傷跡娘と酒盛市場
痛み堪える娼婦の息子 顔より心に痛み持つ
何故にこの子が詰られる 傷跡抜きでも可愛い子
親の無体は悲しき願い 何時か出会えるよき男
涙流して抱きつく娘に かすり傷だと意地を張る
愛し娘の名誉を守る 不器用者に盾の末裔
栄誉を一つ与えんと 秘薬を与え手当てする
娘の掌 柔らかく そのくせ薬は良く染みる
貴族の屑の痛みより 苦痛が走る傷口に
痛みを堪え強がりを 娘涙目案じつつ
意地張るならば最後まで 千の苦行の時よりも
気楽なものと嘯くも 不意に塗られた傷薬
染みて悔いた身に堪えかね 子供悲鳴を一つあげ
周りその様にこやかに 生暖かき笑み浮かべ
初々しきはその二人 初々しきはその二人
苦情をのべる娼婦の子 誰もまともに取りあわず
絡めとられて娘の手 雁字搦めのその様も
誰も助けるものはなく 誰も助けるものはなく
優し傷跡娘には よき少年を手に入れる
合掌
場末酒場で詠われた戯れ詩 【傷跡娘の物語】の一節より
我等一同は今市場にいる。
流石に枯野の季節とあって風が身に染みる・・・・・・・・
こういうときは誰かのぬくもりが欲しくなるのだろうな。
傷跡娘は補佐見習に抱きついている。
馬鹿弟子の方も無理やりに振り払うことはしないようだ・・・・・・・・・・
暖を取るだけなのかそれとも・・・・・・・・・・
「納まれ俺の・・・・・・・」
ああ、男としての葛藤中なのか・・・・・・・
季節に流されると言う事も若いうちには必要なことなのだがな。
そうでないと(人物名削除)や(個人情報保護のため削除)みたいに独身街道まっしぐらだぞ。
好きあっているのに結ばれないとは不幸なことだ・・・・・・・・・・
我慢してじっくり楽しみたいと言うのならば個人の楽しみということで気にもせぬけど。
「そういうご主人様は季節に流されないので?」
「口に出ていたか、私はそういう年でもないだろう。恋愛に胸をときめかせるのは終わったよ。今は性欲だし。」
「・・・・・・・・・・・・・・むぅ」
本当に私に男女の好意を向けるとは不憫な娘だ。
さてと、孤児院のチビ共の為に土産を見繕うとするか・・・・・・・・・・・・
菓子がよいのか、服でも用意するか・・・・・・・・・どうする馬鹿弟子。
「一応師匠なのは認めるが、馬鹿馬鹿言うのは止めてもらいたいんだが。」
「ふっ、惚れた女のために平民の身でありながら無策で貴族に楯突いたり、最高の笑顔を見たいからと修羅場に身を投じているのを馬鹿といわずなんと言う!さらには・・・・・・・・『うわぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!』」
突然大声を上げる補佐見習。
「たかだか、は『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』の為に世界に喧嘩『だまれぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇ!!』」
叫び疲れて崩れ落ちる補佐見習。鍛え足りないな。
「御主人様、補佐見習をからかうのは・・・・・・・・・・・」
「精神鍛錬が足りないな。これからは常にむず痒くなる様な賞賛を得なくてはならないのだ。それに耐えられないと後が大変だ。」
「まぁ、補佐見習が惚れた女のためならば世界に喧嘩を売る馬鹿なのは認めますが、潰しすぎでありましょう。それとも以前に言われた椎の実発言を根に持って・・・・・・・・・・・・」
考えすぎだ・・・・・・・・・・因みに私は世界樹だから。
さて、脱線したようだ・・・・・・・・・・
色々見て回るか・・・・・・・・・・・・
何だ?傷跡娘?
「だったらお金のほうが自由に使える。私達では何がいるのかわかってない。」
「そうか、ならば茶でも飲んで一息つけるか。」
市場にて茶を飲むか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ついでに菓子くらいは買っておけばよかろう。
無駄にはなるまいし・・・・・・・・・
「そこの衛士君、茶菓子を買ってくるがよい。」
「王室顧問様、何で?」
「私は貴族、お前は平民。それ以前に衛士隊のつけを立て替えてやっただろう・・・・・・・・・・・・」
「公私混同・・・・・・・・・」
「で、行くの払うの?」
「喜んで行かさせてもらいます。」
ふっ、王都の民は軟弱者が多い。
「いや、旦那。それは普通逆らえないから・・・・・・・・・・・」
「御主人様・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・賢者様・・・・・・・・・・・むごい。」
普通だと思うのだがな?
「・・・・・・・・・・・・だってつけを取り立てられたら衛士隊は破産だし・・・・・・・・・・・・」
「どんだけ借りているのやら・・・・・・・・・・」「賢者様だからこの程度で済んでいるのに・・・・・・・・恥ずかしいわね」
「ちょ、ちょっと!衛士隊が悪者?」
「それ以前にだらしなさに呆れているの・・・・・・・・」
「面目ない・・・・・・・・・・」
その後、衛士隊全体で反省文祭りが開催され、立替分(金貨2枚)は踏み倒されるのであった。
無念