐系の近衛兵君は項垂れてしまった。彼に幸あれ・・・・・・・・・


「あれ?ハトコの銀狐近衛兵兄さんじゃないですか。どうしたんで?」

「ハトコの狐耳の小姓か・・・・・・・・・・・この官僚達ときたら・・・・・・・・」

「兄さんもネタにされたんですか・・・・・・・」

「ああ、しかも熱愛ぶりを見ていてうんざりしている所にこれだろ心が折れてしまう・・・・・・・・・・・」

「これって獣系に対する差別だよねぇ・・・・・」

「くそっ!この国には正義は無いのか?」


もしもーし、話が大事になっているんですけど・・・・・・・・・・・

その後、狐耳系の長から犬扱いするなと抗議を受けるのは別の話である。


こんこん



君たちは良く判っていない。狐耳は立ち耳の三角、イヌミミは尖りが少ない三角で立ち耳タレ耳色々あるということを・・・・・・・・・(by森林神)


獣好き属性(ケモナー)は放置しておこう。


ファー イエス ファー!



傷跡娘のほうは大丈夫なのだろうか?

「最近ですか?少々貴族の令嬢の皆様方からお茶に誘われるくらいで・・・・・・・・・」

「そこで甘ったるい話を交わすんだな。」

「そ、それが・・・・・・・・・・・少々生々しい話が多くて・・・・・・・・・///」

「そうか、どこの誰彼がくっ付いて出来たとかと言う話の類だな。」

「・・・・・・・・・・しかも詳細に語るものですから話に入りづらくって。」


女性の恋の話は生々しいと聞いたことがあるな。未だ処女(推定)の傷跡娘には早かったか。

知識としては性愛神殿の女神官(美乳)から教わっているとは言え、実体験例は・・・・・・・

って、言うか風紀が乱れているぞ。



王室顧問に言われる筋合いはない。(by某王国地方担当地方神)



これはこれで参加した令嬢の名前を調べておいて・・・・・・・・・・親御さんに言うわけいかないなぁ・・・・・・

幾つか見知った顔があるし、官僚共が関係を持ったものもいるしなぁ・・・・・


「賢者様?」

「なんでもない、なんでもない。もし生々しいのが嫌ならば仕事があると断るか辺境伯家の名前出してこっちに呼ばれていると逃げなさい。」

「はい!」


不思議そうな顔をする傷跡娘に言葉を濁すしかない私であった。


「御主人様?以前関係をもたれたと聞き及んだ、ご令嬢の方の名前も見受けられるのですが・・・・・・・・」

「そんな事もあったな。後で口止めしておこう・・・・・・・」

「それは自業自得かと・・・・・・・」

「否定できない・・・・・・・・・・・」

不機嫌そうな顔をする孤児姉に如何したものかと頭を抱えるのである。


「・・・・・・・・・・・・そういえば賢者様。某令嬢と色々あったって・・・・・・・・・///」


無駄だったか・・・・・・・

「御主人様・・・・・・・・・・・・不潔です。」


項垂れるしかない私であった。


「王室顧問、潰れても良いけど仕事しろ!」

我が友財務官よ、君の言葉は時に残酷だ・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・そういえば財務官様とその後先祖様との事も・・・・・・・・・・・///」


「あの腐れ妖精が・・・・・・・・・・・・・・・」

友よ、今日は苦い酒になりそうだな・・・・・・・・・・




閑話休題(それはさておき)



バタバタと補佐見習夫妻にまつわるゴタゴタがあったのだが・・・・・・・・・・・


式は何時あげるのかとか言う質問は答えようがない・・・・・・

二人で決めてくれ。と言うと長い婚約期間を楽しみそうだな。


そんなある日


「王室顧問、これは王宮の一大事(わたしのたのしみ)なのよ。蔑ろにしないで頂戴!」

「そうだよ息子、当家の一大事(わたしのたのしみ)なんだよ。立派な式を挙げてやりたいじゃないの。」


えっと、母上に王妃様。言葉が違ってもルビが一緒なんですけど・・・・・・・・・・・

当の本人同士でよき日を決めればよいじゃないか。って、言うか見習身分のうちは嫁を採るのはよろしくないだろう。


「王妃様に母上、どうして私に詰め寄るのか疑問ですけど二人はまだ子供ですよ。せめて補佐見習が一人前と認められるようになってからじゃないと・・・・・・・・・・」

「王室顧問、婚約期間が長いと横槍をいれてくるのが出てくるのでは?」

「それは本人次第でしょう。そう長くないですよ。」

「息子、衣装を縫う時間だけはずいぶんとありそうだが良いのかい?式をあげる前に腹が膨らんでいたという笑えない話になりそうだよ。」

「母上、それはそれで良いではないですか。って、言うか同じ部屋にして嗾けたのは貴女じゃないですか!」

「・・・・・・・・・・・・」


「御主人様も嗾けているんですけど・・・・・・・・・・寮で二人同室にしたりとか・・・・・・・・・」


孤児姉、ばらさなくても良いから・・・・・・ 

周りがお膳立てした二人ではあるけど、身持ちだけは堅いんだよなぁ・・・・・

補佐見習がヘタレなだけだが。


「まぁ、その話は当人達を交えてゆっくりと決めましょう。」


「そうね・・・・・・・・・」「で、近いうちに決めておくれよ。」




その後、王妃付の侍従官とか護衛官とか聖域守護辺境伯家(あにうえたち)から補佐見習達が何時式を挙げるのかとせっつかれるのは言うまでもないことであった。


母上に王妃様・・・・・・・・・・・楽しみにしているのは判りますけど自重してください。




「・・・・・・・・・もう少し、恋人気分を味わいたいのに。」

「傷跡娘を貰うにはまだ俺は未熟だし・・・・・・・・・」


王都の民は自重しないから・・・・・(by節制神)



とある貴族の茶会


「そう言えば補佐見習の小僧っ子が戻ってきたそうじゃないか。」

「そうだな、あの傷跡娘があんなにも美しかったとは、唾つけておけばよかったな。」

「貴殿じゃ無理だろうよ。鏡を見てみるが良いさ・・・・・・・ その点私ならば・・・・・・」

「そういう卿こそ、自分の孫みたいなものに手を出そうとするなんて・・・・・・・」


ぶわはははははっ!

皆して何がおかしいのか高笑い。


実際、傷跡娘は美しい娘となったのは衆目一致する所である。

補佐見習のような平民の小僧になんて勿体無いとか色々言い合うのは男達の僻み・・・・・・・と言うかお約束である。


口々に二人の動向を噂しあい話の種とする。

要するに単なる噂話で暇潰しているだけである。


「所で二人は出来て帰ってきたのだろうか?」

「それが温泉伯の所に派遣した諜報官からの報告では手をつなぐのがやっとだったとか・・・・・・・・・・」

「療養神殿の知り合いから聞いた話だと、治療最終日に抱きついただけだったとか・・・・・・・・」

「隊商の会計女史から聞いた話でも進展が無いとか・・・・・・」

「せいぜい、市場で白玉豆粥を二人であーんしただけだったしな。」

「王室顧問卿、本当にそれだけだったのですか?」

「まぁ、市場には補佐見習の母君がいるのを知っているだろう。親の目の前でそれ以上はしないだろう・・・・・・・・って、言うかできないだろう。」

「それはそうか・・・・・・・・」

「ヘタレめ・・・・・・・・」「市場が暑苦しくなっているのが見えるようだ。」


口々にヘタレと罵り声を上げる貴族達。それを見て微笑む王室顧問。

「さて、皆さん賭けの結果は【進展なし】でしたな。払うものを払ってください。」

「畜生!」「補佐見習は男なんか?」「傷跡娘のほうから押し倒すかと思ったのに・・・・・・・・」「ヘタレが・・・・・・・・・」

口々に金を払いながらブツクサ言う貴族達・・・・・・・・


王室顧問初めとして補佐見習の人となりを知る貴族達は臨時収入ににんまり。

「まぁ、補佐見習ですからな。」「確かに・・・・・・・・」


後にこの事を知った補佐見習があの糞貴族共と毒気づくのは別の話。




因みに同様の賭けは令嬢や御婦人達の間と市場で行われていたのは本人達も知らないことである。


孤児院では・・・・・・

「賭けにならんな。」「確かに・・・・・・・・」「ほさみならいのおにーちゃんだしね。」

「そこの私兵達!子供に悪いこと教えない!」

「「「すんませーん!」」」

「むだなかけをしないというのはぼくだってわかっているよ。」

「あんたも人の恋路で賭け事しない!人馬に蹴られてしまうよ!」


ごつっ!

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