傷跡娘と狼夫婦
傷を恥じるは傷跡娘 男の心を知らないで
自虐の殻で身を隠す 悲しき親の愛なれば
一人で生きると口にする 心は誰かを追い求め
不器用者は娼婦の子 娘の心知りつつも
口から出るは照れ隠し 行い全て君が為
求めはしないと言いながら 眼は常に追い続け
暑さに参るは周りの衆 二人のずれを知りつつも
囃すは早くくっつけと ならねば娘を奪い去る
二人の世界に呆れつつ 氷の呪文で涼もとめ
無粋な魔の手は王妃様 恋する娘が面白く
連れ去り色々教え込み 子供の恋を飛ばし行く
押されて逃げるは娼婦の子 押して逃げるは善き娘
恋愛神殿書庫に保管されている、口承説話【傷跡娘】より
寒いのか暑いのかわからん状況だね。
枯野の季節で風は寒いのに補佐見習と傷跡娘の不器用な熱愛振りは暑いし・・・・・・・・・・
流石にこの季節に氷売りはいないだろうしな。
「貴族の旦那。氷でしたら直ぐ出来ますぜ。」
「狼頭の氷売りかそう言えば氷の呪法ですぐに作れるか・・・・・・・・・・」
「そうそう、今の時期でも酔っ払いの旦那方は霰酒とかやっているからねぇ・・・・・」
こんな寒いのに細かく砕いた氷に酒をかけて嗜むと・・・・・・・
馬鹿が、馬鹿が居る・・・・・・・・
寒い時の冷たい酒はおつなものだよー(by酒精神)
まぁ、神様ですからね。
極北では寒いときには酒を温める暇がない。故に齧るようにして飲む。(by極北神)
はいはい、焔も凍る北の大地の民草達ですからね。
「飲めば暖まるし。」「かんぱーい!」
「火酒は寒いときの酒だね。」
寒空に野外で酒盛をする馬鹿(某王国民6:大使連中2:極北の民1:魔王国1の割合)を見てこっちが寒くなってきた。
温かい物無いかな?
「あったかな、甘汁団子は如何かな~」
狼娘はなんか温かそうな物を売っているな。
「狼娘、それを人数分くれ。」
「あいよ!」
暖めた数種類の果汁にに白玉と柑橘や果物の煮た物を浮かべてある。
香り付けに果実酒を垂らしてあるのか酒精の香りもしている。
果実酒の熱燗も寒い夜には悪くないが、これも面白いものだな。
「あっちっ!」「ふーふー」
「一気に飲むと口の中火傷するよ。」
「温まりますね・・・・・・・・・」
所でもう一つの鍋の中身は何だね?
そこには黒いどろりとした物が・・・・・・・・・・・
「これは豆を粥のように煮込んだ物だね。好みで甘みをつけたり塩味にして白玉を浮かべる食べ物でさぁ・・・・・・旦那には贔屓にして貰ってるから一つ試してみるかい?」
「氷売り、では一つ貰おうか?」
「あいよ!」
氷売りは豆粥らしき物を器に入れ、その上から白玉を載せる。
「今日は甘いものだけど大丈夫かい?旦那は甘いの苦手そうだが・・・・・・・・・」
「心配するな、甘いのもいける口だ。」
「ご主人様は焼き菓子で酒飲んでいたことありますからねぇ・・・・・」
「・・・・・・・・・・焼き菓子にも蒸留酒使っていることあるから、悪くない組み合わせかも。」
「飲んだことないから合うのかどうかは判らないや。」
「甘辛両刀と言うらしいですわね。」
両刀と言わない。見境なしみたいで嫌だ。
ふむふむ、豆の煮た物というと塩味の豆粥とか豆汁とかを連想して違和感を感じるのだが・・・・・・・・・・・
先入観を除けば・・・・・・・・・悪くない。
どっちかというと菓子というよりも食事だな。
はふはふ・・・・・・・・・
私が食べているのを見て子供達も興味を示したのだろう。
「狼のおっさん、俺にも一つ・・・・・・・傷跡娘はどうする?」
「私は食べきれないから補佐見習から一口貰う。」
「・・・・・・・・・・・・そっか。」
「私も一つくださいな。少なめでお願いします。」
「あいよっ!」
狼夫婦は子供達のために甘口の豆粥を用意して白玉を浮かべる。可愛い恋人同士のために白玉の数を偶数個になるようにおまけしているのは愛嬌だ。
「後はこいつを加えると更に味わいが変るよ。」
何かに木の実らしきものを加えていく・・・・・・・・・・・
出来上がったものを見て・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・ふぅふぅ、食べる?」
「いいって、お前が食べな。俺は自分で食えるから・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・そう」
ぱくっ!
「美味しい・・・・・・・・・」
「そっか、俺にもくれ。」
「・・・・・・・・・・はいっ」
「って、食べさせるのか。」
「うん、食べて・・・・・・・・・・・それとも、私じゃ嫌?」
「そんなわけじゃないって、ただ、恥ずかしいというか照れくさいというか・・・・・・・・・・」
「あーん」
「・・・・・・・・・・・・・あーん。」
「見せ付けられているのも寂しいですわね。」
「子供は成長するものさ。それよりも孤児姉あそこを見てみろ。」
「御主人様、なんですか?あっ!」
「静かに・・・・・・・・・」
私は酒場部分の外れから二人の様子を眺めている小売婦人を手招きする。
婦人も息子の成長振りをニマニマと眺めながら近づいてくる。
「あらあら、この分だとお義母さんと呼ばれる前におばあちゃんと呼ばれそうね。」
二人は気づいていないのか照れくさそうに食べさせあっている。
周りで酒盛している連中も(平民1:貴族8:戦士階級1の割合)
「暑いねぇ・・・」「枯野の季節なのにねぇ・・・・・」
「俺は独り身なのに・・・・・・・・」「もげろ!」
「しっかし・・・・・・・・」
「「「「暑いねぇ・・・・・・」」」」
声を態々合わせて呟く事ではないだろうに・・・・・・・・
酒ばっかり飲んでないで男を磨け、そうすれば勝手に女は寄ってくる(嘘です
二人が食べ終わるころには、周りがニマニマして見ていた。
ダメだ、こいつ等何とかしないと。
こいつ等につける薬はないのだろうか?
びゅん!(匙を投げる音)
まぁ、そうだろうと思ったが・・・・・・・・
アラ、つける薬はあるよ。効き目が無いだけで・・・・・・・・・(by療養神)
市場を見渡していると木製の匙を買っている神職が・・・・・・・・
「本当に療養神様には困ったものだ・・・・・・・・直ぐに匙がなくなる。お陰で食事のときに・・・・・・・(ブツクサ」
なんか世界の秘密に迫った気がする。
「御主人様、最近煽りすぎですから療養神殿に匙を奉納しますか?」
「そうだな・・・・・・・・・」
「ねぇ、息子。母親の前でいちゃつくって結構肝が据わってるよねぇ・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・///」」
補佐見習の方は母親に絡まれていた。
親公認なんだろうけど、見ていて恥ずかしいのだろうな。
「私はあんたを人前でいちゃつく子に育てたつもりは無いよ。本当に・・・・・・・・また周りから孫はまだかねとか式はどうするとか出来ているのかねとか・・・・・・・・・答えに困る質問されたり、冷やかされたりしてこっちが恥ずかしいじゃないの!」
本当にあの二人は連れ込み宿にでも放り込みたいもんだな。
多分、補佐見習だから、手を出さないのだろうけど。
固まったままの二人。
これ、どうすれば元に戻るのだろう?
寒さと暑さを味わった市場の衆に狼夫婦の氷だの白玉豆粥が売れたそうな。
「「まいどありっ!」」
甘い話は書いてて辛くなりますので、これから酒に逃げます。
しかし話が進まない。